テレビから、聞いたことのあるメロディーが聞こえて来ました。
テレビCMで、渡辺直美さんによる歌バージョンと、市川海老蔵さんのご家族バージョンがあるようです。
と、CMをご紹介していたのですが、放送が終了してしまいました。
CM映像はありませんが、「蒲田行進曲」そのものについてご紹介したいと思いま
このCMで使われていた曲の元歌は「蒲田行進曲」として知られています。
「蒲田行進曲」は昔の歌
松坂慶子、平田満、風間杜夫出演の、同名映画の主題歌として有名ですね。
しかしながら、この歌はもともとは、もっともっと昔、1929年の松竹映画「親父とその子」の主題歌だったのです。
歌唱:川崎豊と曽我直子
作詞:堀内敬三(詞の内容が原曲の詞の内容とは全く違っているので、「訳詞」でなく「作詞」なんですね)
作曲:ルドルフ・フリムルです。
この曲は当時、よっぽど大流行した曲だったんでしょうね。なんと松竹蒲田撮影所の「所歌」にもなってます。
サブタイトルが「主題歌」ではなく「松竹映画小唄」となっているのが、時代を感じさせます。
作曲がルドルフ・フリムルという外人の名前ですが、この人は生まれはチェコのプラハで、アメリカに移ってミュージカルの作曲をした人です。
元々はミュージカル曲
そうです。この曲のさらに元々をたどるとミュージカル!1930年の舞台でヒットしたアメリカミュージカルオペレッタ「ヴァガボンドの王」の中に出てくる「ヴァガボンドの歌」という「行進曲」なのです。
舞台でのミュージカルがヒットしたので、同じメインキャストでミュージカル映画としても制作され、この歌もそのまま映画の中で使われました。
現在のミュージカル「キャッツ」や、ちょっと古くて「ウエスト・サイド・ストーリー」なども元は舞台のミュージカルで、それが映画化されているので、同じ展開ですね。
そもそもどんなミュージカル?
いつも大きな事を言って大衆の人気者になっている主人公ヴィヨンが、フランス国王ルイ11世から「そんなに大口を叩くなら1日だけ王様にしてやる、できるものなら、パリをおびやかす外敵ブルゴーニュを撃退してみろ」と言われます。
そこで、軍隊としてはおよそ役に立たなそうな「vagavond」な人たち、つまり「ヴァガボンド」の意味する「ごろつき、風来坊、渡世人、浮浪者、瘋癲(ふうてん)、放浪者、流れ者、さすらいびと」、、、他にもありますが、要するにありとあらゆる「はみ出しもの」を、かき集め、今からこれだけの人数で、戦いに行ってくるぞ、とルイ11世に宣言しに行く時の勇ましい「行進曲」なんですね。
対照的な歌詞
なんと、「行進曲」という点では「蒲田行進曲」というタイトルと共通しているわけです。
ただし、本家のほうは、危険な場所に行進して行くのであり、もう片方は夢の世界へ行進していくわけで、「蒲田行進曲」のほうは元歌とは対照的に、とても平和な、希望にあふれる明るい歌詞になっているのでした。
歌詞がちがうと、当たり前ですが同じ曲調でも全く違って聞こえるんですね。
今回のお話
今回は、ちょっと前にテレビで流れていた、渡辺直美さん、市川海老蔵さんのCM曲の元歌は、一昔前の「蒲田行進曲」であり、さらにそのルーツはアメリカのミュージカルオペレッタだということが分かった、というお話でした。
ミュージカルというのは、基本的に舞台で、お芝居と、歌と、踊りを繰り広げるエンターテイメントですから、考えてみると日本の「歌舞伎」と全く同じですね。歌舞伎にも、お芝居も、歌も、踊りもあります。
その「日本のミュージカル」である「歌舞伎」のスター市川海老蔵さんが、そもそもがミュージカル曲であるこの曲でCM出演、というのも何かそのへんの不思議なご縁から来ている、由来にのっとった出演であるようにも思えます。
一方、渡辺直美さんの方も、2020年6月、「ヘア・スプレー」で、まさに本格的なミュージカルの主演をされたんですね。やっぱりこの、今から100年近くも以前の「ミュージカル」曲に、導かれて来たような感じがしますね。