一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「カイマナ・ヒラ」とは、「ダイヤモンド・ヘッド」のことだった。

アメリアリゾナ州からハワイに飛ぶ飛行機内で女性が出産、ちょうど乗り合わせていた医師と看護師のおかげで早産にもかかわらず無事出産、ハワイに到着後ただちに入院したと言うニュースがありました。

飛行機

空の上で誕生

 「カイマナ」は「ダイヤモンド」のこと

その赤ちゃんには「カイマナ」というミドルネームが付けられたそうですが、「カイマナ」はハワイ語で「ダイヤモンド」を意味するそうです。

 

ここで、ピンと来る人は来てると思いますが、「カイマナ」が「ダイヤモンド」だとすれば、「カイマナ・ヒラ」という曲と「ダイヤモンド・ヘッド」という曲。もしや、関連があるのでは?

 

関連ありありでした。

「カイマナ・ヒラ」と「ダイヤモンド・ヘッド」 

「カイマナ・ヒラ」のヒラは英語の「Hill」(ヒル=丘)から来ているので、「カイマナ・ヒラ」とは「ダイヤモンドの丘」という意味になります。

 

つまり「カイマナ・ヒラ」とは、ハワイ、オアフ島ワイキキビーチから見える丘「ダイヤモンド・ヘッド」のことだったのです。

 日本にも「ダイヤモンド富士」が

ちなみに、「ダイヤモンド・ヘッド」の由来としては、火山であるダイヤモンド・ヘッドにある火山性の岩石の成分(方解石など)が太陽の光を反射してキラキラ光るので、ダイヤモンドみたいだ、ということから名付けられた、という説などがあります。

 

さらにちなみに、ダイヤモンド・ヘッドは上空から見ると丸い輪っか状の山で、阿蘇山カルデラのような、月の火口のような形をした、火山の外輪山だということが分かります。

ja.wikipedia.org

私は、山全体の丸い形と、ダイヤモンドヘッドの部分だけ突出していることから、ペンダントヘッドのヘッドの部分がダイヤモンドの、ネックレスのイメージから来ているのではないかと推測します。

ダイヤモンド・ヘッド全景

右のとんがった部分がダイヤモンド・ヘッド

日本でも、まさに呼び名が「ダイヤモンド」そのままの、「ダイヤモンド富士」が有名ですね。

ダイヤモンド富士

ダイヤモンド富士

ワイキキビーチからは、ネックレスのヘッド部分ではなく、もっと左のネックレスの鎖部分から朝日が昇るようですが、海の上からなら、もろ、こんなふうにダイヤモンド・ヘッドの頂上から昇る朝日が見えそうです。

宝石のヘッド

宝石のヘッド

同じタイトルでも違う曲想

のんびりしたハワイアン音楽の代表曲「カイマナ・ヒラ」と、ノリノリエレキサーフィンサウンドの代表曲であるベンチャーズ「ダイヤモンド・ヘッド」では全く曲想が違うので、この2曲が同じタイトルだったとは、夢にも思いませんでした。

 

同じ題材を扱っても、全然違う曲になるのが面白いですね。

 

ダイヤモンド・ヘッド

こちらはベンチャーズ「ダイアモンドヘッド」。

 


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今にして思うと、いわゆる「テケテケテケテケ」の「グリッサンド奏法」は、サーファーが乗っている大波がくずれる様子を表現しているんですね。

 

ダイアモンド・ヘッド

ダイアモンド・ヘッド

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そうすると、あの弦を「ピュッピュッ」とこする音は何を意味しているのでしょうか。

のちの「アパッチ」という曲でも同じ音が聞こえますが、それは西部劇に出てくるアパッチ族が放った矢の飛んでくる音なんだろう、ということはわかります。

 

「ダイヤモンド・ヘッド」の場合は、サーフィンの最中なので、何が飛んで来るのでしょう。

サーフィン

「パイプライン」になりかけ

波の水しぶきが飛んでくる音なのでしょうか。それほどのスピードが出ているんだ、という表現なのかな。

 

カイマナ・ヒラ

一方、こちらはのんびりムードの「カイマナ・ヒラ」


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実は「カイマナ・ヒラ」の歌詞を読んでみると、ちゃんと「サーフィン」のことも歌われています。

ただ、それはあくまでも風景の中の一つの点景、みたいな扱いです。

ameblo.jp

 

カイマナ・ヒラ

カイマナ・ヒラ

  • ウェブリー・エドワーズ, ハウナニ, アル・ケアロハ・ペリー & ハワイ・コールズ・オーケストラ
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「ダイヤモンド・ヘッド」のほうの、波乗りをしているサーファー自身の、躍動する視点からの曲、というわけではなく、遠くから見ている曲なので、のんびりムードなんですね。

 

今回のお話

今回は、「カイマナ・ヒラ」と「ダイヤモンド・ヘッド」が同じ意味のタイトルだった、という発見から、2つの曲を聴き比べてみました。

リラックスムード満点の「カイマナ・ヒラ」と、躍動感あふれる「ダイヤモンド・ヘッド」。

視点をどこに持ってくるかで、同じものを見ていても、世界は全くちがって見えるんですね〜。

勉強になりました。

ヘドバとダビデ「ナオミの夢」の「ナオミ」とは「幸せ」のことだった!

 


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「ナオミの夢」には、日本語版と、ヘブライ語版があります


1970年「第1回東京国際歌謡音楽祭」でのグランプリ曲です。

翌1971年1月、日本語版とヘブライ語版のカップリングで発売されて日本でもイスラエルでも大ヒットしました。

その経緯についてはWikipedia が詳しいです。

ja.wikipedia.org

日本語デジタル版の音質の良さは、こちらの試聴版で確認できます。

ナオミの夢

ナオミの夢

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「ナオミ」という名前

  「ナオミ」という名前は日本でも、もちろん男性の名前でもありますが、女性の名前によく使われる言葉ですね。

たとえば、直美、尚美、奈緒美、直実、直巳、なおみ、などなど。

大坂なおみさん、ナオミ・キャンベルさん、などが有名ですね。

 ヘブライ語では「ナオミ」=「幸福」という意味

「ナオミ」はイスラエルでも女性の名前によく使われるのですが、なんと、イスラエルではこの言葉には「幸福」という意味があるそうです。

考えてみると、日本でも「幸子」、あるいは一文字で「幸」という名前もありますね。

私は、この「ナオミ=幸せ」という事実を知って、この曲の大ヒットの秘密が分かったような気がしました。

「ナオミ=幸せ」は、誰もが求めるもの

なぜなら、「幸せ」は、誰もが求めるものだからです。

歌詞の中の「ナオミ」や「君」を「幸福」に置き換えて読んでみると、よく分かります。

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そう思って、いちいち置き換えて読んでみると、歌詞の中で意味不明だった「世界中に」という言葉も、なるほどと意味がわかって来ますね。

「世界が幸せでありますように」みたいな、公明正大な意味になると思います。

恋愛とは、相手に「神」を求める行為、なのかも知れません

さらに、「君が欲しい」という言葉を置き換えてみると「幸せが欲しい」ということになりますね。

「幸せ」は誰もが欲しいと願うものですから、これは誰もが納得すると思います。

もし、「幸せ」が自分からいったん離れてしまったら、「帰ってきてくれ」と願うのは当然ですね。

夢の中でだけでもいいから、楽しく踊っている「幸せ」に会いたいと願うのは不思議ではありません。

恋人を「幸せ」の化身として見る、「幸せ」を擬人化したもの、「幸せ」を投影したもの、とする手法ですね。

恋しているときには、相手は自分にとっての「幸福」そのものだと見えるかも知れません。

もっと言えば「天使」に見えるかも知れないし、「神」に見えるかも知れません。

すべてのラブソングは聖歌である

そんな心理と言葉の整合性を利用して、ラブソングを聖歌にしてしまったのが「天使にラブソングを」で有名な「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」ですね。

「ペギー・マーチ」のポップヒットソングの「彼」を「神」と、当てはめて読んでいるわけです。

考えてみると、すべてのラブソングは、相手の中に神を見る、「聖歌」なのかも知れません。

 「幸せを求める歌」として聞かれたので、大ヒットしたのでは

というわけで、この曲の大ヒットの秘密は、女性の名前が「幸せ」という意味だったので、「幸せを求める歌」的な聞かれ方をしたから、という、私の個人的な見解でした。

ヘブライ語版では

この歌のカップリングされた「ヘブライ語版」を聞いてみると、「日本語版」との違いが分かって面白いです。

 


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日本語版だと、間奏の部分が長めなので、ちょっとダレるかな、という感覚ですが、ヘブライ語版の方は、間奏部分にいかにも中東音楽風の、楽器やメロディーを使っていて、雰囲気を盛り上げています。

こちらも音質の良い試聴版があります。

ナオミの夢

ナオミの夢

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中東の、乾燥した気候の中で、「幸せ」について観相するには、この長さの間奏は必要だよ、という感想を、私は持ちました。

ヘブライ語歌詞と訳はこちらです。
英語訳と日本語直訳が見られます。

lyricstranslate.com

 世界が「幸せ」を求めている

この中で気になるのは「車のライトが赤く光る 」ですが、これは車が通る道路の交差点の信号機が全て赤になっている、という表現だろうと思います。

つまり、全部の交通が「ナオミ」のためにストップして、「ナオミ」が通りやすくして、「ナオミ」が来るのを待っている、というわけですね。

そうなると、ますます「ナオミ」というのは「幸せの神さま」的なニュアンスになりそうですね。

「 私」は「幸せのもの」

もう一つ、このヘブライ語版で面白いと思ったのは、繰り返される「come back to me」のところに相当する「私はあなたのもの」という表現です。「あなた」は当然「ナオミ=幸せ」ですね。

普通なら「幸せは私のもの」と言うところですが、「私は幸せのもの」と言っているところが、やはり、聖歌的な感覚なんでしょうね。

私は幸せの神さまのものなのです。

このへんの発想の転換が宗教的な感覚なんだろうなあと思います。

そう言えば、仏教でも「帰依します」という意味の「南無(なむ)」という言葉がありますね。

「なむなおみ」という事になりますか。

 

哲学的でもあるし、勉強になる曲です。

 

今回のお話

今回は、「ナオミの夢」の「ナオミ」とは、ヘブライ語で「幸せ」のこと、という事実を知って、歌詞をあらためて「ナオミ」を「幸せ」と読み替えてみると、全てのラブソングは聖歌である、というところにまで考えが広がった、というお話でした。

ヘブライ語、面白いですね〜。アラビア語もそうですが、日本語の縦書きと同じように右から左に書き進めて行くんですね。

 

眠りの妖精 「ミスター・サンドマン」に、女の子が夢のお願いをするのに「薔薇のような唇の」男の子?

この曲には3種類の歌詞が存在する!

 

 

コーデッツ版の「ミスター・サンドマン」は当時の大スター「リベラーチ」へのトリビュートソングだった

  

Flash Mob Jazz」版、バーバーショップスタイルの「Mr.Sandman」

youtu.be


Mr Sandman Live in Brighton by Flash Mob Jazz HDwww.youtube.com

 

曲の前奏部分を「Flash Mob Jazz」コーラスのそれぞれのメンバーが「ボン」「ボン」「ボン」と「一音」だけ歌うことを繰り返してますね。

 

その「一音」ずつが、次々につながって行くことによって、分散和音のハーモニーがきれいに生まれるのが、なんとも面白くて「楽」しいですね。

 

このブログのタイトル「一音九九楽(いちおんくくらく)」に通じるものがあります。一音ずつが集まって、たくさんの楽しいことが起こる、というわけです。

 

彼らは床屋さんのお店の中で演奏していますが、これにはちゃんとこだわりの由来があります。

 

バーバーショップ音楽とは

基本的に4人一組、カルテットのアカペラコーラスは「バーバーショップ音楽」と呼ばれているのです。


アメリカの街角での、陽気な理髪師やヒマなお客たちがコーラスしたのが始まりだ、というところから、この「Flash Mob Jazz」の演奏も、実際の床屋さん、バーバーショップでパフォーマンスをしているのですね。

 

 

元歌の「コーデッツ」は女の子の立場から

この演奏の元歌は、4人組の女声コーラスグループ「コーデッツ」(Chordettes)のバージョンです。


“Chord”「コード」というのは「ギターコード」の「コード」で、「和音」の意味です。
なので、この「コーデッツ」というグループ名は、日本語で言えば「和音ちゃんたち」みたいなニュアンスでしょうか。

 

The Chordettes - Mr. Sandmanyoutu.be


歌詞を読んでみると、この曲は基本的に女の子のための曲のように見えますね。具体的には「超イケメンと仲良くなることを夢見る女の子」の歌のようです。

british-791.blogspot.com

サンドマンは「眠りの妖精」なので、とりあえず、私を眠らせて、夢を見せてくれるようにお願いするのですね。

 

 

Mr Sandman

Mr Sandman

  • ザ・コーデッツ
  • ポップ
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眠りの砂

妖精「サンドマン」が眠らせるのに使うのは「サンド」つまり「砂」です。妖精が使う砂ですから、魔法の砂ですね。


砂を入れた袋を持っている、というお話もあるので、日本の「大黒様」とか「サンタクロース」みたいでもありますね。

 

それにしても、西洋の伝承とはいえ、砂を目に入れるというのはユニークな発想だなあ、と思いましたが、私自身が眠くなった時、ちょっと目が乾いたようになりました。

 

そのときの感覚が、「あ〜、これはたしかに、ものすごく細かい粉のような砂がちょっと目に入った、みたいな感じかもしれない」と、納得できる感覚でした。

 

妖精が振りまく魔法の砂とマジックビーム

この感覚から、人が眠くなるのは誰かが、例えば妖精が、「目に見えない魔法の砂を目にまいてるのかも〜」という発想が出てきた、という可能性は充分にありますね。

 

「魔法の砂」と言うよりは「魔法の粉」と言ったほうがロマンチックでしょうか。
あのティンカーベルが振りまく光の粉みたいなキラキラの星のような砂かも知れません。

魔法の光

Pixabayより

「星くず」というくらいですから、夜空に無数に輝く星そのものかも知れませんね。
そう思うと一緒に歌われている「マジック・ビーム」とは月の光のことなのかも。

 

 子供を寝かしつける時にも

子供は眠くなると目をこすりますね。


そこで、親が「ミスターサンドマンが来たんだね〜、いい夢が見られるよ、おやすみ」とか言って、子供を寝かしつける場面が想像されます。

 

そして、魔法の光線「マジックビーム」で、一番可愛い男の子と仲良くなる夢を見させてね、という、とてもちゃっかりした歌になっています。

 

男の子なのに「薔薇のような唇」?

ところで、この曲の歌詞、ちょっと違和感を感じるところがありませんか?
女の子が憧れの男の子に「バラのようなくちびる」を求めるでしょうか。

 

実はちゃんとその理由がありました。

 

最初は男性の立場からの歌

この曲の作詞作曲は「パット・バラード(Pat Ballard)」という人ですが、創唱者は「ヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe)」という男性歌手です。

 

彼は自身のオーケストラのバンドマスターだったので、1954年の5月に自身のオーケストラの伴奏でレコードを出しています。

 

Vaughn Monroe – Mr. Sandmanyoutu.be

 

 この時の歌詞がオリジナルの歌詞、ということになります。

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モンロー氏は男性なので、歌詞の中の夢に出てくるのは女性です。


元々のオリジナルの歌詞にある言葉、「桃(のような薄いピンク)とクリームのような(白い)肌」という表現と、「(白い)クローバーの花のような(歯がこぼれる)(赤い)バラの花のようなくちびる」という形容は、むしろ女性のものですから、もともとは男性が女性に憧れる歌だったわけです。

 

このオリジナル版の歌詞の中には、コーデッツ版に出てくる「道化師(アパラーチ)」も「リベラーチェ」も、どこにも見当たりません。

とてもシンプルかつストレートに、寂しい男の子が眠りの妖精サンドマンに、とびきり可愛い女の子の夢を見させてくれるように、ひたすら訴える歌詞ですね。 

 

コーデッツとフォー・エイセスがカバー

このオリジナル曲は大ヒットしたんですね。そのヒットに便乗しようと、男性コーラスグループ「フォー・エイセス」と女性コーラスグループ「コーデッツ」が 相次いでカバーレコードを出します。

 

フォー・エイセス版は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でも

「フォー・エイセス」のほうは男声4人のコーラスグループだったので、歌詞もモンローの歌ったオリジナルそのまま、、、ではありません、リズミカルに歌うためにちょっと歌詞を変えていますが、男性が女性に憧れる歌であるという設定は同じです。

 

この「フォー・エイセス」版は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の中でも聞くことができます。主人公が昔の世界にタイムスリップした場面で、1955年11月5日(映画に出てくる当日の新聞の日付け)当時、流行っていた曲の代表として流れます。

 

コーデッツもフォーエイセスも大ヒット

コーデッツ版はこの1955年の前年の年末からこの年の年始あたりにビルボード1位を数週独占し続けています。

フォーエイセス版は遅れて、自身最大のヒットでビルボード1位を獲得した「慕情」の主題歌「Love Is a Many Splendored Thing」につられるように、1955年にヒットしています。

 


youtu.beMr.Sandman(TheFourAces)

 

 

オリジナルをちょっと変えてある歌詞はこちらです。

www.karaoke-lyrics.net

 

憧れの彼女の肌の色は「クリームとミックスされた桃」と、さらに具体的な描写になっています。

 

コーデッツ版では歌詞を大工事

ところが、「コーデッツ」のほうは女声4人のグループです。

さあ、男性が女性に憧れる内容の歌詞をどうするのか。

 

英語の歌では「彼氏」「彼女」を入れ替える

英語の歌では伝統的に、歌詞の中に出てくる「You」は、男性女性の区別はありませんから、そのままで問題ありませんが、男性が歌う場合の「彼女」(She とか her とか)という言葉は、女性が歌う場合には「彼」(He とか him とか)に変えて歌うのが普通でした。もちろん、その反対のケースも同様です。

 

そこで「コーデッツ」は、女声グループが歌うということで、定石通り、「make her」を「make him」に変えています。

 

それだけでは終わらない

そして、ここからが大工事ですが、まず「桃とクリームのような肌の色」という言葉はカットしました。


しかしながら、「クローバーの中のバラようなくちびる」という表現、これはそのまま残したのですね。

 

「roses in clover」つまり、バラの花に例えられる燃えるような赤いくちびると、それとセットになった、クローバー(シロツメ草)の花のように白く輝くきれいに並んでいる歯の描写が残ったわけです。

 

clover

Pixabayより

薔薇のような唇の男性

なぜ、女性が憧れる「男性」のことを描写するのに、この女性的な表現を残したのか。

 

実は当時、その表現にピッタリの男性が実在したからなのです。
薔薇のような唇と、こぼれるような白い歯の持ち主である男性。

 

その男性は、当時一世を風靡して、知らない人はいない、というくらい大人気のピアニストだった「リベラーチェ」という人です。

 

聞いたことがある名前?と思いますが、そうです。

 

「リベラーチェ」を歌詞に入れてしまった


「コーデッツ」版の歌詞の中に出てくる「リベラーチェ」です。実際の発音としては、その前の行に出てくる「パリアーチ」と韻を踏んでいるので「リベラーチ」ですね。


「リベラーチのようなウェーブのかかった髪」という歌詞のとおりに、「リベラーチ」は強めのウェーブヘアーがトレードマークでした。

 

youtu.be

ja.wikipedia.org

 

 

ピアニストとして公演をするときのゴージャスな衣装も有名で、女装をすることもあり、当然、唇は薔薇の色です。

 

薔薇

Pixabayより



このへんの様子は「恋するリベラーチェ」原題"Behind the Candelabra"(枝付き燭台の陰で)という映画にもなっています。恋する相手は男性です。


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エンタメ界の大スター「リベラーチ」の影響力は絶大で、「エルヴィス・プレスリー」や「エルトン・ジョン」にも、極端にエリの立ったキンキラのステージ衣装などで影響を与えました。

 

グリッサンド」の音も聞きどころ

「リベラーチ」はピアニストとして大人気だったので、「コーデッツ」版では、歌詞の中の「リベラーチ」という彼の名前を歌った直後に、ピアノによるグリッサンド(鍵盤の高い方から低い方へ一息に、「トゥルルルルルルルン!」と勢いよく指をすべらせて音を出す)の音が聞こえますが、これも、派手好きな「リベラーチ」がピアノ演奏でよく使っていた、彼のトレードマークのようなピアノテクニックだったのです。

 

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リベラーチェに対するトリビュートソング

つまり、コーデッツ版はもはや、リベラーチェに対するファンソング、トリビュートソングだと言っても過言ではありません。

 

ビートルズが一世を風靡した時にも、「私のまわりにビートルズがいるの」といった歌詞の「夢見るビートルズ」というトリビュートソングができて、それも大ヒットした、ということがありました。


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考えてみれば、この「夢見るビートルズ」も、ジョンもポールもジョージもリンゴも、憧れのみんなが私のまわりにいて演奏してくれている場面を夢見る、という内容です。

「憧れの人」は、「夢見る」ものなのかも知れません。

そうするとやっぱり、寝る時には「ミスターサンドマン」に、憧れの人に「夢で逢えたら」と、お願いしたくなりますね。

 

今回のお話

今回は、Mr.Sandmanの歌詞には3つのバージョンがあり、読み比べてみたら、コーデッツ版の歌詞は、当時のピアノスター「リベラーチ」のことを強く意識した歌詞に変えていて、ほとんど彼へのトリビュートソングになっていたことが分かった、というお話でした。


これだけ歌詞を変えてしまうと、著作権とかどうなるんだろうと思いますが、マービン・ゲイ版のように「2つの唇」を「2つの目」にしてしまっているのを聞いたりすると、アメリカではそのへん、かなり自由なのかも、とは思います。

「カルメン・マキ」の歌う「マキの子守唄」の元曲は、イスラエルの伝承歌だった

 

 

マキの子守唄

マキの子守唄

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 この曲の試聴可能29秒の中には、曲が始まる前の、カルメン・マキさん本人によるナレーションが入っています。

1951年生まれのカルメン・マキさんの、1969年当時、録音時にはまだ17歳の声です。

試聴版なので、聞けるのは「母親の歌う子守唄が好きだった」「スペインの子守唄【ショーレム】に歌詞をつけた」という内容のナレーション部分だけで、曲本体が始まる前に時間切れになってしまいます。

 

本編の歌は、本人歌唱の最近版のものがこちらで聞けます。

こちらは2015年のカルメン・マキさんのライブ音声です。映像はGYAOで見られます。

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 歌詞は寺山修司さん

 

この曲の歌詞を書いたのは、当時、カルメン・マキさんも団員だった劇団「天井桟敷」を主宰していた寺山修司さんです。

私も渋谷のJanJanでの天井桟敷の公演を見に行って、終了後、現場にいらっしゃった寺山さんと目が合ったのを憶えてます。

白のタートルネックと濃い色のジャケットでカッコよかったです。

団員は当時のファッション・ブランド「JUN」などの、北欧の霧の中から現れそうなクラシックでオシャレで洗練されたコスチュームで、同時代の唐十郎さんの主宰する泥臭い「赤テント」の「状況劇場」とは正反対のいでたちでしたね。「赤テント」の方は、ザンバラ髪に「赤ふんどし」の世界でしたから。

 

印象的な歌詞

 

歌詞も素晴らしかったですね。印象的なフレーズがありました。

赤いバラ一輪を 駅の伝言板にさし

出典

www.uta-net.com「マキの子守唄」作詞:寺山修司

 

「駅の伝言板」である「黒板」はもう過去の物になってしまいましたが、携帯などない時代に、駅で待ち合わせた相手に「佐藤へ、いつもの喫茶店で待ってる。スズキ」などのメッセージをチョークで書いてあったものです。

 

駅の伝言板

出典 いらすとや

そこに赤いバラ一輪をさす、という行動は、「この自分の心が、見知らぬ誰かの心に届いてほしい」という願いから出る行動であることは、よく分かりますね。

 

 元の曲は子守唄?

 

さて、この曲で気になるのは、元になった曲です。

マキさんのナレーションによると、「スペインの小さな町の」「ショーレム」という「子守唄」という事になっていますね。

上の歌詞紹介サイトでも「作曲:スペイン民謡」となっています。

この曲を紹介する記事などでも「スペイン民謡」と書かれたりしています。

 

「スペイン由来」は創作?

 

ところが、調べてみたところ、どうも「スペインの小さな町」には行き着かないのです。

なので、このナレーションはどうやら寺山修司さんの創作による、演劇のセリフのようなもの、と見たほうが良いような気がします。

カルメンと言えばスペインが舞台のオペラだよね〜、そうだ、この曲はスペインの民謡ということにしよう」という、意外に「あるある」発想ではなかったかと推察します。

そう思うと、「スペイン民謡」というこの曲についてのクレジットや記事も、実は裏付けなく、このナレーションを根拠にしているのではないか、とも思えてきます。

 

実際には「イスラエル」の伝承歌

 

実際の元の曲は、「Heiveinu Shalom Aleichem」(へヴェーヌ シャローム アレーヘム)という、イスラエルの伝承歌です。つまり言葉はユダヤ人が使っているヘブライ語です。

 

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 一夜漬け、ヘブライ語講座

 

ショーレム(Sholem)は表記が違う(「表記の揺れ」と言います)だけでシャローム(Shalom)と同じ言葉なのです。「平和、平安」を意味します。

 

アレーヘム(Aleichem)は「あなた(方)に」なので、「平安をあなた(方)に」ですね。

 

「Shalom Aleichem」とつなげると、「Shalom」の最後のmと「 Aleichem」の最初のAがつながって発音されます。

つまり「Shalomaleichem」(シャローマレーヘム)のようになります。

 

日常的に「あいさつ」として使われる言葉なのですが、このあいさつを言われて返す方は、語順を逆にして「Aleichem Shalom」と返します。「平安をあなたに」と言われて「あなたに平安を」と返す、となるわけですね。

 

「Heiveinu」(へヴェヌ)は、専門サイトによると

  “hevenu”これは「もたらす」と言う意味の動詞”h-v-v”の一人称複数完了体で、 「われらはもたらした」の意味です。”shalom”はこの場合「平和」の意味です。”aleichem”は~の上に」を意味する”al”の変化形で「あなた方の上に」と言う意味です。

 出典サイト

 

ということなので、全部合わせると、「私たちから差し上げます。平安をあなた(方)に」くらいの意味になるでしょうか。

 

日本でも「アーサー・キット」の歌でヒットしていた

 

その「平安をあなたに」という意味からすると、この曲を1951年生まれのカルメン・マキさんのお母さんが子守唄のように歌っていたとしても不思議ではない、違和感のない内容の選曲だと言えます。

 

実際、この歌は「アーサー・キット」の歌で1960年に日本でもラジオのベストテン番組にランクインするほどヒットしていたのです。

 

だから、カルメン・マキさんのお母さんがこの曲をラジオで耳にしていて、それを口ずさんでいた、それを9歳の女の子であるマキちゃんは子守唄として聞いていた、という状況は充分考えられると思います。

 

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この曲の間奏部分では、アーサー・キットさんが色々な国の「こんにちは」のあいさつ文を紹介していますね。

つまり、この曲の歌詞は、あいさつとしての「Heiveinu Shalom Aleichem」(へヴェーヌ シャローム アレーヘム)を繰り返しているだけなんですね。

 

スペイン起源説もありえないではない?

そのへんから考えると、他に民謡などがあって、そのメロディーだけ借りた、という感じも、確かに、しないではありません。

なので、寺山さんの「スペインの町の子守唄」という説も、私がその根拠を見つけられないだけのことで、私の「寺山さんの創作」説は間違っているのかも知れません。

スペインにはユダヤ人街があって、教会(シナゴーグ)まであるので、そこの人たちがスペインの民謡を取り入れた、という可能性もなくはないと思います。

 

さて、真相はいかに。

色々な可能性を考えながら聞くのも面白いかも知れません。

しかしながら、真相をご存知の方がいらっしゃれば、教えて頂きたいものだと思います。

 

今回のお話

今回は、カルメン・マキさんの「マキの子守唄」のメロディールーツを辿ったら、イスラエルのあいさつを勉強することになった、というお話でした。

 このイスラエルのあいさつのように、世界が平和でありますように。

オリーブの葉をくわえた鳩

オリーブの葉をくわえた鳩

OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

オリーブの花の花言葉は「平和」で、オリーブの葉をくわえた鳩も旧約聖書に出てくるエピソードから「平和」のシンボルになっています。

 

「雨のバラード」スウィング・ウエスト版、「簗瀬(やなせ)トオル」と「湯原昌幸」のダブルボーカルは、神!

 

ダブルボーカルの化学反応

ボーカルが一人ひとり、それぞれが別々で歌っていては出せないミラクルが、コーラスによって生まれます。


リレーやチームプレーに似ています。音楽はスポーツかもしれません。

雨のバラード「湯原昌幸(ゆはらまさゆき)」版

「雨のバラード」は湯原昌幸さんの歌でご存知の方が多いと思います。どちらかと言うと、センチメンタルで、しっとりした感受性の人だと思います。

 


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この歌の作詞作曲は「スウィング・ウエスト」初代メンバーの「植田嘉靖(うえだよしやす)」という人です。湯原昌幸さんも元は「スウィング・ウエスト」メンバーで「簗瀬(やなせ)トオル」という人とのダブルボーカルでした。

 

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雨のバラード「簗瀬(やなせ)トオル」版

簗瀬(やなせ)トオルさん単独による歌もあります。

こちらは湯原昌幸さんとは対称的に直情的でストレート、発声的にも素直な感情を出すタイプだと思います。


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この二人がダブルボーカルだったのですから、スウィング・ウエスト版は最強ですね。

 雨のバラード「スウィング・ウエスト」版


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お二人とも歌は上手いのですが、それぞれが単独でなく、お二人でダブルボーカルになることによって、それ以上の素晴らしい効果が生まれています。

いわゆる「化学反応」が起こっていたと思います。

ビートルズのジョンとポールのハモりのような感じでしょうか。

 最強のハモり

歌い出しから、お二人はハモります。簗瀬トオルさんは安定した高音パート。湯原昌幸さんはそこから離れて行くしっとりとした下降音階。このへんはビートルズの「Please Please Me」を思い出させます。

湯原昌幸さんの情緒的な声が効いて、聞く人を雨の中の情感にどっぷりとひたして行きます。簗瀬トオルさんは高音パートでハモりながら寄り添います。

そんなしみじみとした情感が高まったところで、一転、「なーもしらーぬ」からのサビでのお二人のハーモニーは絶品です。ここからが「化学反応」です。

ここでは、簗瀬トオルさんの情熱的な高音パートが大活躍します。湯原昌幸さんはそれを、しっとり感を保ったままずっと下支え、裏打ちして行きます。

ここのハーモニーはとても美しい。一人ひとりでは出せない、お二人のダブルボーカルだからこその奇跡的な声の色がきらめきます。

サビでの感情のほとばしり

お二人の「しっとり」と「ストレート」、質の違う硬軟両様の声が美しいハーモニーとなり、それはそれは気持ちよくからみ合って、曲はどんどん盛り上がって行きます。

そして最後の「あめが〜けして〜」から「硬派」簗瀬トオルさんの高音がソロとなり、サビの最後の「とおい〜」で、直情的な、つんのめるような、胸いっぱいの想いがほとばしります。

雨の舗道

Pixabayより

それほどの感情のほとばしりが、すぐにしっとりとした感じに自然に戻って、すんなり2番に入って行けるのは、やはり「軟派」湯原昌幸さんの存在があるから、だと思います。

このへんがソロには出来ない、コーラスハーモニーならではの美しさとダイナミックさだと思います。

演奏も最強

この「とおい〜」の魂の叫び、「」を聞くためだけでも、この曲のスウィング・ウエスト版を聞く価値はありますが、もう一つ、スウィング・ウエスト版は演奏も素晴らしいですね。

特にベースとドラムスによる、重低音の迫力とドライブ感は気持ちの良いものです。なかでもドラムの聞かせどころは、サビに入る直前の「ダダダダドカドカデデデデドン!」という16分音符の連打ですね。

聞く方としては「来た来た来た来た〜〜〜」と、これから始まる感情の奔流に乗るための、ジャンプ体勢に入るところです。

なぜ「スウィング・ウエスト」?

演奏が素晴らしい、については、このバンドの成り立ちが関係しています。

スウィング・ウエスト」という名前は、米国大統領選挙の「スイングステート」ではありませんが、アメリカと関係があります。

「ウエスト」というのはアメリカの西部を表していて、そこで流行っていたバンジョーやバイオリン、スチールギターやハーモニカを使う「カントリー」や「ウエスタン」の流れを引く、つまり「ウエスタンミュージック」から来ています。

エスタンの中でも、テンポの速い、スイング感のある音楽を目指したのですね。

エスタンは流行の先端だった

1950年代はちょっと西洋っぽい、シャレたポピュラー音楽、「ナウい」音楽というと、スチールギターを使ったウエスタンとかカントリーとかハワイアンくらいしかなかったのです。あとは民謡か、義太夫、講談、コテコテの歌謡曲などがエンターテイメントの主流でしたね。日本人には西洋音楽のリズムはムリ、という悲観的な意見が、ポップス志向の人々の中でさえささやかれていたものです。

 スウィング・ウエストウェスタンカーニバルを始めた

日劇エスタンカーニバルはタイガースなどのグループサウンズの聖地になりましたが、元々はウエスタンバンドのお祭りでした。

その日劇エスタンカーニバルを始めたのは、何と、このスウィング・ウエストを結成して、自身もメンバーであった堀威夫さん(後のホリプロ代表)と「ナベプロ」として知られた渡辺プロダクション渡辺美佐さんだったのです。

ja.wikipedia.org

 

スウィング・ウエストの1957年の初代メンバー。

今見るとびっくりな、ビッグなメンバーです。

  • 堀威夫「ほりたけお」(バンドリーダー、のちに「ホリプロ」社長)
  • 佐川ミツオ「さがわみつお」(ボーカル、のちに「今は幸せかい」)
  • 守屋浩「もりやひろし」(ボーカル、のちに「僕は泣いちっち」)
  • 田邊昭知「たなべしょうじ」(ドラムス、のちに「スパイダース」ドラムス、「田辺エージェンシー」社長)
  • 寺本圭一「てらもとけいいち」(ボーカル、のちに「ヴィレッジ・シンガーズ」のデビューに関わる)
  • 清野太郎「きよのたろう」(ボーカル)
  • 喜多村次郎「きたむらじろう」(サイドギター、のちに「カーナビーツ」に参加)
  • 植田嘉靖「うえだよしやす」(ギター、「雨のバラード作詞作曲」)

日本のポップス界を率いた、そうそうたるメンバーですね。

実際には十数人のグループだったようです。

 ですから、この「雨のバラード」は、日本のポップス界の総力を上げて取り組んだ、歴史的集大成な曲である、と言っても過言ではありません。

 

今回のお話

今回は、スウィング・ウエスト「雨のバラード」の魅力の秘密を探っていたら、思いがけなく、日本のポップスの源流にまでたどり着いてしまった、というお話でした。