2大ヒット曲の共通点
最近の音楽をとんと聞かない私でさえ、この2曲は小耳にはさんで知っているくらいですから、世界中で大ヒットした曲なのだろうな、ということは分かります。
こちらは、「Dynamite」B.T.S.(防弾少年団)
改めて、この2つの曲の、特徴的で印象的なメロディーを聞いているうちに、2つの曲の似ているところに気がつきました。
こちらは、「Shake It Off」T.S.(テイラー・スウィフト)
共通点その1「下降音階」
まず似ているのは2曲ともに特徴的な、あのメロディーですね。
よくテレビなどでもスポット的に流れる、あの印象的なメロディーが2曲とも「下降音階」であることです。
下降音階を上から降りてくる「ダイナマイト」と、下降音階を下に降りてゆく「シェイク・イット・オフ」
降りて来る「ダイナマイト」
「Dynamite」B.T.S.は、上の方から階段を一段ずつ、踏みしめるように降りて来る感じの下降音階ですね。
降りて行く「シェイク・イット・オフ」
いっぽう「Shake It Off」T.S.では、対照的に、下に向かう階段を、急ぎ足で降りて行くような下降音階です。
下降音階は2曲ともに「繰り返し」部分に出てきます。
B.T.S「Dynamite」の下降音階
まずB.T.S「Dynamite」のほうでは、曲の冒頭から出てくる、歌詞2行分の繰り返し部分が「下降音階」のメロディーになっています。
歌詞も「降りてくる」
さらに、ここの部分の「歌詞の内容」もまた、メロディーと同じく「下降」してくるイメージのフレーズなので、下降して来るメロディーとよくマッチしているのです。
なぜなら、この部分の歌詞は、自分が、ダイナマイトのように夜空で爆発した花火のようになって、まわりを明るく照らしながらゆっくり降りてくるというイメージ、キラキラ輝くたくさんの星のような光が降りてくるイメージの歌詞だからです。
なので、歌詞の、光がゆっくり下降してくるイメージと、メロディーの一段ずつ、ゆっくりステップを踏んで下降してくる音階がピッタリ合って、感覚的にもイメージしやすい作りになっています。
音程も「降りてくる」
音程的にも、とても高い、裏声的なところの声域から、だんだんと音階を踏みしめるようにゆっくりと、確かな足取りで下がって来ます。
そして、私たちの普通の会話レベルの音程まで降りて来て、予定調和な音程で安定します。予定調和が調和して安定すると、気持ち良い安心感がありますね。
まるでキラキラ光る星たちが、私たちのところまで降りてきてくれたような感覚になるんですね。
なんというポジティブな仕掛けでしょう。
T.S.「Shake It Off」の下降音階
いっぽう、名前の頭文字「T.S.」も共通する「テイラー・スイフト」の「Shake It Off」のほうでも、「下降音階」を効果的に使っています。
ネガティブなものは降りて行く
自分の行動についてまわりからとやかく言われるわずらわしいこと、自分には全くプラスにはならない、振り捨てるべきもの、いわゆる「めんどくさいもの」を描写するために「降りて行く」感じの下降音階を使っています。
そしてさらに、その「めんどくさいもの」を「振り捨てる」ためにも、下降音階を効果的に使っています。
例えば私のハートを傷つける人、「ハートブレイカー」は、何回も何回も私を傷つける、というわけですね。
ここでは「ハートブレイク」の「break」という単語を、何回も何回も下降しながら繰り返します。
ネガティブな言葉には心がない
傷つける人たちは、こちらから何を言っても改善する様子もなく、まるで心のない自動ロボットのように何回も何回も、同じように傷つけるんだね〜というわけです。
「まったくもう、いつもいつもいつもなんだから」と、そのいささかうんざりした感覚が、延々と同じ言葉を繰り返しながら、下降して落ち込んで行く「下降音階」のメロディーでよく表されています。
ネガティブな言葉は、そのまま振り落とそう
そして、それらのことはすべて「振り払うべきこと」なので、「ダイナマイト」では音階が天から降りてくるイメージで、「歓迎する」ポジティブなイメージだったのに対して、「シェイク・イット・オフ」の場合は全く反対で、音階をネガティブに落ちて行く感じです。
今いるところから下に
そもそもの音階の始点が私たちのレベルなので、ここから始まって、私たちより下の方に降りて行きます。
なので、いらないものを私たちのレベルから「シェイクオフ」振り払って、振り落として行くイメージでもあるのですね。
言ってみれば、いらないものを受け取ることを「拒否する」ネガティブイメージです。
動物も「Shake off」しています
そう言えば、鳥や犬など動物も水に濡れると「ブルルン」と、余計な水は振り払いますね。
本能的に、いらないものは振り払うんですね。
彼らの様子を見ていると、振り払うと言うより「振り飛ばす」感じですね。
音程も落として行く
実際の音階的にも、日常会話のレベルの声域から、気分が落ちるね〜という感じで、発声できる音域の下のほうまで声が降りて行きます。
そしてそれに対抗するように、同じように下降しながら「shake(シェイク)」(振り捨てる)という言葉を繰り返して行くのが面白いですね。
シューティングゲームのように
例えば「傷つける言葉」ひとつひとつに対抗して、一つずつ、そして一つ残らず、いちいち「shake」(振り捨てる)して行くところが、楽しいです。
まるでテレビゲームで、ひとつひとつの悪意の言葉「break」や「hate」などの言葉を狙って、最強の「振り捨て魔法」の呪文の矢「shake」を、シュパ!シュパ!シュパ!と、順番に的に当てて落として行くような感覚ですね。
T.S.もポジティブだった
なので、ネガティブな事についての歌なのですが、結局、歌っている人(テイラー・スイフト)の視点としては、ネガティブを振り落とす、打ち消すという意味では、ポジティブな姿勢の歌、ということになります。ネガティブのネガティブは反転して、やっぱりポジティブな歌だった、というわけです。
共通点その2「語りかけ」
メロディーのない「語りかけ」の部分が入る、という点でも2曲は似ています。
そして、歌詞をよく読んでみると、「語りかけ」で語っている内容も似ているのです。
B.T.S 「Dynamite」 の「メディシン」
「ダイナマイト」での「語りかけ」の前フリの言葉「レディースアンドジェントルメン」(Ladies & Gentlemen)は、ジェンダーレスの最近では「ハロー、エブリワン」(Hello Everyone)と言い換えられたりしますが、要するに「みなさん」という呼びかけですね。
「メディシン」とは
この「語りかけ」の中で「メディシン」をゲットした、と言っているのですが、「メディシン」は「薬」という意味ですね。
なので「メディシン」は、病気な状態を健康な状態にするものです。
私はここでの「薬」は「目薬」ではないかと思います。
目薬で、よけいなもので曇っていない、クリアな視界を確保しましょう、ということですね。
「メディシン・ボール」というゲームがあります。フィットネスクラブなどで使う大きめのボールを人から人へと手渡して行く、というゲームです。
「ボール」は「大切なもの」
「目薬を手に入れたよ〜〜、だからみんなボールがよく見えるようになるはずだよ、他のことに惑わされないように、どれが大切なボールかしっかり見分けて、そのボールから目を離さないでね」
「ボール」は「大切なもの」なのだろうと思います。
「大切じゃないものに気を取られて、大切なものから目を離しちゃだめだよ」
「レブロン」というバスケットボール選手の事が歌われて、PV映像にはバスケットボールのゴール板が出てきます。「ボール」はバスケットボールの「ボール」のようでもあります。
歌のボール
人から人へと、どんどんパスされるという点では、「バスケットボール」の「ボール」も「メディシン・ボール」と同じです。そして、この曲ではメンバーからメンバーへ、「歌のボール」が次々とパスされて行きます。
「歌のボール」を前の人からパスされて、そのボールを受け取った人が歌うのです。
「Dynamite」には、その点を生かしたたくさんのカバーバージョンが出来ています。
今は誰が歌う番なのか、目を離さずにしっかり見ておいてね。という意味もありそうです。
こちらの歌詞では、B.T.S.メンバーの誰が、その部分のフレーズを歌っているかも分かるようになっています.
そうそう、歌詞の最初の方に出てくる「ピンポン」の玉も「ボール」ですね。
ピンポンも、ピンポンの玉が、今どこにあるのかを見失っては勝負になりません。
T.S.「Shake It Off」の「メディシン」
「メディシン」は「シェイク」すること
一方、このテイラー・スイフトの曲「Shake It Off」では「shake」することが「メディシン」つまり「病気にならないための方法」なのです。
「Shake It Off」のほうの語り部分は、辞書を引き引き読んでみると、
「ヘイヘイヘイ!考えてもみてよ、世界中の嘘つきやら、きたなくてゲスなインチキ野郎のことなんかで不愉快になったり不機嫌になってるヒマがあったら、この病みつきになりそうなカッコいい音楽と、じっくり付き合ってたほうがよっぽどマシだよ」
みたいな意味でしょうか。
出典
世の中の、あるいは身の回りからの雑音に気を取られすぎて、大切なものを見失ってはもったいない。
今、私の気分は
もし、私が今、嫌な気分になっているのなら、私は大切なものを見失っているのです。
嫌な気分にさせているものに気を取られては、それにかまっている時間もエネルギーももったいない。
嫌な気分にさせているものは「shake it off」して、自分からは振り落としてしまいましょう。
あくまでも「振り落とす」のであって、嫌な気分にさせているものそのものを追求したり、追いかけたり、とことんやっつけようとしたりすると、しっかり罠にハマってしまうので気をつけましょう。
罠にハマってしまっては、私を嫌な気分にさせているものと同レベルになってしまって、なかなか「shake it off」できません。
お立ち台にも意味があった
自分を不機嫌にさせるものは振り落としましょう。そうすれば気分はハイになって、高いところに行けます。
ライブステージの映像で彼女が、ステージ上のお立ち台に立って、そのお立ち台がせり上がって、だんだん周りより高くなって来るのも、不機嫌の原因になるものを振り捨てる事によって、相対的に自分自身はハイになる、高いところに行ける、そんな意味を込めているのだと思います。
共通点その3「名前」
BTS
BTSの正式名称は「防弾少年団」(ぼうだんしょうねんだん)。
韓国語表記では、「 방탄소년단」(バンタンソニョンダン)、漢字表記では「 防彈少年團」(これは日本語の旧字体ですね)。
通称が「BTS」(ビーティーエス、韓国語表記では「비티에스」、これで「ビ・ティ・エ・ス」と読むんですね。
略称は「バンタン」(韓国語表記で「 방탄」)。
ちなみに、公式ファンクラブ名は「ARMY」(アーミー、韓国語表記は「 아미」)。
出典
「防弾少年団」は、何から何を防弾しているのか、と言うと、「少年」にあたる年代の若者たちを、それ以外の年代から攻撃されるのを防ぐ、ということのようです。つまりは「ぼくたちと同世代のきみたちの味方だよ」的な意味合いですね。
TS
フルネームは「テイラー・アリソン・スウィフト」Taylor Alison Swift です。
ファーストネームの「テイラー」は「仕立て屋さん」という意味なので、布がつきもの、しかも聖書の「救済をまとう」という言葉にも由来がある名前なので、「Style」などのPVでも布が効果的に多用されているんですね。
もっとも、命名の理由が、ご両親が当時流行っていた「ジェイムズ・テイラー」のファンだったから、という、わりとミーハーな理由ではあるのですが。
ファミリーネームの「スウィフト」は、ガリバー旅行記作者の「ジョナサン・スウィフト」と同じ姓ですね。単独では「アマツバメ」という意味もありますが、アマツバメのように速い、というところから「速い」という意味にもなっています。
ミドルネーム「アリソン」は「アリス」から来ていて、「高貴な」という意味。
出典
似ているのは偶然
もちろん、「B.T.S.」と「T.S.」の名前が似ているのは偶然です。
しかしながら、両者ともに大ヒットとなると、映画のタイトルに「の」が入っている映画はヒットする、という都市伝説のように、「T.S.」の入ってるアーチストは大ヒットする、という「法則」ができるかもしれません。
そういえば、ビートルズ「Beatles」も、ローリング・ストーンズ「Rolling Stones」も「T.S.」が入っていますね。
今回のお話
今回は、下降音階が印象的な大ヒット曲2曲「Dynamite・ダイナマイト」と「Shake It Off・シェイクイットオフ」を聴き比べてみました。
上から降ってくる「ポジティブ」と、下へ振り落とす「ネガティブ」の違いはあるものの、2曲とも言っていることは同じ。
「大切そうに見えて、実は大切ではないことに気を取られて、本当に大切なことを見失ってはもったいないよ!」ということが歌われていた、というお話でした。
世間の目を気にしたり、腹の立つことにとらわれてしまったりして、ついつい大切な物を見失いがちな私には、とても刺さる2曲でした。