一音九九楽

一音九九楽

いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「ラブ・ミー・テンダー」元歌の「オーラリー」ってマリアさま?天国のこと?

「野村不動産プラウド」CMの音楽は

野村不動産プラウドのCM「私が選んだ生き方を、この家と。」篇が、小松菜奈さんの出演で放送されていますが、この音楽、聞いたことがありますね。

小松菜奈「私が選んだ生き方を、この家と。」篇 vol.1/CM30秒

youtu.be

「サトウのごはん」CMの音楽は

こちらでも同じ音楽が使われています。

 

「ごはん」と言えば「お米」。

「お米」と言えば「新潟県」。

というつながりで、新潟県のアイドルグループ「Negicco(ねぎっこ)」の出演での「サトウのごはん」のCMです。

左から、Kaedeさん、Nao☆さん、Meguさん、このメンバーにMikuさんを加えた4人で新潟名産、「ネギ」のPRのために結成されました。

グループ名の「Negicco(ねぎっこ)」も、メンバー名のアルファベットの組み合わせっぽいですね。のちにMikuさんと交代していたMisakiさんのお名前にも「i」と「k」が入ってます。

サトウのごはんCM『それぞれの幸せ』編

www.youtube.com

「サトウのごはんだよ!」

「くるくる釜炊き、一緒に食べよう。くるくる釜炊き、サトウのごはん」

「やっぱりコレコレ、サトウのごはん!」

音楽は、ラブ・ミー・テンダー(Love Me Tender)

そして、ここで3人が歌っているメロディーは、エルヴィス・プレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」のメロディーですね。

エルヴィス・プレスリーが主演の映画「ラブ・ミー・テンダー」(1956年)の主題歌です。

youtu.be

オーラリー(Aura Lea)

さらにそして、この「ラブ・ミー・テンダー」にも、元の曲があるのです。

この映画「ラブ・ミー・テンダー」の背景となっているのはアメリカ南北戦争の時代です。

その南北戦争が始まる前に、当時大流行のステージで上演されていた「ミンストレルショー」のために作られた曲が「ラブ・ミー・テンダー」の原曲である「オーラリー」であり、そこで歌われて評判となって、世間一般にヒットしていたんですね。

そのため、この曲は南軍北軍、双方の兵隊たちが知るところとなり、彼らも歌っていました。

それぞれの陣営で、故郷に残して来た恋人や奥さんを思い出して、さらには故郷そのものを思い出して歌う歌、だったのですね。

オーラリー

youtu.be

オーラリーとは人の、女性の名前なのですが、象徴的に女神、とも解釈されることもあります。

そしてその元々の意味については諸説あるのですが。

auralea(オーラリー)では「日の当たる場所」「光る土地」

ちなみに「オーラリー」の語源説のひとつ、「自省録」で有名な第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの「アウレリウス(Aurelius)」は古代ラテン語で「黄金の」という意味です。

そう言えば、金の元素記号は「Au」ですね。

黄金の指輪
aura(オーラ)では「黄金の光」「金髪」「そよ風」

今で言う「オーラ」には霊的な光、空気、雰囲気、などを表す意味合いが強いですね。

lea(リー) では「フィールド」「 草原」など

草原

ジーンズブランドの「LEE」は、これが由来かも知れません。

「ブレンダ・リー」も「原ちゃん」なのかも。

 

いずれも古い形の英語、文語体なんですね。

「光り輝く草原の風」の吹く場所とは「天国」のことか

なので、「オーラリー」の意味としては、総合的に組み合わせてみると、「光り輝く草原の風」的なところに落ち着くでしょうか。

「光り輝く草原の風」の吹く場所がどんな場所かを想像してみると、広い意味では「天国」を象徴しているのかも知れない、とも思えます。

そう解釈すると、両軍の兵士の間で流行った、というのも納得できます。

生死をかけた、明日をも知れぬ命、という状況では、少しでも心の平安を得たいと思うでしょうから。

オーラリー(AURA LEE)訳詩

オリジナルの歌詞を探しましたが、いろいろなバージョンがあって、どれが最初の歌詞だったのか不明です。なので、この動画の歌詞を訳してみます。

古い英語なので、文語調です。

 

AURA LEE
オーラリー

 

(1番)

When the blackbird in the Spring,
春来たりて黒き鳥、

On the willow tree,
柳の枝にとまりけむ、

Sat and rocked', I heard him sing,
われ、座して揺れつつ、その歌を聞く、

Singing of Aura Lea.
光り輝く草原の風の歌を。

(リフレイン)

Aura Lea, Aura Lea,
光り輝く草原の風よ、光り輝く草原の風よ、

Maid of golden hair;
黄金色の髪の女神よ、

Sunshine came along with thee,
汝と共に太陽の光は降り注ぐ、

And swallows in the air.
そして空中にはツバメたち。

 

(リフレイン)

Aura Lea, Aura Lea,
光り輝く草原の風よ、光り輝く草原の風よ

Maid of golden hair;
黄金色の髪の女神よ、

Sunshine came along with thee,
汝と共に太陽の光は降り注ぐ、

And swallows in the air.
そして空中にはツバメたち。

 

(2番)

In thy blush the rose was born,
汝の赤面より薔薇の生まるる、

Music, when you spake,
汝の話す時、音楽の生まるる、

Through thine azure eye the morn,
汝の蒼き眼差しに、朝の訪れ、

Sparkling seemed to break.
曙光の弾け輝くを見る。

 

(3番)

Aura Lea, Aura Lea,
光り輝く草原の風よ、光り輝く草原の風よ、

Birds of crimson wing,
紅き翼の鳥たちよ、

Never song have sung to me,
われ、未だかつて聞かず、

As in that sweet spring.
かの甘き春の歌ほどの歌を。

 

(リフレイン)

 

(4番)

Aura Lea! the bird may flee,
光り輝く草原の風よ!鳥は飛び去るであろう、

The willow's golden hair,
柳の黄金色の髪は、

Swing through winter fitfully,
冬の間中、気まぐれに揺れまくる、

On the stormy air.
嵐の風に吹きまくられて。

 

(5番)

Yet if thy blue eyes I see,
されど、汝の蒼き眼差しを見れば、

Gloom will soon depart;
苦しみはすぐに去るであろう、

For to me, sweet Aura Lea
なぜなら我において、優しい光り輝く草原の風は

Is sunshine through the heart.
心に届く太陽の光であるがゆえ。

 

(リフレイン)

 

(6番)

When the mistletoe was green,
ヤドリギの緑なる時、

Midst the winter's snows,
冬の雪の真っ只中にて、

Sunshine in thy face was seen,
汝の面差しの中に太陽の光を見出だしたり、

Kissing lips of rose.
その太陽の光は、薔薇の唇にくちづけたり。

 

(7番)

Aura Lea, Aura Lea,
光り輝く草原の風よ、光り輝く草原の風よ、

Take my golden ring;
私の黄金の指輪を受け取りたまえ、

Love and light return with thee,
愛と光が、汝と共に甦(よみがえ)るであろう、

And swallows with the spring.
そして春とともに蘇(よみがえ)るツバメたち。

 

(リフレイン)

 

作詞:WW Fosdick

作曲:George R. Poulton

 

 (7番)3行目の、

Love and light は、
Love and life にも聞こえます。

そうなると、「愛と生命が甦る」となって、もはや「聖歌」になってしまいますね。

「紅き鳥」の「赤」はカージナル(枢機卿)のこと

「赤い鳥」、というのは日本でフォークグループの名前だったり、童謡のタイトルだったりしますが、実際にはいないメルヘンの中の鳥として受け止められています。

ところが、この曲「オーラリー」の舞台となっているアメリカでは、実際に野原に普通にいる鳥なんですね。

赤い鳥(Cardinal)

なので、アメリカ国民にも親しまれていて、アメリカ大リーグのナショナルリーグ、WBCで日本チームとして活躍、「ペッパーミル」で人気者となった「ヌートバー」が所属する「セントルイス・カージナルス」のチーム名になったりしているんですね。

ユニフォームにもちゃんと「カージナル」が2羽いますね。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/98/Albert_Pujols4.jpg

Wikiより カージナルス・ユニフォーム

ヌートバーはすっかり人気者になって「ヌー」と呼ばれて、CMでも大活躍。

youtu.be

「カージナル」の元の意味

そして、「カージナル」の元々の意味は、キリスト教カトリック教会の、偉い聖職者である「枢機卿(すうききょう)」のことで、枢機卿が着ているのが赤い着衣だったので、同じ色だ、ということからこの赤い鳥は「カージナル」を呼ばれるようになったのです。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/95/Vetements_cardinal_Gamarelli.jpg

Wikiより 枢機卿のコスチューム

 

野原には神父さまがたくさん飛んでいて、祝福してくれている、と思うと楽しいですね。

「蒼き眼差し」の「青」は聖母マリアのこと

青は聖母マリア様の色、というのはよく知られていることだと思います。

マリア様は「マリス・ステラ(海の星)」と呼ばれているから、母なる海の青色なのだ、という説もあり、マリア様は天空の、天国の主でもあるので、青い空の色の青がマリア様の色なのだ、という説もあります。

日本でも薬師如来は「瑠璃光菩薩(るりこうぼさつ)」と呼ばれていますね。こちらも東方浄土は「空」の瑠璃(ラピスラズリ)色ということで、「空」の中にいる「日光菩薩」「月光菩薩」を従えています。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3b/Triad_of_Yakushi_Nyorai.JPG

Wikiより 薬師三尊 日光菩薩は手前です

 

また、調べてみると、マリア様は赤い服の上に青いマントを着ている場合が多いようです。この場合の「赤」は「愛」を表している、という説があります。

イエスの生誕、マリア様は赤ん坊キリストの向かって左です

となると、先ほどのカージナルの赤も青と並んでマリア様の色ということになり、そうなると、オーラリーはマリアさまその人であり、そのマリア様が守っている「光り輝く風の草原」は天国ということになる、と、意味がすんなり通ってしまう歌詞ですね。

マリア様がいるところ、「天国」である故郷を守ろう、という意味と、もし死んだとしても天国に行ける、という意味と、二つの意味に取れるので、南軍北軍、両軍の兵士の間で歌われたという考え方もできるでしょうか。

そう思うと、とても切実な歌なんですね。

今回のお話

今回は「サトウのごはん」CMのメロディーの元歌が「エルヴィス・プレスリー」の「ラブ・ミー・テンダー」であって、そのさらに本歌は「オーラリー」というアメリカの南北戦争の時の歌であった、というお話でした。

さらに、なぜ南北戦争での南軍北軍双方で愛唱されたかを考えてみると、この曲が聖母マリアに守られた「天国」について歌っている、一種の「聖歌」のような位置付けだったのではないか、という仮説に行き着いたのでした。