一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「ジュークボックス」で聞いた「そして神戸」

 

劇団内ロマンス

私が浪人して入学した大学は学生運動の真っ只中。

ろくに授業のない期間が多く、もて余した私は、一般のアマチュア劇団に入って、いくつかの公演(というより「発表会」に近い?)をこなしました。

私の同期は4名、男性は私1人、残り3名は女性。

その後は最大で10数名くらいになりましたが、団員は皆、20歳前後の若者たち。

劇団(当初は「演劇グループ」という肩書きでした)の主催者カップルはちょっと年上でしたが、まだ「若者」と呼ばれる年代でした。

若い男女が集まれば、必然的にロマンスも生まれます。

出会いと別れ

ここでご紹介するロマンス事件の主役の男性は、劇団に途中から入って来た新入りの男性団員で、ストレートヘアーにグラデーションのサングラス、肩に羽織ったセーターの両袖を胸の前で結ぶという、いわゆる「プロデューサー」的いでたちが似合う、一見、「つかこうへい」に似た、物静かな雰囲気の人でした。

ロマンス劇のもう一方の主役である女性は、元から劇団にいた、私と同期の女性団員の一人で、ジーパンにスニーカー、白と紺のツートンカラーのパーカーが似合う、ボブヘアーで元気いっぱい、感情豊かな人でした。

しばらくして二人は、良い感じの関係になりました。

しかし、さらにしばらく経つと、なんと、その男性団員は、入団前に付き合っていて別れた女性と、よりを戻した、ということで、結局退団することになったのでした。

ジュークボックスからカラオケへ

残されて傷心の女性団員を慰めようと、事情を知る団員みんなで練習後、パブで飲むことになりました。

当時はパブやスナックでも「カラオケ」は、まだありませんでした。

ラジオの音楽番組で、ボーカルトラックだけを抜いた、演奏のみの、いわゆる「カラオケ」が流れたのは、1973年の南沙織のヒット曲「傷つく世代」だったと記憶しています。

おお〜すごいすごい、カッコいい〜!と興奮したものです。

そのイントロのギタープレイが、ロックバンド「デレク&ザ・ドミノズ」の「エリック・クラプトン」がギターとボーカルを担当した1971年のヒット曲「レイラ」から取られたギターフレーズだと、もっぱらの評判でした。

こちらが、その「カラオケ」版「傷つく世代」。

カラオケ・南沙織「傷つく世代」

youtu.be

この、ボーカルトラックだけ抜く、という手法は、ビートルズ、ジョージ・ハリスン作詞作曲の「While My Guitar Gently Weeps 」終盤での、ボーカルのジョージ・ハリスンが何小節か途中で黙ってしまって伴奏のみが続いて行く、というカッコいいアレンジから始まったのではないかと、個人的に思っています。

そう言えば、そのビートルズの「While My Guitar Gently Weeps 」でも、ギター独奏しているのは「エリック・クラプトン」なので、「エリック・クラプトン」は日本の「カラオケ」の陰の恩人と言えるかも。

そんな時代から、現在見るようなカラオケの隆盛が始まるまでは、あっという間でした。

なので、劇団のその「ロマンス事件」は、カラオケ発祥の前年である1972年の出来事だったので、パブなどでは完全にジュークボックスが主流でした。

ジュークボックスに誰かが硬貨を投入して、ボードに並んでいる曲名から好きな曲をアルファベットと番号の押しボタンで選ぶと、そのレコードが自動演奏されるのです。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/42/Dscn2823-Wurlitzer-3500-Zodiac-On.jpg

その選曲が良かったり、自分の好みと同じ曲がかかったりすると、「おっ、この曲入れたの誰?」「あっちのテーブルのあの子らしいよ」とかで盛り上がるわけです。

そこで傷心の女性団員がジュークボックスでかけた曲が「そして神戸」。

曲が進むにつれ、彼女はジュークボックスに抱きついて、突っ伏して、号泣してしまいました。

それ以来、「そして神戸」を聞くと、その時の情景が目に浮かびます。

内山田洋とクールファイブ「そして神戸」

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そして神戸 歌詞

1)

神戸 

泣いてどうなるのか
捨てられた我身(わがみ)が 

みじめになるだけ


神戸

船の灯(あかり)うつす
濁り水の中に

靴を投げ落す


そして ひとつが 終わり
そして ひとつが 生まれ

 

夢の続き

見せてくれる

相手

捜すのよ


2)

神戸

呼んで帰る人か
傷ついた心が

みにくくなるだけ


神戸

無理に足を運び
眼についた名もない

花を踏みにじる


そして ひとつが 終わり
そして ひとつが 生まれ

誰か うまい

嘘のつける
相手 捜すのよ

誰か うまい

嘘のつける

相手 捜すのよ

 

作詞:千家和也
作曲:浜圭介

 

歌詞の「♪ そしてひとつが」のところの跳躍音階は、歌うのがとても難しいと思います。前川清さんは上手に歌いますね。

それにしても、「うまい嘘のつける相手」を捜す、ということは、「今終わった相手」は、嘘のつけない正直者だった、ということなのでしょうか。

私は男女間の気持ちの機微について、どうも理解が追いつかないので、詩人にはなれないなあ、と思います。

今回のお話

今回は、内山田洋(うちやまだひろし)とクールファイブの「そして神戸」を聞くと、ジュークボックスに抱きついて泣いていた女の子を思い出す、というお話でした。

その女の子は、他の団員と同棲を始めて二人して引退、1年後には赤ちゃん誕生で、数名の団員たちでお祝いのためにお宅に伺いました。

 

お子さんもお二人も幸せいっぱいで、みんなで安心したものです。

ただ、元気いっぱいでピチピチだった彼女も、元気いっぱいなのは変わりませんが、顔に法令線のシワが刻まれていたのでびっくり、出産というのはやはりそれほどの大仕事なんだな〜と納得したものです。

 

ところで、「ジュークボックス」、今もあるのでしょうか。

最近の私は、パブやらスナック界隈にはとんと行かなくなったので、最新事情は知らないのですが、たまたま、そんなCMを見かけたもので。

ん?そもそも「パブ」とか「スナック」とか、もう言わないのか?