一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

ピンキーとキラーズ「かぜの季節」は「カラオケ」の始まりだった。

ピンキーとキラーズ恋の季節」に続く曲は、「季節モノ」第二弾「風の季節」かあ、ロマンチックだなあと思ったら、「風邪の季節」とひっかけてあって、カエルのキャラクターでおなじみの「コルゲンコーワ」の風邪薬のCMソングだったのです。正しくは「かぜの季節」です。

 

 

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もっとも、CMソングとは言うものの、CMっぽさはまったくなく、普通の曲として、立派な、とても良い曲に仕上がっています。

時代的な背景を見ると、このころは、現在ではエンタメ業界で当たり前になっている色々な常識が、まさに新しく作られていた時期にあたりますね。

アーチストがCMとタイアップして新曲を出す、というのも、このころに始まった手法です。

ジュディ・オングさんの「魅せられて」も、「ワコール」とのタイアップCM曲でした。

 

そして、この「風の季節」は、実は「カラオケ」の元祖といっても過言ではないのです。

 カラオケの始まり

この「風の季節」の映像は、当時の宣伝用おまけだった、柔らかめの下敷きのような素材のレコード「ソノシート」を回している映像ですが、録音部分の後半には「風の季節」の演奏のみが入っています。

この演奏のみの部分が今の「カラオケ」につながる先駆け、といっても良い画期的なものなのです。

カラオケを歌う人

現在では「一人カラオケ」も流行りです



当時、「歌のない歌謡曲」みたいな音楽がありましたが、それは歌唱のメロディーラインを楽器が演奏していくスタイルで、アレンジも原曲とはちがうので、単なるムード音楽、バックグラウンドミュージック、のような位置づけでした。

 

このピンキーとキラーズ版でも、メロディーをギターが演奏しているので、「歌のない歌謡曲」に分類されるかも知れません。しかしながら「キラーズ」が演奏しているので、もっと進化した、本格的「カラオケ」との中間的な存在です。当時としては時代の先端を行っていたパフォーマンスと言えます。

 

当時は「一発録り」

 

当時までは、レコードの録音技術も、「一発録り」が基本でした。スタジオに歌手を含む演奏者が集まって、ステージで演奏するように同時に演奏して、その音をそのまま録音するスタイルです。

 

誰か楽器か歌かをミスをすれば録りなおし、か、そのまま押し切るか、でした。

 

ビートルズも初期は一発録り

 

それが変わって行ったについては、「ビートルズ」の役割が大きかったと思います。彼らの初期のレコードでは、基本的に一発取り。ぶっつけ本番を何回か繰り返して、そのうち出来の良いものをレコードにする、という、当時一般的に行われていたレコーディング手法で作っていました。

歌詞を間違っても、そのまま押し切ってます(Please Please Me)

 

ただし、もうすでに音声2トラックはあったようで、ライブ演奏で本来ならジョンとポールがハモる部分を、レコーディングではジョンの歌にはジョンが後から自分の声でハモり、ポールの歌ではポールがあとから自分の声でハモりをレコーディング、ということをやっていました。

その方が声が馴染む、という発想ですね。
それは本人の声なのですから馴染むでしょう。

 

しかし、そんな事を知らない私は、ジョンの声とポールの声はどんなに耳を澄ましても区別がつかないなあ、よく似てるなあ、と感心していました。

ジョンの歌はジョンの声のダブルトラックで、ポールの歌はポールの声のダブルトラックで、本人のハモりなんですから、区別がつかないのは当然でした。

 

ビートルズがカラオケを完成

 

それでも、基本は同時演奏だったのですが、それが録音技術の進歩とともに、録音できるトラックの数がどんどん増えて行き、必ずしも同時に演奏しなくても良くなりました。

 

それぞれの楽器演奏と歌を別々に録音することが出来るようになり、ビートルズはその機能を使い倒しました。

その極致が「サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド」ですね。

そのためもあり、ビートルズはライブ活動をやめてしまいました。

いったん完璧な演奏を録ってしまえば、あとのボーカル部分は、それを聞きながら、何回でも歌い直しが効いたわけです。

 

ビートルズが楽器なしでマイクに向かって歌っているその様子は、まさにカラオケで私達が歌っている姿そのものです。

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この技術をそのまま応用したのが現在の「カラオケ」というわけです。

ヒット曲の演奏のみをベストテン番組が放送

当時のラジオのヒットパレード番組が、本編の曲の他に、上位ヒット曲の歌手が実際のレコーディングで使ったオーケストラだけの伴奏録音だけを、そのまま歌なしの状態で放送に乗せる、ということを始めたのです。

 

みんな「こんなことが出来るんだ〜」と驚きましたし、「これ、伴奏に合わせて自分で歌えるじゃん」という、とてつもなく嬉しい発見があったのです。

 

今でも覚えているのは「南沙織」の「傷つく世代」ですね。これはあの筒美京平さんの作曲なので、まあカラオケのカッコいいこと。歌がないので、演奏の細部まで聞こえて、それはそれはエキサイティングなことでした。

 

傷つく世代

傷つく世代

  • シンシア
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

そこから元音源を使ったカラオケが普及するのに、時間はかかりませんでした。あっという間に広まって、カラオケ当たり前の世界になりましたね。

 

今回のお話

 

今回は、ピンキーとキラーズ「かぜの季節」のおまけのソノシートは、その後の歴史をたどってみると、現在の「カラオケ」の先駆けの一つだったことがわかった、というお話でした。