一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「ひなたの道で」ルイの「On the Sunny Side of the Street」は人生の「サニーサイド」を明るく楽しく生きるための大ヒント

NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」第2の主題歌

今回の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」は、ヒロインが3人、「安子」「るい」「ひなた」の、親、子から孫に至る、女性三代記のドラマです。

「るい(深津絵里ふかつえり)」はルイ・アームストロングの「ルイ」、「ひなた(川栄李奈かわえい りな)」は「ひなたの道を(On the Sunny Side of the Street)オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」というタイトルからの「ひなた」というわけで、ルイ・アームストロングの演奏と歌で有名なこの曲は、このドラマの第二のテーマ曲と言っていいほど、ストーリーの要所要所で重要な役割を果たします。

人生のヒントになる曲

安子(上白石萌音-かみしらいしもね)がよく行く喫茶店のマスターで、進駐軍のバンド演奏メンバーのマネジメントもする役を「世良公則(せらまさのり)」が演じています。

彼が進駐軍のクリスマスパーティーで飛び入りで歌って、その歌を偶然その場で聞いている「安子」の人生に、「ひなたの道を歩く」というヒントを与えることになるのもこの曲でした。

その時、楽屋にいて空きビンをトランペットに見立てて吹く真似をしていた子供が、プロトランペッター「大月錠一郎(オダギリジョー)」なのですね。後に大人になった「るい」と、かかわって来るわけです。

ルイ・アームストロングの愛称「ディッパーマウス」

こちらが、ルイ・アームストロングの歌と演奏です。

www.youtube.com

明るい表通りで

明るい表通りで

  • ルイ・アームストロング & Sy Oliver and His Orchestra
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

朝ドラ「カムカムエヴリバディ-安子編」での喫茶店の店名「Dippermouth Blues-ディッパーマウス・ブルース」の「Dippermouth」は、ルイ・アームストロングの愛称のひとつです。

戦時中は英語を使ってはいけないことになったので、ドラマに登場する喫茶店の、英語だった看板も「出っ歯口の憂鬱」という日本語に書き換えられていました。

「ディッパー」と「出っ歯」をかけてあるわけで、かなりダジャレっぽくて、しかも直訳っぽい翻訳なのが面白いですね。

「Dipper」とは「ひしゃく」のこと

「Dipper(ディッパー)」は水をくむ「ひしゃく」のことです。北斗七星も「Great Dipper(グレイト・ディッパー)」です。

great-dipper

ルイ・アームストロングは目も鼻も大きいですが、特に大きな口が「ひしゃく」の先の形に似てるからということで付いた愛称ですね。

「ひしゃく」は水をすくうものなので、彼の唾液が豊潤、という意味もありそうです。

上のルイの動画の中でも、ハンカチかタオルのような布をトランペットと一緒に持っていますが、汗っかきということもあるでしょうが、他の人より唇がうるおっているんでしょうね。
そしてそれは、唇を震わせて音を出すしくみの、トランペットとかトロンボーンのような金管楽器には向いている体質だと思います。

唇自体も分厚いので、これも豊潤な音色を出すのに一役買っている、どころか、演奏家として向いている、大変有利な素質なのではないでしょうか。(個人的な素人考えです。)

ちなみに、「アルデバラン」はこんな星

このドラマの主題歌の曲名「アルデバラン」も、星の名前です。

「アルデバラン」はアラビア語から来ている星の名前で、「後を継ぐ者」という意味だそうです。日本でも「後星(あとぼし)」という、同じ発想による名前が付けられています。

日が暮れて暗くなると、東の地平線からまず先に、清少納言の「枕草子」で「星はすばる」と書かれている、美しい「昴」(すばる=プレアデス星団)が昇ってきて、次に後を追うようにおうし座を構成する星アルデバランが昇って来て、さらに続いてオリオン座の三ツ星が昇って来ます。

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」は、ヒロイン三代のみならず、登場人物それぞれの世代が引き継がれて行く物語なので、主題歌の「アルデバラン」はピッタリな曲名なんですね。

もう一つの愛称「サッチモ」

「るい」のあだ名「サッチモちゃん」の元になった「サッチモ」も、ルイ・アームストロングの愛称としてよく知られています。

由来としては2つの説があって、「サッチェル」という学生カバンの、開いた時の口のように大きく開く口、という意味での「Satchel Mouth (サッチェル・マウス)」の略で「Satch-mo」という説がひとつ。

satchel

もうひとつの説、ジャズの大御所エラ・フィッツジェラルドがルイ・アームストロングの口を見てびっくりして言ったという「Such a Mouth(サッチ・ア・マウス)なんて口なの!」を略して「Such-mo」という説があります。

いずれにしても、ルイ・アームストロングは「口」がトレードマークなのは間違いないようですね。

On the Sunny Side of the Street 歌詞

Grab your coat
あなたのコートを手にとって 

And get your hat
あなたの帽子をかぶって

Leave your worry on the doorstep
あなたの心配ごとは玄関先に残して

Just direct your feet
そのままあなたの足を踏み出すだけ

To the sunny side of the street
通りの陽の当たる方に


Can't you hear a pitter-pat ?
あなたには聞こえない?パタパタいう音が

And that happy tune is your step
何とあのハッピーな音は、あなた自身の足音

Life can be so sweet
人生はとても素晴らしいものになる

On the sunny side of the street
通りの陽の当たる側にいれば

 

(この4行の、ドラマ内での訳詞は、

聞こえる?あの楽しげな音。
あれは幸せな 君の足音。
ひなたの道を歩けば
きっと人生は輝くよ。)


I used to walk in the shade
私はいつも日陰を歩いていた

With those blues on parade
心配ごとや憂鬱たちのパレードと一緒に

But , I'm not afraid
だけどもう私は恐れはしない

This rover crossed over
この「さまよいびと」は「さまよい」を乗り超えた

 

If I never have a cent
もしも私が一文無しでも

I'd be rich as Rockefeller
私はロックフェラーみたいな金持ちになれる

Gold dust at my feet
私の足元のホコリも黄金の粉

On the sunny side of the street
通りの陽の当たる側を歩いていれば

On the Sunny Side of the Stree

composed by Jimmy McHugh
lyrics by Dorothy Fields

 

歌詞の前半が「あなた」で、後半が「私」なわけ

この曲はもともとは、ブロードウェイのミュージカル『ルー・レスリーのインターナショナル・レビュー (Lew Leslie's International Revue)』の中で歌われる曲です。

憂鬱な私が、ある人に出会って、その人から人生を生きるヒントをもらった、という設定です。曲の前半はその人が私にアドバイスする部分なので、私に対して「あなた」と呼びかけているのですね。

後半は、アドバイスを受けた私が、実際にそのとおりにやってみると、人生が開けた、という部分なので「私は」ということになっているわけです。

と思ったのですが、元のオリジナル歌手の歌を聞いてみると、ちょっと内容が違うようですね。

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このミュージカルの舞台では実際にはどのように歌われていたのかは分かりませんが、このYouTube映像(写真のみ)では、ミュージカルの主役「Harry Richman(ハリー・リッチマン)」が全部を歌っています。

さらに、この映像では、本編の歌が始まる前の説明となる前フリの「Verse(ヴァース)」と呼ばれる朗読詩のような部分、そして、歌詞をちょっと変えた、言ってみれば「2番」も歌っているんですね。

元のミュージカル・オリジナル版の歌詞

On the Sunny Side of the Street

<VERSE>

I walked with no-one 
私は誰とも一緒に歩かなかった。

And talked with no-one
誰とも話さなかった。

And I had nothing but shadow
そして、私は影しか持っていなかった。


Then, One morning, You passed
そんな時、ある朝、あなたが通りかかった。

Then I brightened at last
そして、ついに私は明るくなった


Now, I greet today and complete today
今は、私は今日を温かく出迎えて、今日を満足して終える

With the sun in my heart
太陽が私の心にあるから

 

All my worries blew away
すべての心配ごとは吹き飛んだ

When you taught me how to say
あなたが私に教えてくれた時、こう言えばいいんだよって

 

<1番>

Grab your coat and get your hat
君のコートをつかんで、君の帽子をかぶって

Leave your worries on the doorstep
君の悩み事は玄関口に置いておけ

And just direct your feet
そして、君の足を踏み出すだけ

On a sunny side of the street
通りの日の当たるサイドにね

 

Can't you hear that pitter-pat?
あのパタパタ音が聞こえない?

And little happy tune is your step
そして小さなハッピーな音、あれは君の足音さ

Life can be so sweet
人生はとてもスイートになる

On a sunny side of the street
通りの陽の当たるサイドにいればね

 

Why should you walk in the shade?
なぜ君は日陰を歩かなくてはならない?

With those blues on parade
そんなにたくさんの心配ごとを引き連れて。

Don’t be afraid
恐れることはない

Be a Rover and walk over
海賊船になりなよ。無敵のね。


And If you haven't got a cent
そして、もし君が一文無しだとしても

You’ll be as rich as Rockefeller
君はロックフェラーと同じくらいに裕福になるだろう

With Gold dust at your feet
足元には金のホコリが立つくらいだ

On a sunny side of the street
通りの陽の当たるサイドにいればね

 

<2番>

Grab your coat! Get that old derby hat!
コートを手に取って!あの古くなったけど今でもとっておきのダービーハットをかぶって!

Leave all your worries hang right on your doorstep
心配ごとは一つ残らず置いていくんだよ。解決しないまんまで玄関口にひっかけておきな

Laugh! Right! Laugh! Direct your feet
笑って!そうだ!笑って!足を踏み出すんだ

On a sunny side of the street
通りの陽の当たるサイドに


Listen! Can't you hear that little pitter-pat?
聞いてよ!あの小さなパタパタ音が聞こえない?

Oh! That happy tune, that’ll be your step
おお〜!あの幸せな調子、あれは君の足音なんだよ

Cause, Life can be so sweet
なぜって、人生はとてもスイートなものになれるから

On a sunny side of the street
通りの陽の当たるサイドにいればね


Why should you walk in the shade?
なぜ、君は日陰を歩かなくちゃならないんだ?

With those blues on parade
たくさんのブルーな気分をパレードみたいに引き連れてさ。

Come on Paul! Don’t be afraid
さあ、ポール!こわがるなよ

Be a Little Rover and walk over
小さな海賊船になって、楽々乗り越えておいでよ


And if you haven't got a cent
そして、君が一文無しだとしても

What about it ? Smile! Laugh! You’ll be as rich as Rockefeller
それがどうした?笑顔だ!大笑いだ!君はロックフェラーと同じくらいリッチになるんだぜ

With Gold dust at your feet
君が歩けば足元には黄金の砂ぼこりさ

On a sunny si~~~~~de of the street
通りの陽の当たるサ〜〜〜〜イドにいればね

On the Sunny Side of the Street

composed by Jimmy McHugh
lyrics by Dorothy Fields

 

「ポール」というのは、ミュージカルで歌っている主人公の役名だろうと推察します。ここに、ご自分の名前を入れて歌われると良いと思います。

 

こうやって見ると、全部「You」に呼びかけていますね。もちろん、私が自分自身に呼びかけているんですね。

歌詞はわりと自由

アメリカでは歌詞の扱いはわりと自由みたいで、ちょっと変えて歌うことはよくあるようです。ルイ・アームストロング自身の歌にも、その都度ちょっと歌詞を変えたバリエーションがあったりします。

フランク・シナトラジュディ・ガーランドなど、そこ変えていいの?的なバリエーションも多いです。そうやって色々な人に歌われている間に、ブラッシュアップされて、現在のスタンダードな歌詞になって来たんですね。

恋人同士は才能がある

そして、私を明るくして、こんなふうに言えるようにしてくれて、私の人生を変えてくれた「あなた」はたぶん「恋人」です。

 

恋をして、灰色だった世界が天然色になった、世の中がはっきり見えるようになった、王様になったようだ、人間が大きくなって背がぐっと伸びた感じがする、など、恋をしたときの高揚感を歌った曲はたくさんありますね。

 

「恋人同士は才能がある」と言われます。恋をすることによって、情緒も、頭脳も、洞察力も、直感も、何もかもすべてが全覚醒して、能力がフルに発揮されるんですね。

 

「あなたが私に教えてくれた時 こう言えばいいんだよって」

というフレーズも、相手が具体的にそう教えてくれたわけではなく、自分ですべてが分かってしまった、だけど、分かってしまうきっかけになったのはあなたです、と言いたいわけですね。

そうだったのか、なキーワード3つ

ハング

このミュージカル版での「そうだったのか発見」は、ミュージカル版の2番にある” hang right on your doorstep” の「hang」という言葉です。

「ハング」は「ハンガー」のハングで「ひっかけてぶらさげておく」という意味から、「未決のままにする。解決していないけれど、そのままにしておく」という意味になるんですね。

下の写真のような玄関口では、横にある柵にひょいと引っ掛けておく感じでしょうか。

ともすれば、これが解決しないと身動きできない、と、悲観的に思ってしまいがちですが、そうではない、とりあえずヒョイとひっかけておけば良いんだ、と思うとたしかに気が楽です。

ハット

あの古いダービーハット。

ダービーハットは「ピンキーとキラーズ」の面々がかぶっていましたが、おしゃれで、ちょっとかしこまった、とっておきな感じのある帽子です。

この帽子が象徴しているのは、もう忘れかけていたけれど、胸の奥に大切にしまってあった「夢」です。あきらめないで良かった。出番が来たのです。

ローバー

もう一つは「Rover」ですね。イギリスの自動車メーカーで「ローバー・ミニ」「レンジ・ローバー」で知られる「ローバー」という会社がありますが、そのエンブレムは「ローバー」つまり帆を立てた「海賊船」です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ac/Rover_badge_1965.jpg
wikiより

 

イギリスローバーのエンブレムの船の「へ先」には海賊バイキングの兜(かぶと)をかぶった顔がありますが、本来は馬やドラゴンの顔が付いていたようです。

rover-viking

乗っているのはバイキングですね。

バイキングは強いです。

無敵です。

そして、バイキング船は意外と小さいのです。こまわりが効くのです。すばしっこいのです。

無敵ですばしっこい。

なので、ブルーな気分などは追いつけないのです。

「ローバー」は子供の遊び「レッド・ローバー」から

この歌での「ローバー」Roverの由来についてのとても興味深い記事を見つけました。

note.com

この曲に出てくる「ローバー」Roverという言葉、作詞のドロシーさんが子供時代を過ごしていた1910年頃のアメリカニューヨークのブルックリン地区でも子供たちに遊ばれていた「レッド・ローバー」Red Roverという遊びからヒントを得たようです。

「はないちもんめ」と似た「Red Rover」

ゲーム「レッド・ローバー」は日本の「はないちもんめ」と似ています。

子供たちが2チームに分かれて、大通りの両側の歩道に陣取り、みんなで手をつないで1列に並んで道路をはさんで向かい合います。

片方のグループが「レッドローバー、レッドローバー、●●をよこせ」Red Rover! Red Rover! Send ●● Right Over!と相手のチームの欲しいメンバーひとりの名前をコールすると、指名された●●ちゃんは自分のグループから離れ、道路を横断して(当時は車も馬車も少なかった)相手のグループのメンバー同士でつながれた手を突破しようとします。

突破できれば、相手チームメンバーの1人を奪って自分のチームに連れて帰れます。

突破できなければ、自分が相手のチームの一員となります。

現在の「Red Rover」

この遊びは現在も遊ばれています。

さすがにもう今の時代、道路は危険なので、遊ぶ場所は公園が主流のようですね。

この映像では、ハロウィンの時に仮装したまま遊んでいるようですね。

www.youtube.com

動画を見ると、小さな子供は意を決して、不安な行程を一生懸命に走っていますね。まさに「Rover」です。

走り切るには「恐れたりしない」意志が必要です。

赤いバイキング船

なお、ドロシーさんの時代にはちゃんと「レッド・ローバー」役が道路の真ん中にいたらしいのですが、それはもはや危険なことになってしまったので、掛け声の中だけに名前が残っているんですね。

なぜ「赤いバイキング船」なのか、自動車のローバーエンブレムが赤いのも理由があるのか、ですが、バイキング船のイラストなどを見ると、たいがい赤白の帆を上げています。

バイキング船は赤いイメージなのでしょうか。

rover

 

成功するための大ヒント

さて、この曲には、生きる上での大ヒント、成功するための大ヒント、お金持ちになるための大ヒントがアドバイスされているわけです。

人生でのあらゆる事には2面がある。

人生で体験するあらゆる事には、陽の当たる面と陽の当たらない面、つまりは陽と陰があり、その陽の当たる面、明るい面を選んで行動すればよい、というアドバイスですね。

それは物事にとどまらず、自分の気分、考え方を常に明るい方に持って行くと人生がうまく回転していくよ、という大ヒントです。

物事にはポジティブもネガティブもない

本当を言えば、物事にはポジティブもネガティブもなく、物事があるだけなので、それがプラスだとかマイナスだとか思うのは私たち人間の、ものの見方だけだと言えます。

ということは、どんなに悪く思える物事にも、それに見合うだけの良い面があるはずなのです。
どちらの見方をするかは、実は私たちの自由なのです。

ものの見方がカギ

今、自分がどちらの気分なのか、をチェックするのは大切なことです。
もし今、ブルーな気分だったなら、それは同じ大通りの日陰のものの見方をしているからです。
この歌のように、同じ大通りの「ひなたの」ものの見方をすれば、人生は明るく、楽しくなるはずです。

サニーサイドな選択を

また、いくつかの選択肢があるなかでの物事や人を選ぶ場合、明るい気持ちになれるほう、笑顔になれるほうを選ぶと、なかなか良い、明るく「輝く」人生を歩けるのではないかと思います。

sunshine

今回のお話

今回は、NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の第二の主題歌とも言える「On the Sunny Side of the Street」(「明るい表通りで」というタイトルでも知られています)について調べてみたら、人生を生きる上での大ヒントが歌われている曲だった、というお話でした。