一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

ウクライナの平原が舞台の「天使のらくがき」(ダニエル・ビダル)の元歌の作詞作曲は亡命ロシア人で、ポーランド系の歌手が歌っていた

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/Odessa_oblast%27_field.jpg

ウクライナの平原 wikiより

「天使のらくがき」は超国際的な歌だった。

フランスシャンソン歌手「シャルル・アズナヴール」にスカウトされて芸能界入りした「ダニエル・ビダル」1969年のヒットデビュー曲。

「ダニエル・ビダル」はロッコ生まれのフランス人です。


Aime Ceux Qui T`aiment (天使のらくがき) / DANIELE VIDAL-ダニエル・ビダル

www.youtube.com

歌詞はこちらです。

lyricstranslate.com

 

日本語訳はこちらです。

Aime ceux qui t'aiment
天使のらくがき

 作詞:パトリシア・カルリ
 作曲:ボリス・ポチョムキン
 歌唱:ダニエル・ビダル

 

【1番】

Dans les plaines de l'Ukraine
ウクライナのたくさんの平原の中

Sur les murs gris des maisons
家々の灰色の壁に


Les gens écrivent eux-mêmes
人々は「らくがき」をしている

En lettres dans ce dicton:
その文字の言葉の意味はこうだ

 

"Celui qui passe la porte
「この家の戸口を入る者は

Une seule fois en ami
たった一回でも友人として入る者は


Peut revenir de la sorte,
そのことによって、戻って来ることができる

S'il le veut toute sa vie".
そうしたい時には命の限りいつでもだ」

 

【繰り返し】

Aime, aime ceux qui t'aiment
愛せよ、汝を愛する者たちを愛するのだ

Même si la peine
もし苦難が

Fait tomber la pluie
雨を降らせたとしてもだ

Sur tes "Je t'aime".
汝の「愛してる」の上にな

 

Et si tu aimes,
そして、もし汝が愛するのなら

Aime ceux qui t'aiment
汝を愛する者たちを愛せよ

L'amour que tu sèmes
汝が種をまいた愛は

Te revient toujours.
いつでも汝に戻って来るのだ

 

【2番】

Je me vois dans cette plaine
私はこの平原の中にいる

Sur le seuil de ma maison.
私の家の戸口にいる


Tu m'apportes quelques graines
あなたは私にいくつかの種を持ってきてくれる

Et tu entres sans façon.
そして気軽に家に入る


Puis, avant que tu reprennes
そして、あなたがまたたどる前に

Ton chemin vers l'horizon,
あなたの地平線への道を


Pour que ton cœur se souvienne
あなたの心が覚えているように

Moi, je t'apprends ma chanson.
私はあなたに私の歌を教える

 

【繰り返し】

Aime, aime ceux qui t'aiment
愛せよ、汝を愛する者たちを愛するのだ

Même si la peine
もし苦難が

Fait tomber la pluie
雨を降らせたとしてもだ

Sur tes "Je t'aime".
汝の「愛してる」の上にな

 

Et si tu aimes,
そして、もし汝が愛するのなら

Aime ceux qui t'aiment
汝を愛する者たちを愛せよ

L'amour que tu sèmes
汝が種をまいた愛は

Te revient toujours.
いつでも汝に戻って来るのだ

 

【3番】

Mon rêve quitte la plaine
私の夢はこの平原を離れる

Et je laisse ma maison
そして私は私の家を後にする


Avec un peu de moi-même,
少しの私自身を残したままで

Mais je garde la chanson
だけど、私はこの唄は持って行く


Que tout au long de la route
道すがらずっと

Tous les deux, nous chanterons.
私たち二人で歌うでしょう


Mon cœur n'a plus aucun doute,
私の心はもはや何の疑いも持たない

Quel que soit mon horizon.
私の地平線に何があろうと

 

【繰り返し】

Aime, aime ceux qui t'aiment
Même si la peine
Fait tomber la pluie
Sur tes "Je t'aime".

Et si tu aimes,
Aime ceux qui t'aiment
L'amour que tu sèmes
Te revient toujours.

【繰り返し】

Aime, aime ceux qui t'aiment
Même si la peine
Fait tomber la pluie
Sur tes "Je t'aime".

Et si tu aimes,
Aime ceux qui t'aiment
L'amour que tu sèmes
Te revient toujours.

(フェイド・アウト)

Aime Ceux Qui T'aiment

 

哲学的かもしれない歌詞

一見、駆け落ちする男女の歌のように思えますが、歌詞に出てくる「種」という言葉には、ミレーやゴッホの「種蒔く人(たねまくひと)」の絵の題材になっているように、「神の言葉」という意味があるようです。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/68/Van_Gogh_-_S%C3%A4mann_bei_untergehender_Sonne.jpeg

ゴッホ「日没の種まく人」wikiより

 

そう思って聞いてみると、歌詞に出てくる「家」とは何だろう「あなた」は誰だろう、行き先はどこだろう、とか想像が広がって来ますね。

フランス語作詞パトリシアさんはサンレモ歌手

フランス語の作詞は、シンガーソングライターのPatricia Carli(パトリシア・カルリ)さんによるものです。

パトリシアさんはイタリア生まれですが、ベルギーに移住。ベルギーではフランス語も公用語なのでフランス語が堪能。

サンレモ音楽祭」ではイタリア人と外国人がペアを組んで同じ曲を歌う仕組みなので、カルリさんは「ジリオラ・チンクェッティ」とペアを組んで、チックエッティさんがイタリア語で歌った「夢みる想い」を、フランス語で歌ってエントリー、二人でグランプリ、大賞を受賞しました。

 

さて、これだけでも、ロッコ、フランス、イタリア、ベルギーと、4つの国が出てきました。

さらに、この歌には元歌があります。

 

この歌の元歌は「お隣さん」というロシア語の歌

作詞はゲルマンさん

1965年にヒットした「お隣さん」というタイトルの曲が元歌です。

「お隣さん」の作詞をしたのは「ゲルマン」というお名前しか分からないのですが、もし「アンナ・ゲルマン」だとすると、旧ソ連ウズベキスタン生まれのポーランド国籍の方ということになります。

アンナさんはロシアで大人気、ロシア人発見の小惑星の名前に採用されたほどだそうです。

作曲はポチョムキンさん

作曲はユダヤロシア人である「ボリス・ポチョムキン」。

作詞者、作曲者、お二人ともにロシア人なのですが、ロシア革命などで国外、他国に亡命したいわゆる「亡命ロシア人」という立場ということになり、この曲もフランスのパリで作られました。

www.youtube.com

歌詞の内容は

映像中に歌詞が出るのでわかりやすいですが、ようするに、引っ越してきたお隣さんが集合住宅の中庭で、朝の決まった時間から楽器の音出しをしていて、夕方5時にも演奏している。

集合住宅に住んでいる音楽の嫌いな人はいやがるけど、じいちゃんばあちゃんは今日はクラリネットかトランペットかを賭けのタネにしているくらいだし、私もむしろとても楽しみにしていて、お隣さんの音楽を聞かないと眠れないくらいだ、という内容ですね。

繰り返し部分はトランペット・スキャット

楽器はクラリネットとトランペットなので、ブラスバンド吹奏楽で使う派手な音が出る楽器です。

「パッパ、パッパダッパ、パッパ」という繰り返し部分が、どうやら「お隣さん」がトランペットかクラリネットで演奏しているメロディーらしく、クラリネット、あるいはトランペットの音を真似してスキャット、あるいは「ボイパ」(ボイスパーカッション)しているんですね。

歌手はフランス生まれのエディタさん

この映像で「お隣さん」を歌っている歌手は、フランス生まれで母親がポーランド人のエディタ・ピエーハ(Edita Pyekha)さん。ロシア語が堪能ですね。

縁のある国の数が多い

さてさて、ここで関係国として出てきたのは、ドイツ、ユダヤイスラエル)、ロシア、ポーランドと、4カ国、さきほどの4カ国と合わせて、合計8カ国。

作詞がアンナゲルマンさんだとすると、彼女は ポーランド語、ロシア語、 ドイツ語、 イタリア語、スペイン語、 語 、ラテン語、さらにはモンゴル語でまで歌えた、というので、さらに増えそうです。

 

つまり、「天使のらくがき」は、8カ国以上が関係している超国際的な曲なんですね。

そしてさらに、「天使のらくがき」の、フランス語歌詞の舞台はウクライナの平原です。

言ってみれば、地球上の国同士はみんな「お隣さん」同士なわけですが、お隣さんとはあくまでも礼儀をもって、仲良くしてもらいたいものですね。

 

今回のお話

今回は、ウクライナを舞台にした、ちょっと哲学的かもしれない曲「天使のらくがき」のルーツをたどってみたら、たくさんの多国籍な人たちによって作られた曲だということが分かった、というお話でした。

世界中の国々がお互いに寛容で、友人として行き来できる、幸せな世界であることを、願うばかりです。