一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

ビゼーの好み?「カルメン」も「アルルの女」も「闘牛がらみの悲恋もの」

 

「十六茶」は「十六人の用心棒」

アサヒ飲料「十六茶」の16の素材を、16人の用心棒に見立てたCMが流れています。

十六茶 CM 「わたしの味方」編 30秒 新垣結衣

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そして、こちらはメイキングと、インタビューの映像です。

十六茶 CM 「わたしの味方」編 30秒 新垣結衣、メイキング、インタビュー

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アサヒ飲料「十六茶」を飲んでベンチでホッと一息の新垣結衣(あらがきゆい)さん。すると新垣さんを囲むように16種類のお茶の材料の化身たちが用心棒のように現れます。

新垣さんの、身体はもちろん、鎮静成分が入っているのか、心も健(すこ)やかでいられるように、外敵から守って、暮らしの味方になってくれる、という設定なんですね。

新垣さん本人にはその外敵との戦いの様子が見えていない、というのがポイントです。ことさらに効能は言わないけれど、「十六茶」は、相当な助けになってるんですよ、と言いたいんですね。

音楽は「アルルの女」の「ファランドール」

ところで、このCMの音楽は、日本ふうにアレンジしてありますが、フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet)による舞台のための劇音楽「アルルの女」の「ファランドール」という曲です。

読売日本交響楽団・指揮:佐渡裕・Bizet 「Farandole」 youtu.be

「ファランドール」は、フランスのプロバンス地方の踊りのことですが、この作品では、堂々たる「3人の王の行列(王の行進)」と軽快な「馬のダンス」の二つのフランス民謡をもとに作られています。

こちらは現代的にアレンジしてありますが、どんな踊りかが垣間見えます。

BIZET - L’Arlésienne, Suite n°2 "Farandole"
(Ballet Folklorique de Provence) (live) [HD]

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「闘牛」がらみの「悲恋」もの

ところで、この「アルルの女(フランス語では、L'Arlésienneラルレジェンヌ)」は、ビゼーによって、アルフォンス・ドーデの短編小説を元に、1872年に作曲されたものですが、劇のお話としては、一言で言えば、「闘牛がらみの悲恋もの」です。

そして、ビゼーの作品としてよく知られている、もう一つのオペラ「カルメン」も、原作はやはり小説、プロスペル・メリメ作の「カルメン」です。

この物語にビゼーが作曲をして、1875年3月3日に、パリ、オペラ=コミック座で初演されたものですが、こちらもやはり、一言で言えば、「闘牛がらみの悲恋もの」なのです。

「アルルの女」のあらすじは、(ネタバレです)

南フランス豪農の息子フレデリは、アルルの闘牛場で見かけた女性に心を奪われてしまった。フレデリにはヴィヴェットという許嫁がいるが、彼女の献身的な愛もフレデリを正気に戻すことはできない。日に日に衰えていく息子を見て、フレデリの母はアルルの女との結婚を許そうとする。それを伝え聞いたヴィヴェットがフレデリの幸せのためならと、身を退くことをフレデリの母に伝える。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を忘れてヴィヴェットと結婚することを決意する。2人の結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れて、今夜アルルの女と駆け落ちすることを伝える。物陰からそれを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝いの踊りファランドールがにぎやかに踊られる中、機織り小屋の階上から身をおどらせて自ら命を絶つ。

Wikiより

オペラ「カルメン」あらすじ(ネタバレです)

「カルメン」は、セビリアの工場で働く情熱的な女性カルメンの物語。彼女は自由を愛し、婚約者のいる兵士のドン・ホセに恋をして誘惑してその心を奪ってしまいますが、恋多きカルメンの浮気がドン・ホセを狂わせます。カルメンは闘牛士エスカミーリョにも心を奪われ、関係を持ちます。嫉妬に燃えるドン・ホセは彼女を追い詰め、最終的に彼女を殺してしまいます。

Georges Bizet - "Les Toreadors" from Carmen Suite No. 1

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ビゼーの「好み」なのか

このように、どちらにも「闘牛」が出てきて、どちらも悲劇的な結末の「悲恋もの」なのです。

しかも3年の間に相次いで書かれているので、よほどビゼーは、このシチュエーションが好みだったのだろうか、と思ってしまいますね。

あるいは世間の流行がこんな、情熱的であって、悲劇的なものを欲していたのか。

確かに、歌舞伎などを見ても、悲劇的なお話が多いので、その方がお芝居になりやすいのかも知れません。

今回のお話

今回は、「十六茶」CMにその音楽が使われた「アルルの女」も、「アルルの女」同じ作曲家ビゼーによる「カルメン」も、「闘牛がらみの悲恋もの」という点で共通している、というお話でした。

確かに、何気ない日常も、実は闘牛場のような闘いのステージなのかも。

そんな時に、16人の用心棒がいれば、これは頼もしい。