一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「モンパパ」の全歌詞を読む・元歌はシャンソンだった

 

NHK朝ドラ「虎に翼」の劇中歌に「モンパパ」

NHK朝ドラ「虎に翼」は、日本初の女性弁護士、裁判官、裁判所長、それぞれを務めた実在の法律家「三淵嘉子(みぶち よしこ)」を題材にしたドラマです。主人公「三淵嘉子」転じて役名「猪爪寅子(いのつめともこ)」を演じるのは伊藤沙莉(いとう さいり)さん。

www6.nhk.or.jp

「虎に翼」は「鬼に金棒」

「虎に翼」は、中国の思想家「韓非子(かんびし)」の言葉で「鬼に金棒」のように「もともと強い上に、さらに強さがプラスされる」という意味の言葉です。

そう言えば、鬼は「虎」のパンツをはいていますね。

 

「伊藤沙莉」が歌う「モンパパ」

「モンパパ」が歌われるのは、「三淵嘉子」役の「伊藤沙莉」の友人と「伊藤沙莉」自身の兄との結婚披露宴の席上で、余興として歌を歌うように指名された「伊藤沙莉」が、マイクなしで歌い出すのが、当時ヒットしていた「モンパパ」、なのでした。

二村定一、榎本健一「モンパパ」歌詞

この当時ヒットしていた「モンパパ」をレコードで歌ったのは「二村定一(ふたむらていいち)」と、「榎本健一(えのもとけんいち)」通称「エノケン」の二人です。

二人が交代で歌っています。

映像のイケメンは「二村定一」です。と言って、エノケンも実は負けず劣らずの美男子でした。

二村定一、榎本健一「モンパパ」

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二村定一、榎本健一「モンパパ」歌詞

1番)

二村)うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なはママ
   うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴(どな)るは、いつもママ
榎本)いやな声で謝(あやま)るのは、いつもパパ

 

二村)うちのパパ 毎晩遅い
榎本)うちのママ ヒステリー

 

二村)暴れて怒鳴るは いつもママ
榎本)はげ頭下げるは いつもパパ

 

二村)でたらめ言う それはパパ
榎本)胸ぐらを取る 

二村)それはママ

 

二村榎本)パパの身体は 揺れる揺れる クルクルと回される

 

2番)

榎本)うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なママ
   うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴るは、いつもママ
二村)小さな声で謝るのは、いつもパパ

 

榎本)うちのパパ コブが出る
二村)うちのママ ツノが出る

 

榎本)後から笑うのは いつもママ
二村)メソメソ泣くのは いつもパパ

 

榎本)あ のんきな大将 それはパパ
二村)ヒスの親玉 それはママ

 

榎本二村)パパの嬉しそうな時は ニコニコとえびす顔

この曲は1931年(昭和6年)の12月にリリースですが、実は本歌があって、そのカバー曲なのでした。

宝塚少女歌劇版「モンパパ」歌詞

元の曲は、当時の宝塚少女歌劇で、1931年(昭和6年)8月に公演された「ローズ・パリ(薔薇の巴里)」というタイトルの舞台(レヴュー)で歌われた曲でした。

ちなみに、この年の前年1930年(昭和5年)には、宝塚少女歌劇は、あの宝塚を象徴する歌として定着している「すみれの花咲く頃」を初めて流行させるなど、フランスのシャンソンを日本に紹介するのに多大なる貢献をしていました。

下の写真は1928年(昭和3年)宝塚少女歌劇団「モン・パリ」再演のフィナーレです。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2d/Mon_Paris-Takarazuka1928.jpg

「モンパパ」のソロ歌手は三浦時子(みうらときこ)さん、合唱は宝塚少女歌劇雪組生徒の皆さんです。

三浦時子、宝塚少女歌劇雪組生徒「モンパパ」 1931

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宝塚少女歌劇版「モンパパ」歌詞

1)

うちのパパとうちのママと並んだとき
大きくて きれいなはママ

 

うちのパパと うちのママと話すとき
大きな声で怒鳴るは いつもママ
小さな声で謝るのは いつもパパ

 

うちのパパ もっさり服
うちのママ 流行の服

 

呉服屋の品物 いつもママ
その代り 勘定書き いつもパパ

 

古い時計 それはパパ
大きいダイヤモンド それはママ

 

パパの大きなものは一つ
靴下の破れ穴

 

合唱)

うちのパパ もっさり服
うちのママ 流行の服


呉服屋の品物 いつもママ
その代り 勘定書き いつもパパ


古い時計 それはパパ
大きいダイヤモンド それはママ

 

パパの大きなものは一つ
靴下の破れ穴

 

2)

うちのパパとうちのママと並んだとき
大きくて きれいなはママ

 

うちのパパと うちのママと話すとき
大きな声で怒鳴るは いつもママ
小さな声で謝るのは いつもパパ

 

うちのパパ 会社へ行く
うちのママ ダンスへ行く

 

タキシーで行くのは いつもママ
テクシーで行くのは いつもパパ

 

辛(から)いタバコ それはパパ
甘いカクテル それはママ

 

パパの一番好きな時は 
うちのママのゐ(い)ない時 

合唱)

うちのパパ 会社へ行く
うちのママ ダンスへ行く

 

タキシーで行くのは いつもママ
テクシーで行くのは いつもパパ

 

辛(から)いタバコ それはパパ
甘いカクテル それはママ


パパの一番好きな時は 
うちのママのゐ(い)ない時 

 

白井鐵造(しらいてつぞう)訳詞

フランス映画「巴里(パリ)っ子」版「モンパパ」フランス語歌詞

そして、宝塚少女歌劇が元にしたのはフランスで1930年(昭和5年)に公開され、日本でも翌年1931年(昭和6年)に公開された映画、ジョルジュ・ミルトン主演の「巴里(パリ)っ子」です。

原題「Le roi des Resquilleurs=ただ見の王様)」。ただ見の観客が出世してしまうというコメディです。

この映画に使われた歌が「モンパパ」でした。
正確なタイトルは「C'est Pour Mon Papa」(セ・プーる・モン・パパ)=「る」は「うがいの音」です。直訳では「それは私のパパ向けのもの」。「 Mon (モン)」が「私の」という意味です。ちなみに、「私のママ」は「ma maman(マ・マモン)」。

Georges Milton「C'est Pour Mon Papa」

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フランス映画「巴里っ子」版「モンパパ」フランス語歌詞

C'est Pour Mon Papa
(セ・プーる・モン・パパ)
それは私のパパ向けのもの


1)
J'ai des parents qui ne sont pas du tout assortis
私の両親は、全くお似合いじゃない

Papa est petit et très mal bâti
パパはちっちゃくて、とてもカッコ悪い

 

Tandis que maman est grande, jolie et fait du sport
ところがママは大きくて、美人でスポーツ万能

Mon père avec ma mère a toujours tort
パパはママといると、ヘマばかり

Elle commande à chaque coup des robes de chez Patou
彼女がいつもドレスを注文する店は、高級店「パトゥー」

Mais elle habille papa au "décrochez-moi ça".
だけど、彼女がパパに着せるブランドは、「これを脱がせて」

 

L'habit qui n'va pas c'est pour mon papa
イケてない服は、パパのもの

Les plus beaux vêtements c'est pour ma maman
一番美しい服は、ママのもの

 

Le livreur c'est tout l' temps pour ma mère
お届けものは、いつもママあて

Les factures c'est tout l'temps pour mon père
請求書は、いつもパパあて

 

Les vieux pyjamas c'est pour mon papa
着古したパジャマは、パパのもの

Les dessous troublants c'est pour ma maman
悩ましい下着は、ママのもの

 

Ses chaussures sont coquettes
彼女の靴は、可愛い。

Mais les plus sales chaussettes
だけど、一番汚いくつ下で、

Aux trous grands comme ça, c'est pour mon papa.
あんなに大きな穴があいてるのは、パパのもの

 

2)

C'est à maman qu'les gens font toujours de beaux cadeaux
ママには、人々がいつも素敵なプレゼントをくれる

Papa, ce nigaud, ne reçoit qu'la peau
パパは、この単純さんは、その包み紙をもらって喜んでる

 

Tous les ans, l'jour de sa fête, maman se fait offrir
毎年、誕生日に、お母さんはプレゼントをもらいます、

Des choses de prix qui font toujours plaisir
いつも喜ばれる、高価なものを。

 

Elle a des objets d'art, des sacs en peau d'lézard
彼女は美術品や、トカゲ皮のバッグを持っています

Mais papa chaque fois, faut voir ce qu'il reçoit.
でも、お父さんは毎回、彼が何をもらったのか見なければなりません。

 

Le pot d'bégonias c'est pour mon papa
ベゴニアの鉢は、パパのためのものです

Mais les gros diamants c'est pour ma maman
でも大きなダイヤモンドは、ママのためのもの

 

Le plus beau c'est tout l'temps pour ma mère
一番良いもの、それはいつもママのもの

Le plus moche c'est tout l'temps pour mon père
一番良くないもの、それはいつもパパのもの

 

Le p'tit agenda c'est pour mon papa
その小さな日記は、パパのものです

Les bonbons fondants c'est pour ma maman
とろけるキャンディは、ママのもの

 

Elle invite tous les gens qui lui font des présents
彼女は贈り物をくれるすべての人を、招待します

Mais les frais du r'pas c'est pour mon papa.
でも、払う食費は、パパのもの

 

3)

Maman chaqu' matin fait sa p'tite ballade en auto
ママは毎朝のちょっとしたお出かけは、車に乗って

Papa s'lève plus tôt et s'tape le métro
パパはもっと早起きして、地下鉄に乗ります

 

Maman, au five o' clock boit l'thé avec ses amies
ママは5時に友人たちと、お茶を飲みます

Elle n' revient pas avant huit heures et demie
彼女は8時半までは、戻って来ません

 

Papa ne rouspète pas, c'est lui qui fait l'repas
パパは文句は言いません、食事を作るのは彼なのですが

Il r'çoit les livraisons et balaie la maison.
彼は配達物を受け取って、家を掃除します


Faire les oeufs sur l'plat c'est pour mon papa
目玉焼きを、作るのはパパ

Faire du boniment c'est pour ma maman
その出来栄えを、自慢するのはママ

 

Le tango c'est tout l'temps pour ma mère
タンゴを踊るのは、いつもママ

Le balai c'est tout l'temps pour mon père
掃除するのは、いつもパパ

 

Faire la soupe au chat c'est pour mon papa
猫のためのスープを作るのは、パパ

S'payer de l'agrément c'est pour ma maman
楽しみのためにお金を使うのは、ママ

 

Quand elle flirte un peu trop avec les gigolos
彼女がジゴロたちと、ちょっとイチャイチャしすぎているとき

Faire pisser Mirza, c'est pour mon papa.
子供のミルザちゃんにおしっこをさせるのは、それはパパ

作詞:Rene Pujol / Charles-L. Pothier
作曲:Casimir Oberfeld   
歌唱:Georges Milton

今回のお話

今回は、NHK朝ドラでも歌われていた「モンパパ」の元々の元歌はフランス映画「巴里っ子」で歌われた「C'est Pour Mon Papa」というシャンソンだった、というお話でした。

「エノケン」単独版「モンパパ」歌詞

なお、「エノケン」が後年、自分だけで歌った「モンパパ」を発表しています。歌詞がちょっと違っています。

 榎本健一 「モン・パパ」

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 榎本健一 版「モン・パパ」歌詞

1)

うちのパパとうちのママはノミの夫婦
大きくて立派なはママ
うちのパパはうちのママにかなわない

大きな声で話すは いつもママ
ちっちゃな声で答えるのは いつもパパ

 

うちのパパ もっさり服
うちのママ 流行の服

呉服屋の品物 いつもママ
その代わり勘定書き いつもパパ

古い時計 それはパパ
大きなダイヤモンド それはママ

パパの大きなものは一つ
くつ下の破れ穴

 

2)

うちのパパとうちのママと並んだ時
大きくて きれいなはママ

うちのパパとうちのママが話す時
大きな声で怒鳴るは いつもママ
小さな声で謝るのは いつもパパ

 

うちのパパ 会社へ行く
うちのママ ダンスへ行く

タクシーで行くのは いつもママ
テクテク行くのは いつもパパ

辛(から)いタバコ それはパパ
甘いカクテル それはママ

パパの一番好きな時は 
うちのママのゐ(い)ない時