一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「ロミオとジュリエット」の二つの歌詞を聞き比べ・「What Is A Youth?」と「A Time For Us」

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「サウンドトラック版」と「それ以外」

1968年のイギリス・イタリア合作映画『ロミオとジュリエット』で歌われるニーノ・ロータ作曲の「愛のテーマ」。

日本では「オリコンシングル・チャート」で、サントラ盤のシングルが1968年から何と64週もの間チャートインしていて、最高位は第18位。

よく知られた曲ですが、今回調べてみたら、この曲に歌詞が2種類あることが分かって、意外でした。

【映画版・主題歌】What is a youth?

この歌が歌われるのは、映画の中で、イギリス人 Leonard Whiting (レナード・ホワイティング)が演じるロミオと、やはりイギリス人の Olivia Hussey(オリビア・ハッセー)が演じるジュリエットが初めて出会う、キャピレット家の宮廷の祝宴での場面でです。

ちなみに、ロミオ役には最初、ポール・マッカートニーにオファーがあったそうです。

また、シェイクスピア劇の俳優として知られ、その発音が英語のお手本と言われるローレンス・オリヴィエがナレーションを担当したことでも話題になりました。

歌い手役の声ではなかった

さて、映画の祝宴での場面で、この曲はイタリア人歌手 Bruno Filippini(ブルーノ・フィリッピーニ)が演じる宮廷の歌い手 レオナルド(Leonardo)によって歌われている設定なのですが、英語版での実際の歌は実はアテレコで、英語が母国語と思われる Glen Weston(グレン・ウェストン)という歌手が、吹き替えで歌っているのでした。

ブルーノ・フィリッピーニ自身の歌声は、この映画のイタリア語吹き替え版で聞かれます。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1e/Bruno_filippini.jpg

 Bruno Filippini(ブルーノ・フィリッピーニ)

なるほどな「イギリス・イタリア」の組み合わせ

そして日本でヒットしたのは、英語版のオリジナル・サウンド・トラック版です。

実際のレコードでは、ジュリエットのセリフの途中でフェイドアウトしていましたが、いかにも中世的な格調高い音楽と歌詞が印象的でした。

ちなみに、映画のロケ地は全て、原作の物語の舞台であるイタリアです。

そして物語の原作は、言うまでもなくイギリスの作家シェイクスピアによるものなので、「イギリス・イタリア合作」は、なるほどな組み合わせ、ということになりますね。

さて、映画の中で歌っている レオナルド(Leonardo)は、宮廷の楽団をバックに歌う宮廷付きの歌手なのでしょうか、吟遊詩人なのでしょうか

【Romeo & Juliet】ロミオとジュリエット(1968) What Is A Youth? ~出会い《英語版(日本語字幕)と日本語版》

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【映画版・主題歌】What is a youth? 歌詞と和訳

What is a youth?
若い男とは何?

Impetuous fire.
急に燃え上がる炎。

What is a maid?
乙女とは何?

Ice and desire.
氷と欲望。

The world wags on.
世の中そういうものです。

 

A rose will bloom
バラは咲くでしょう

It then will fade
そしてそれは枯れるでしょう

So does a youth.
若い男もそうです。

So does the fairest maid.
最も美しい乙女もまたそうなのです。

 

Comes a time when one sweet smile
やがて時がやって来ます、一つの甘い微笑みが訪れるときが、

Has its season for a while
しばしの間、モテ期になるのです

Then love’s in love with me.
なので、恋人は私に恋をするのです。

 

Some may think only to marry,
ある恋人たちは結婚することだけ考えるでしょう、

Others will tease and tarry,
ほかの恋人たちはふざけたり、もったいぶったりします、

Mine is the very best parry.
そういう私の恋人は、はぐらかしの名人なんだけどね。

Cupid he rules us all.
キューピッドが、私たちみんなを支配しているのです。

 

Caper the caper; but sing me the song,
馬鹿騒ぎもしましょう、しかし、私にあの歌を歌ってください、

Death will come soon to hush us along.
死がすぐにやって来て、私たちをぐっすり眠らせてしまうでしょう。

Sweeter than honey and bitter as gall.
ハチミツより甘くて、胆汁のように苦い。

Love is a pastime that never will pall.
恋とは飽きることのない暇つぶし。


Sweeter than honey and bitter as gall.
ハチミツより甘くて、胆汁のように苦い。

Cupid he rules us all.
キューピッドが私たちみんなを支配するのです。

 

A rose will bloom,
バラは咲くでしょう。

it then will fade
そしてそれは枯れるでしょう。

So does a youth.
若い男もそうです。

So does the fairest maid.
最も美しい乙女もまた、そうなのです。

 

Music : Nino Rota(ニーノ・ロータ)
Lyrics:Eugene Walter(ユジーン・ウォルター)

【インストルメンタル】ヘンリー・マンシーニ版

アメリカでのヒットは、ヘンリー・マンシーニの編曲ならびに彼自身もピアノで演奏に参加しているインストルメンタル・バージョンです。

アメリカヒットチャートBillboard(ビルボード) Hot 100のシングルチャートで、1969年6月28日から2週連続でのチャート1位を獲得したのでした。

前週までの5週間、連続1位だった、あのビートルズ「ゲット・バック」を追い落としての1位でした。

Love Theme from "Romeo and Juliet" · Henry Mancini

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【インストルメンタル】パーシー・フェイス版

続いて同じ年のヒットで、同じくインストルメンタルですが、アメリカ、パーシー・フェイス楽団の女性コーラスを効果的に使った演奏が1969年のグラミー賞「最優秀コーラス賞」を受賞します。

Percy Faith - A Time for Us (Love Theme from Romeo and Juliet)

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【別歌詞バージョン】A Time For Us アンディ・ウィリアムス版

そんなこんなで、アメリカではインストルメンタルの方がヒットしたので、著作権の関係もあるのかもしれませんが、そのメロディーに映画とは違う曲名と、アメリカ人の作詞家による歌詞が付きました。

そして、そのオリジナルとは違う歌詞バージョンを、ジョニーマチス、レターメン、エンゲルベルト・フンパーディンクなど色々な歌手が歌っているのです。

オリジナル歌詞を歌ったグレン・ウェストンによる、こちらの歌詞のバージョンの歌唱もあります。

こちらはアンディ・ウィリアムス版。思いっきり編曲してあります。

A Time For Us ANDY WILLIAMS (with lyrics)

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【別歌詞バージョン】A Time for Us(Andy Williams ) の歌詞と和訳

A time for us some day there'll be
私たちのための時が、その時がいつかやって来るでしょう。

When chains are torn by courage born of a love that's free
その時には鎖が引きちぎられる。無償の愛から生まれた勇気によって。

A time when dreams so long denied
その時には、そんなにも長きにわたり拒否されて来たたくさんの夢たちが、

Can flourish as we unveil the love we now must hide
花開くことができるでしょう。私たちが愛を白日のもとにさらすことによって。それは今は隠さなければならないのだけれど。

 


A time for us at last to see
私たちのための時、ついに目の当たりにする時が、

A life worthwhile for you and me
生きる価値のある、あなたと私のための人生をこの目で見る時が。

 

 

And with our love through tears and thorns
そして、たくさんの涙とたくさんのイバラのトゲをくぐり抜けて来た私たちの愛とともに、

We will endure as we pass surely through every storm
私たちは耐えるのです。私たちはどんな嵐も確かに乗り越えて来たのですから。

A time for us, some day there'll be a new world
私たちのための時が、いつかやって来るでしょう、そこにはあるのは新しい世界、

A world of shining hope for you and me
光り輝く希望の世界、あなたと私のための世界。

 

 

A time for us at last to see
私たちのための時、ついに目の当たりにする時が、

A life worthwhile for you and me
生きる価値のある、あなたと私のための人生をこの目で見る時が。

 

 

And with our love through tears and thorns
そして、たくさんの涙とたくさんのイバラのトゲをくぐり抜けて来た、私たちの愛とともに、

We will endure as we pass surely through every storm
私たちは耐えるのです。私たちはどんな嵐も、確かに乗り越えて来たのですから。

A time for us, some day there'll be a new world
私たちのための時が、いつかやって来るでしょう、そこには新しい世界が。

A world of shining hope for you and me
光り輝く希望の世界が、あなたと私のための世界が。

 

 

Music : Nino Rota(ニーノ・ロータ)
Lyrics:Edward Snyder(エドワード・スナイダー)
              Lawrence Kusik(ローレンス・キュセック)

今回のお話

今回は、ロミオとジュリエットのテーマ曲のオリジナル歌詞と、ボーカル曲用の歌詞の、二つの歌詞を、それぞれ読んでみました。

オリジナルサウンドトラック版は、日本で言えば「命短し恋せよ乙女」(ゴンドラの唄)のような、死生観まで踏み込んだ歌詞ですね。

そう言えば「ゴンドラの唄」自体も、元々はイタリア・ベネチアの民謡の歌詞がヒントになっているので、これはイタリア的な発想なのかも。

そのオリジナル・サウンドトラック版の作詞者 Eugene Walter(ユジーン・ウォルター)はアメリカ人ですが、20歳代でパリに渡ってフランス語の雑誌など刊行し、40歳代でイタリアのローマに移って、フェリーニの映画などにも出演していたという多彩な人なので、その間にイタリア的感性も培われていたのかもしれません。

それに対して、ボーカル曲用の歌詞は、アメリカ人のプロの作詞家たちによるもので、男女間の愛と言うよりもむしろ、みんなで苦難の時を耐え忍んで、栄光と解放の日を迎えよう、という、国家発揚「栄光への脱出」みたいな歌詞になっていますね。

日本ではサウンドトラック版、つまりイギリス・イタリア合作のオリジナル版の方がヒットしたので、日本人の感性は欧州寄りなのかも知れません。