一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「スパンキーとギャング」は「ピンキーとキラーズ」のお手本だった

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ダービーハットに見覚えが

この映像は、ネットサーフィンをしていた時、偶然見つけました。元気いっぱいで健康そうな女の子が歌っています。しっかりと大きく開けた口の、メリハリのある、滑舌の良さそうな発音の動きから、伸びのある声が出てきます。


Spanky & Our Gang - Sunday Will Never Be The Same (1967)

これはなかなか聞いていて気持ち良いぞ。

 

気持ち良いだけでなくて、初めての映像なのに何だか懐かしさがあるのはなぜだろう。

 

と思っていると、カメラの画面がバックバンドのメンバーの方に動きます。

 

おやおや?バックバンドのメンバーが何人か帽子をかぶっていて、一人はダービーハット、いわゆる山高帽をかぶっているぞ!

 

ん?ダービーハットをかぶった男どもと元気な女の子ボーカルのバンド、と言えば、

こ、これはまさか! 

「ピンキーとキラーズ」のモデルは「スパンキーとギャング」

そうです!

作曲家の「いずみたく」さんが「ピンキーとキラーズ」のモデルにした、という、あの伝説の、名前だけは聞いていた「スパンキーとギャング」正確には「Spanky and Our Gang」だったのです。

 

「いずみたく」さんがピンキーとキラーズを売り出すにあたって、「スパンキーとギャング」をモデルにしたといういきさつについて、ピンキーこと今陽子さんによる、その時代の貴重なお話が、ラジオでありました。

  

www.tbsradio.jp

 

「スパンキーとギャング」はテレビドラマタイトル

 

例えば、名前からして、よく見るともろにもじってますね。

「スパンキー」が「ピンキー」になり、「ギャング」が「キラーズ」になったのですね。

 

もともと「スパンキーとギャング」というのは、ガキ大将の「スパンキー」と、そのいたずらっ子仲間たちのドタバタを描いた短編コメディー映画で、原題はそのものズバリ「Spanky and Our Gang」(スパンキーとわれらのいたずら仲間、くらいな意味でしょうか)。

 

この映画は、テレビドラマとして編集されて放映されました。

 


The Our Gang Collection - Feature Clip

 

日本でも「ちびっこギャング」というタイトルで放映されていたので、記憶に残っている方もおられると思います。私もリアルタイムで見ていて、「アルファルファ」というひょろひょろの少年をよく覚えてます。

スパンキーという名前

ちなみに、スパンキー「spanky」という言葉は、スパンク「spank」から来ている愛称のようですね。

スパンクの意味は「尻を叩く」ですが、そこから発展して、馬の尻を叩くと速く走るので「馬が疾走する」という意味にもなっています。

 

ejje.weblio.jp

 

「スパンキー」spanky の「a」が「u」になった「スパンキー」spunky だと、「元気な」という意味になるので、ややこしいですが、こちらの方も意味的に関係ありそうですね。見るからに元気そうですから。

 

ejje.weblio.jp

 

エレーヌがスパンキーと似ていた

そのテレビドラマの主役である、ちょっとぽっちゃりなガキ大将「スパンキー」に、彼女(Elaine"Spanky" McFarlane・エレーヌ・スパンキー・マクファーレン)が似ている、というので、そのまま「スパンキー」というニックネームが付けられ、とうとうバンド名にまで採用されたのでした。

 

当のエレーヌとしては「まあ、とりあえずはいいけど〜、あくまでも仮の名前よ」というつもりだったのが、曲がヒットしてしまったので、バンド名もそのまま定着、彼女も公式に「スパンキー」になってしまった、というわけです。

 

ただし、「いずみたく」さんが「ピンキーとキラーズ」で本当に目指したところは、「セルジオ・メンデスとブラジル66」のようなラテン・ジャズ、ボサノババンドでしたが、ピンキーとキラーズのドラマチックな「恋の季節」は、今陽子さんの声量もあって、軽いボサノバタッチとは大違いの朗々たる楽曲になってしまいました。

しかし、それがかえって大ヒットしてしまうのですから、わからないものですね。

 

www.youtube.com

朗々たる歌声が感動を呼びます。

  

恋の季節

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ピンキーのアクションについて

ピンキーが「もえたよ〜〜〜〜」のところで、ビブラートしながらグリッサンドで下降して来るのですが、降りきったところで帽子の前でポーズを取ります。

これは、デビュー間もない最初の頃は、実際にダービーハットを手に取って、おでこの前で顔を隠すようにストップモーションで止める、という振り付けだった、その名残なのです。

それが無くなって、単に帽子の前で指パッチンをするようなポーズに簡略化したのは、帽子で顔が見えなくなるからなのか、ヘアースタイルが乱れるからなのか、また帽子をかぶるのに一発で決めないと帽子をかぶり直すことになってしまうからか、不明ですが、私は帽子を脱いでポーズを決めていた初期のパフォーマンスのほうがカッコよかったと思っています。

なぜ「ピンキー」?なぜ「ステッキ」?なぜ「キラーズ」?

「スパンキーとギャング」が元になった、という事はわかりましたが、もう一つの謎。

そこからなぜ名前が「ピンキー」と「キラーズ」になったかということと、なぜ「ステッキ」を持っていたか、という謎について見てみましょう。

 もう一つのテレビドラマ

当時、やはり日本のテレビで放送されていたアメリカのドラマに、「Roaring 20’s」(ローリング・ストーンズのローリングではなく、ロアリング・騒々しい1920年代、という意味ですね)という番組がありました。

このドラマに登場する「ドロシー・プロヴァイン」が演じるシンガー&ダンサー「ピンキー・ピンカム」の、シルクハットにステッキ、というスタイルとその役名を見ると、なぜ「ピンキーとキラーズ」の「ピンキー」がなぜ「ピンキー」で、なぜステッキを持っていたか、の謎が解けると思います。

 

また、このドラマ「Roaring 20’s」(日本語タイトル「マンハッタン・スキャンダル」)は禁酒法下のアメリカが舞台なので、マフィアの抗争で、本物のギャング、殺し屋たちによってマシンガンが撃たれるという物騒な時代背景でした。

FBIのアンタッチャブル「エリオット・ネス」やマフィアの大ボス「アル・カポネ」の時代ですね。そこから「キラーズ」の由来も読み取れそうです。

 


Dorothy Provine in 'The Roaring 20's'

 

なお、エレーヌ・スパンキー・マクファーレンは、後日、ママス・アンド・パパスの「新生版」、言ってみれば「シン」ママス・アンド・パパスとも呼べるかもなバンドに参加して、ママキャスのボーカルパートを担当しています。

今回のお話

今回は、ネットサーフィンで見つけた「スパンキーとギャング」は、伝説どおり、本当に「ピンキーとキラーズ」のモデルだった、という私にとっては大発見、のお話でした。

最近は、以前はインターネット上でも見られなかった映像も、たくさん出てきているので、いろいろ楽しい発見があります。