ノリノリ♪ドゥーワップ「ポストモダンジュークボックス」版と、しっとり♪バラード「セリーヌ・ディオン」版の聴き比べ
My Heart Will Go On - Vintage '50s Jackie Wilson - Style Celine / Titanic Cover ft. Mykal Kilgore
私は最初、この曲を「ポストモダンジュークボックス」の演奏で、別の曲としてしっかり聞いていて、あの「タイタニック」と同じ曲とは全く気が付きませんでした。
「なんてノリのいい曲なんだろう。リズムは四角いし、メロディーも良いし、ドゥー・ワップ二人の合いの手も気持ち良いし」
「第一、演奏してる人たちも歌手もとてもノリノリで楽しそうだから、聞いてる方も元気が出てくるなあ」
というわけで、何回もヘビロテで聞いていました。
そのうち、これはホントにいい曲だなあ、何ていう曲だろうと気になって、ふと調べてみたら、何とあのセリーヌ・ディオンによる「タイタニック」の主題歌「My Heart Will Go On」だったので、びっくりです。
セリーヌ・ディオンのあのスローテンポの、ドラマチックに歌い上げて行くスタイルは、映画の内容に見合った感動的なもので、それはそれで、もうすっかり完成したものでした。1ミリも動かしようがないものだと思ってました。
そのイメージが強烈なのと、このポストモダンジュークボックス版があまりにも、1950年代のドゥー・ワップのスタイルにピッタリはまっていることで、同じ曲だとは全然気がつきませんでした。
彼らの完全オリジナル版だと思っていたわけです。
歌詞がぴったりハマるのはなぜ?
これほど違う曲調なのに、あつらえたように歌詞がピッタリはまるのは、もともとの歌詞が、日本の短歌や俳句のように、定型通りのカッチリとした構成になっているからなのだと思います。
例えばビートルズの歌詞を読んでみると、めちゃくちゃな事をやっているようで、意外なことに、基本的にほぼ全ての歌詞が韻を踏んでいることに気がつきます。
韻を踏む、というのは昔々からの伝統的な詩の約束事です。ビートルズは、あんなに革新的な音楽を生み出していながら、実は伝統的な定型詩の定石にのっとった構造で曲を作っているんですね。
確かにポップスやロックの最も基本的な仕組みには、「Aメロ、Aメロ、Bメロ、Aメロ」という、決まったパターンがあります。歌詞もその仕組みに組まれているので、4行詩になるわけです。
たとえば、曲の構造がカッチリ出来上がっていると、ある曲の歌詞を、全く別の曲のメロディーラインに乗せて歌っても違和感がない、ということまでが可能になります。
練るほど「定型」に近づく
この曲は、アカデミー賞歌曲賞を取ったほどの曲なので、作る時にも練りに練ったものと思われます。詩は、練りに練るほど、定型に収まっていくものだと思います。
そうして出来上がった曲は見事に定型どおりに仕上がっているわけです。だからこそ、ドゥー・ワップの形式にしてもピッタリハマる、という事なんですね。改めて、「曲の力」というものを感じました。
今回のお話
今回は、曲の歌詞がしっかり作られているので、ノリノリ、「ドゥー・ワップ」スタイルの「ポストモダンジュークボックス」で聞く「My Heart Will Go On」も、しっとり歌い上げるセリーヌ・ディオン版と同じように、元気をくれる演奏になっていた、というお話でした。