- ミレイユ・マチュー の「パリの橋たち」
- ” Ponts de Paris ”(パリの橋たち)フランス語歌詞と日本語歌詞
- 永遠に流れ行く時と不動の橋と
- パリの橋たちは何本?
- 「さよならの夏」と似ている?
- 今回のお話
ミレイユ・マチュー の「パリの橋たち」
しばらく以前から聞いていて、いい曲だなあ、と思っていた曲があります。フランスの曲なので「シャンソン」という事になりますか。
ミレイユ・マチュー の「パリの橋たち」
Mireille Mathieu ” Ponts de Paris ”
” Ponts de Paris ”(パリの橋たち)
フランス語歌詞と日本語歌詞
Ponts de Paris, de Bercy à Suresnes
パリの橋たちよ、ベルシー地区からシュレンヌまでのすべてのさEn avez-vous entendu des amants
君たちは今まで聞いてきたよね、恋人たちのささやきをIls s'en vont flâner sur les bords de la Seine
恋人たちはセーヌ川のほとりをブラブラしに行くのさIls font les mêmes gestes et les mêmes serments
恋人たちはみんな同じような仕草をして、そして、みんな同じ誓いを立てるのさPont de Bercy(ポン・ド・ベルシー)
Ponts de Paris, malgré vos coeurs de pierre
パリの橋たち、君たちの心は石なんだけれどVous adorez ces millions d'amoureux
君たちはこうした何百万人の恋人たちが大好きだよねQui vous parlent tout bas pendant des heures entières
恋人たちは君たち橋たちに、とても低い声で話しかけている、何時間もの間ずっとねOffrant tous les secrets de leurs jours heureux
恋人たちの幸せな日々についての秘密を全部、打ち明けながらねLe fleuve porte depuis deux mille ans
川の流れはもう2千年も前から運んでいるんだJusqu'à la mer de son débit nonchalant
海までね、何でもないことのように静かにねDes mots d'amour, des mots d'amour
たくさんの愛の言葉をね、たくさんの愛の言葉をねQui vont se perdre comme toujours
それはいつものように行方知れずになってしまうんだけどPonts de Paris, confidents impassibles
パリの橋たち、無表情な親友たちVous savez bien que parmi ces espoirs
君たちは良く分かっているんだね、これらの希望のうちで、Bien peu sont exaucés, beaucoup sont impossibles
叶えられる希望はほんのわずかで、多くの希望は叶えられないってことをVous le lisez dans l'eau, c'est votre miroir
君たちはそれを水の中で読むのさ、それを映すのは君たちの水面の鏡なんだねPont Alexandre-III(ポン・アレクサンドル・トロワ)
Le fleuve porte depuis deux mille ans
川の流れはもう2千年も前から運んでいるんだJusqu'à la mer de son débit nonchalant
海までね、何でもないことのように静かにねDes mots d'amour, des mots d'amour
たくさんの愛の言葉をね、たくさんの愛の言葉をねQui vont se perdre comme toujours
それはいつものように迷子になってしまうんだけれどPont Mirabeau (ポン・ミラボー)
Ponts de Paris, de Bercy à Suresnes
パリの橋さんたち、ベルシー地区からシュレンヌまでのすべてのさJe crois quand même à l'amour d'un garçon
私はそれでも信じているよ、一人の男の子の愛をねEt nous vous conterons nos joies ou bien nos peines
そして私たちは私たちの喜びも、あるいは悲しみだって、君たちに話しましょうUn peu comme une histoire ou une chanson
ちょっと、一遍の物語か、一曲のシャンソンみたいになるかもだけどPont de Suresnes(ポン・ド・シュレンヌ)
Ponts de Paris, qu'importe si la Seine
パリの橋たち、何の意味があるの?もしセーヌ川がNoie aujourd'hui tous nos tendres serments
今日私たちの優しい誓いをすべて沈めたとしてもDemain nous reviendrons puisque l'amour nous mène
明日は私たちは戻って来る、なぜなら愛が私たちを導くからさVers vous, ponts de Paris, éternellement
君たちパリの橋たちの方へ、永遠にね。
musique:Georges Garvarentz
paroles:Jean Peigne
作曲のGeorges Garvarentz(ジョルジュ・ガルヴァレンツ)は、他にシャルル・アズナブールの「Hier encore」(1964)などを作曲。
作詞のJean Peigne(ジャン・ぺニエ)は、他にエンリコ・マシアスの「Paris, Tu M'As Pris Dans Tes Bras」(1964)などを作詞。
永遠に流れ行く時と不動の橋と
セーヌ川の悠久な流れと、そのセーヌ川にかかるいくつもの不動の橋たち、そしてなぜかそこに引き寄せられて来る、何世代も何世代もにわたる数しれぬ恋人たち。そこで数しれぬ物語が生まれては流れて行く。
川の流れには何か、悠久の時の流れを思い起こさせるものがあるようですね。
鴨長明(かものちょうめい)の「方丈記(ほうじょうき)」の冒頭文「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」にも。
あるいは松尾芭蕉の奥の細道の序文「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふるものは、日々旅にして 、旅を栖とす」にも、流れ行く川の「舟」と街道を行き交う「馬」という、常に動いて行くものを、悠久の時間を感じさせるものとして登場させています。
パリの橋たちは何本?
さてさて、歌詞の中では「ベルシーからシュレンヌまで」となっていますが、そもそもパリ市内でセーヌ川にかかっている橋の数はいくつあるのでしょう。
セーヌ川はパリ市内を右(東)から左(西)に流れます。
de Bercy(ベルシーから)
Bercy(ベルシー)は、パリ市内の東の端にある「12区」の中でも、セーヌ川がパリに最初に流入して来る右岸の「地域」の名前です。この地域でセーヌ川にかかっている橋は5本あって、上流から数えて5番目の橋が 「Bercy(ベルシー)橋」です。
à Suresnes(シュレンヌまで)
Suresnes(シュレンヌ)は、パリ市内の西の端、セーヌ川が最終的にパリから出て行く所にかかっている橋の名前です。シュレンヌ橋の真ん中まではパリ市ですが、そこから先は隣の「シュレンヌ市」になります。パリ市内でのセーヌ川の一番下流にあたります。
結局のところ「ベルシー」から「シュレンヌ」までのパリ市内のセーヌ川にかかる橋は、橋の半分までがパリ市である「シュレンヌ橋」まで含めると、なんと38本もあります。
なお、セーヌ川の上流から下流の海への流れに乗っている船から見て、進行方向の右側が「セーヌ川右岸」、左側が「セーヌ川左岸」となります。
「さよならの夏」と似ている?
森山良子(もりやまりょうこ)版
この曲を聞いて、あ、ちょっと似てるな、と思うのは、1976年の読売テレビ系ドラマ「さよならの夏」の主題歌。
作詞:万里村(まりむら)ゆき子、作曲・編曲:坂田晃一(さかたこういち)、歌:森山良子さんによる、ドラマタイトルと同じ「さよならの夏」という曲です。
森山良子「さよならの夏」
歌詞はこちらです。
手嶌葵(てしまあおい)版
この曲は2011年に、作詞の万里村ゆき子さんが「森山良子版」の1番と2番の間に新たに2番となる歌詞を書き加えて、ジブリアニメ映画「コクリコ坂から」の主題歌「さよならの夏 〜コクリコ坂から〜」として、手嶌葵(てしまあおい)さんの歌で発表されました。
手嶌葵「さよならの夏 〜コクリコ坂から〜」
3番まである「手嶌葵版」の歌詞はこちらです。
映画は私も見ましたが、1回見ただけでは登場人物の戸籍的相関関係が全く分からなかったので、よくよく調べてみて、ようやく納得した記事も書きました。
今回のお話
今回は、ミレイユ・マチューの「パリの橋たち」Mireille Mathieu ” Ponts de Paris ” というシャンソンをご紹介。
とともに、この曲と「さよならの夏」とが似ているような気がする、と思ったので、聞き比べてみました。両方とも同じ三拍子の曲なんですね。
感動の方程式
「パリの橋たち」にも、「さよならの夏」にも、ともに、同じようなメロディーが出て来て、しかも両方ともに私は感動してしまうのですが、もしかして「感動を呼ぶメロディーの型」とでも言えるようなものが、この世にはいくつか存在するのかも知れないな、などと思ったりもします。