一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

ディーン・マーチン「誰かが誰かに恋してる」ダレダレの誰かって誰?17年目のヒットの秘密

 

ほろ酔い「誰かが誰かを愛してる」

ディーンマーチンと言えばこの映像のウィスキー片手のイメージですね。「1965年」というクレジットなので、1964年の大ヒットの翌年の映像です。ろれつも怪しい感じですが。

歌詞の「パワー」を「シャワー」とわざと言い間違えたり、マイクスタンドをコンビを組んでいた相方の「ジェリー」と呼んだり、ピアニストにちょっかいかけたり、やりたい放題です。

Dean Martin - Everybody Loves Somebody Sometime 1965

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歌詞はこちらです。英文歌詞の下にある「日本語に翻訳」という文字をクリックすると直訳ですが、日本語訳が読めます。

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レコードだとさらにダレダレ

そして、こちらはレコード盤なのですが、ライブステージよりもさらにダラダラ、ダレダレ、デレデレな歌い方ですね。

レコーディングスタジオの中には普通のお客さんはいなくて、気の知れたレコーディングスタッフばかりなので気を使わなくてすむ、ということもあるのかも知れませんが、それでも、これはリラックスしすぎに聞こえます。

Dean Martin - Everybody Loves Somebody Sometime  (Official Audio)1964

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ダレダレな歌い方が出来るまで17年

ディーン・マーチン、ライブだろうがレコーディングだろうがお構いなしの、ウィスキー片手のほろ酔い気分で歌っていますね。

リラックスにもほどがある、といった感じで、特にレコード盤では、もはやとろけ落ちそうなダレダレな歌い方なのですが、この歌い方だから、大ヒットした、とも言えるかも知れません。

調べてみると実は、この曲をディーンマーチンは1964年の大ヒットのなんと17年前の1947年にも録音しているのです。

その時はそれほど売れなかったわけですが、その1947年当時の歌を聞いてみると、余裕のない感じで大真面目です。

ビブラートがいやに細かくて、ちょっと緊張しているようにさえ聞こえますね。

1964年のリラックスもいいところの大ヒット盤とはえらい違いです。

Dean Martin - Everybody Loves Somebody (1948 Version)

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ダレダレの余裕が出来るまでに17年の歳月を必要としたんですね。

元々はお笑い「底抜けコンビ」

そもそも最初は、ディーン・マーチンとジェリー・ルイスとの「底抜けコンビ」つまり日本の「ぴんからトリオ」や「殿様キングス」「海原千里万里」のように「お笑い芸人のコンビ」、という体裁で売り出していたら、歌の方が売れてしまった、というわけですね。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7c/Lewis_and_Martin.jpg

wikiより、ディーン・マーティン(左)とジェリー・ルイス(右)、1950年頃

正確な曲タイトルは

原題は「Everybody Loves Somebody Sometimes」なので、正確には「誰かが誰かに恋してる」ではなく「誰でもが、恋をするんだ、誰かにさ、いつかはね」となります。

ディーン・マーチンとしては、「誰でも」の一人である、まさに「僕」にとっては、「いつか」というのはまさに「今」で、「誰か」というのはまさに「君」のことなのさ、と熱く迫ってるんですね。
言葉は熱く情熱的なのですが、これだけダレダレの言い方だと、迫られた方もほんわかとリラックスした気分になって、ハードルが低くなるかも。

ビートルズを追い落とす

なお、この曲が全米1位になったのは1964年、全米ヒットチャート・ベストテンのうち5曲がビートルズの曲、という、とんでもないビートルズ旋風がアメリカに吹き荒れた年です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c4/The_Beatles_in_America.JPG

wikiより、ビートルズ、1964年2月7日、アメリカに上陸・ケネディ空港

実際、この「誰かが誰かに恋してる」は、その直前までビルボード1位だったビートルズの「ア・ハード・デイズ・ナイト(ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)」を蹴落としての1位だったので、すさまじい大ヒットと言えるでしょう。

ディーンマーチンには息子がいましたが、その息子も、他の大多数の若者と同じくビートルズに夢中でした。

一方、父親であるディーン・マーチンとしては、、あまりビートの効いた音楽が得意ではありませんでした。

そこで、むしろ、昔ながらのゆったりとした音楽の方が支持されているんだ、そのことを証明して見せてやる、という気持ちもあって、この曲を再録音したのでしょう。

その結果としての、この大ヒットは、ディーン・マーチンとしては、してやったり、父親の面目躍如(めんもくやくじょ)というところですね。

今回のお話

今回は、ディーンマーチンの「誰かが誰かに恋してる」の全米1位の大ヒットは、ディーンマーチンが、歌の内容とマッチする「ダレダレ」なテクニックを身につけてからの、17年ぶりのリベンジヒットだった、というお話でした。

そして、「誰か」と「誰か」は誰か、という問いの答えは、「僕」と「君」、「私」と「あなた」である、という、まあ、そうだろうなあ、というお話でもありました。