一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

トルコ行進曲の「ユーモアとペーソス」と、阿修羅の「泣き笑い」を読み解いた

赤城乳業のCM、Sof'「ソフトクリームバルーン」篇

アイスの「ガリガリ君」で有名な「赤城乳業(あかぎにゅうぎょう)」が、ソフトクリームのコーンの部分を省略して「ソフトクリームの上だけ」に特化したアイス「Sof'(ソフ)」を売り出しました。

そのCMで「ソフトクリームの上だけ」を表す「バルーン」のパフォーマンスをしています。

このCMで耳に残るのは、その特徴的な歌のメロディーですね。

赤城乳業株式会社、Sof'「ソフトクリームバルーン」篇 A ver. 15秒

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おいしいとこだけ食べたいな

食べたいとこだけ食べたいな

おいしいとこだけ食べたい...

ソフトクリームの上だけ...Sof(ソフ)

という歌詞が付いています。

また、同様な音楽を使ったこんなCMもあります。

フルキャストTVCM「稼ぎたいなら」篇(15秒)

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「フルキャスト」というバイト紹介サイトの「フルキャスト共和国・初代バイトー(大統)領」としての「 GACKT(がくと)」さんを起用したCMで、やはり同じような曲が使われていますね。

彼の出演した映画「翔んで埼玉」をイメージしたCMになっています。

オスマントルコ軍の行進曲

この音楽は、トルコ軍楽隊の演奏で有名なオスマン帝国軍の軍楽(「メフテル」と言います)の一つ、「ジェッディン・デデン( 祖先も祖父も)」というタイトルの行進曲です。

トルコ軍軍楽隊「ジェッディン・デデン( 祖先も祖父も)」

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”Ceddin Deden”「ジェッディン・デデン( 祖先も祖父も)」歌詞

1番)
Ceddin, deden, neslin, baban
あなたの祖先も あなたの祖父も その子孫である あなたの父も

Ceddin, deden, neslin, baban
あなたの祖先も あなたの祖父も その子孫である あなたの父も

Hep kahraman Türk milleti
常に英雄的なトルコ国民よ


Orduların, pekçok zaman
あなたの軍隊は何度も
Vermiştiler dünyaya şan.
世界に栄光をもたらした


Orduların, pekçok zaman
あなたの軍隊は何度も
Vermiştiler dünyaya şan.
世界に栄光をもたらした

 

2番)
Türk milleti, Türk milleti
トルコ国家よ、トルコ国民よ

Türk milleti, Türk milleti
トルコ国家よ、トルコ国民よ
Aşk ile sev milliyeti
愛情をもって国を愛するのです


Kahret vatan düşmanını
祖国の敵を滅ぼせ
Çeksin o mel'un zilleti.
その呪われた者は屈辱を受けろ


Kahret vatan düşmanını
祖国の敵を滅ぼせ
Çeksin o mel'un zilleti.
その呪われた者は屈辱を受けろ

軍歌としての行進曲だけあって、勇猛果敢な歌詞になっていますが、曲調は、勇壮な行進曲には違いないものの、どこか哀愁が漂っていて、しかも、何とはなしのおかしみ、滑稽味みたいなものも感じられますね。

昔の映画の宣伝文句や評論でよく聞かれた表現ですが、そこには「ユーモアとペーソス」が入っているような気がします。

「阿修羅のごとく」のテーマソング

この曲は、1978年度のNHKドラマ「阿修羅(あしゅら)のごとく」のテーマ音楽として使われていたので、聞いた方もいらっしゃるかと思います。

「阿修羅」はヒンズー教では戦いの神ですが、もともと善神だったのが、正義にこだわって、それに固執し続け、もともとの善心を見失ってしまい、妄執の悪神となってしまいました。

このドラマ「阿修羅のごとく」は、向田邦子(むこうだくにこ)さんの脚本で、4人姉妹による不倫がらみの心理的闘いのドラマなので、「阿修羅」の定義がピッタリ当てはまってしまうのですね。

ドラマの登場人物たちは、もともと善心だったのに、正義にこだわって、それに固執し続けたが故に、もともとの善心を見失い、妄執の悪人となって戦ってしまう、というストーリー。

なので、外から見ていると、勇猛果敢に戦ってはいるものの、そこにはある種の哀愁が漂っていて、さらには滑稽味さえ感じられる、ということで、このドラマの主題歌として採用された「トルコの行進曲」も秀逸な選曲だったと思います。

「ユーモアとペーソス」の、モーツァルト「トルコ行進曲」

そんな「トルコの行進曲」の特性を思い浮かべながら聞くと、モーツァルトの「トルコ行進曲」には、その「勇壮さ」も「哀愁」も「滑稽味」も、全部入っているような気がします。

フジ子ヘミング
モーツァルト「ピアノソナタ11番イ長調K.331よりトルコ行進曲」

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トルコ軍楽隊の行進曲の、小太鼓の音や大太鼓の音、シンバルの音も装飾音を駆使してちゃんと表現しているんですね。

オスマントルコはモーツァルトの生国オーストリアの隣国ハンガリーまで支配下に置いて、ウィーンにまで包囲網を広げたこともある強国なので、そのトルコ風の音楽も当時のヨーロッパで流行していたのでした。

ベートーベンもまた「トルコ行進曲」を作曲しているくらいなので、その流行具合は相当のものだったようですね。

今回のお話

今回は、CMでもよく使われていて、過去にはドラマのテーマ曲にも使われた、トルコ軍楽隊による行進曲「ジェッディン・デデン( 祖先も祖父も)」の歌詞をご紹介しました。

また、「トルコ行進曲」、「トルコ行進曲」ともに「勇壮さ」と「哀愁」と「滑稽味」を持っていて、それは「阿修羅」とも共通する、というお話もしました。

もし「勇壮さ」が「喜び」と「怒り」が合わさったものだとすれば、「トルコ行進曲」は人間の「喜怒哀楽」が全部入っている曲である、と言えるのかも。