- 「ナオミが見る夢」ではなく「ナオミを見る夢」
- 「ナオミの夢」には、日本語版と、ヘブライ語版があります
- 「ナオミ」という名前
- ヘブライ語では「ナオミ」=「幸福」という意味
- 「ナオミ=幸せ」は、誰もが求めるもの
- 恋愛とは、相手に「神」を求める行為、なのかも知れません
- すべてのラブソングは聖歌である
- 「幸せを求める歌」として聞かれたので、大ヒットしたのでは
- ヘブライ語版では
- 今回のお話
「ナオミが見る夢」ではなく「ナオミを見る夢」
「ナオミの夢」というタイトルを見ただけでは、「ナオミが見る夢」とも取れるし「ナオミを見る夢」とも取れますが、「私が夢の中でナオミを見る」という意味です。
「ナオミの夢」には、日本語版と、ヘブライ語版があります
1970年「第1回東京国際歌謡音楽祭」でのグランプリ曲です。
翌1971年1月、日本語版とヘブライ語版のカップリングで発売されて日本でもイスラエルでも大ヒットしました。
その経緯についてはWikipedia が詳しいです。
日本語デジタル版の音質の良さは、こちらの試聴版で確認できます。
「ナオミ」という名前
「ナオミ」という名前は日本でも、もちろん男性の名前でもありますが、女性の名前によく使われる言葉ですね。
たとえば、直美、尚美、奈緒美、直実、直巳、なおみ、などなど。
大坂なおみさん、ナオミ・キャンベルさん、などが有名ですね。
ヘブライ語では「ナオミ」=「幸福」という意味
「ナオミ」はイスラエルでも女性の名前によく使われるのですが、なんと、イスラエルではこの言葉には「幸福」という意味があるそうです。
考えてみると、日本でも「幸子(さちこ)」、あるいは一文字で「幸(みゆき)」という名前もありますね。
私は、この「ナオミ=幸せ」という事実を知って、この曲の大ヒットの秘密が分かったような気がしました。
「ナオミ=幸せ」は、誰もが求めるもの
なぜなら、「幸せ」は、誰もが求めるものだからです。
歌詞の中の「ナオミ」や「君」を「幸福」に置き換えて読んでみると、よく分かります。
そう思って、いちいち置き換えて読んでみると、歌詞の中で意味不明だった「世界中にナオミ」という言葉も、なるほどと意味がわかって来ますね。
「世界が幸せでありますように」みたいな、公明正大な意味になると思います。
恋愛とは、相手に「神」を求める行為、なのかも知れません
さらに、「君が欲しい」という言葉を置き換えてみると「幸せが欲しい」ということになりますね。
「幸せ」は誰もが欲しいと願うものですから、これは誰もが納得すると思います。
もし、「幸せ」が自分からいったん離れてしまったら、「帰ってきてくれ」と願うのは当然ですね。
夢の中でだけでもいいから、楽しく踊っている「幸せ」に会いたいと願うのは不思議ではありません。
恋人を「幸せ」の化身として見る、「幸せ」を擬人化したもの、「幸せ」を投影したもの、とする手法ですね。
恋しているときには、相手は自分にとっての「幸福」そのものだと見えるかも知れません。
もっと言えば「天使」に見えるかも知れないし、「神」に見えるかも知れません。
すべてのラブソングは聖歌である
そんな心理と言葉の整合性を利用して、ラブソングを聖歌にしてしまったのが「天使にラブソングを」で有名な「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」ですね。
「ペギー・マーチ」のポップヒットソングの「彼」を「神」と、当てはめて読んでいるわけです。
考えてみると、すべてのラブソングは、相手の中に神を見る、「聖歌」なのかも知れません。
「幸せを求める歌」として聞かれたので、大ヒットしたのでは
というわけで、この曲の大ヒットの秘密は、女性の名前が「幸せ」という意味だったので、「幸せを求める歌」的な聞かれ方をしたから、という、私の個人的な見解でした。
ヘブライ語版では
この歌のカップリングされた「ヘブライ語版」を聞いてみると、「日本語版」との違いが分かって面白いです。
日本語版だと、間奏の部分が長めなので、ちょっとダレるかな、という感覚ですが、ヘブライ語版の方は、間奏部分にいかにも中東音楽風の楽器やメロディーを使っていて、雰囲気を盛り上げています。
こちらも音質の良い試聴版があります。
中東の、乾燥した気候の中で、「幸せ」について観相するには、この長さの間奏は必要だよ、という感想を、私は持ちました。
ヘブライ語歌詞と訳はこちらです。
英語訳と日本語直訳が見られます。
世界が「幸せ」を求めている
この中で気になるのは「車のライトが赤く光る 」ですが、これは車が通る道路の交差点の信号機が全て赤になっている、という表現だろうと思います。
つまり、全部の交通が「ナオミ」のためにストップして、「ナオミ」が通りやすくして、「ナオミ」が来るのを待っている、というわけですね。
そうなると、ますます「ナオミ」というのは「幸せの神さま」的なニュアンスになりそうですね。
「 私」は「幸せのもの」
もう一つ、このヘブライ語版で面白いと思ったのは、繰り返される「come back to me」のところに相当する「私はあなたのもの」という表現です。「あなた」は当然「ナオミ=幸せ」ですね。
普通なら「幸せは私のもの」と言うところですが、「私は幸せのもの」と言っているところが、やはり、聖歌的な感覚なんでしょうね。
私は「幸せの神さま」のものなのです。
このへんの発想の転換が宗教的な感覚なんだろうなあと思います。
そう言えば、仏教でも「帰依します」という意味の「南無(なむ)」という言葉がありますね。
「なむなおみ」という事になりますか。
哲学的でもあるし、勉強になる曲です。
今回のお話
今回は、「ナオミの夢」の「ナオミ」とは、ヘブライ語で「幸せ」のこと、という事実を知って、歌詞をあらためて「ナオミ」を「幸せ」と読み替えてみると、全てのラブソングは聖歌である、というところにまで考えが広がった、というお話でした。
ヘブライ語、面白いですね〜。アラビア語もそうですが、日本語の縦書きと同じように右から左に書き進めて行くんですね。