一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「ビックカメラ」と「ヨドバシカメラ」のCMソング、両方ともに、元は讃美歌

 

「ビックカメラ」と「ヨドバシカメラ」のCMソング、どちらもそのルーツをさかのぼってみると、実はそれぞれの原曲は讃美歌だった、というお話です。

まずは「ビックカメラ」

「ビックカメラ」と「ヨドバシカメラ」どちらも家電量販店なので、お店の場所をまずお客さんに売り込もうということで、どちらのCMでもまず「地名」や「路線」を強調する歌詞になっています。

ビックカメラCMソング

ビックカメラの、現在流れている新しいバージョンのCMソングはこちらです。

ビックカメラ新テーマソング


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歌詞はこちらです。集結する鉄道路線が8路線と多いので、かなり忙しい歌詞です。

ふくふく ふくろう いけぶくろ
でんでん でんしゃが 8路線

やまのて 
しょうなん 
さいきょう

とうぶ
せいぶ
まるのうち
ゆうらくちょう

ふくとしんせん 

さあ 行こう
ビーック ビックビック ビックカメラ

最後に「ビーック ビックビック ビックカメラ」という従来メロディーが出て来ますね。

その従来メロディーが出て来る、このCMの前に流れていたCMは、こちらの「ご当地版」です。

ビックカメラ・ご当地版CMソング

こちらのビックカメラの歌は、各地の「ビックカメラ」店の紹介に特化した歌です。

歌詞の中にはその名前が出て来るものの、「ビックカメラ」と「ユニクロ」が同じビルに同居していた「ビックロ」は、その後「ユニクロ」が撤退したので、現在は「ビックカメラ」だけのビルになっています。

歌詞の最後の方に出て来る「名古屋」と「広島」が、名古屋弁、広島弁を使っているのでユニークですね。

なお、最初に出て来るオルゴールのような音は、なんとJR池袋駅の発車メロディーです。

ビックカメラ 各店舗別テーマソング

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元曲は「タバコやの娘」

この歌の元歌(と言ってもメロディーの一部ですが)はこちらだと思われます。

「タバコやの娘」

昭和12年に岸井明・平井英子の、それぞれ「タバコやのお客と看板娘」という役での、男女掛け合いの唄でヒット。

岸井明(きしいあきら)さんは笠置シヅ子さんや高峰秀子さんと映画で共演しています。平井英子(ひらいひでこ)さんは「あめふり」などで知られた童謡歌手。

岸井明・平井英子「タバコやの娘」

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「佐川ミツオ」のチャラ男ぶり

その後、昭和36年にも「佐川ミツオ」・「渡辺マリ」の、やはり掛け合いスタイルの濃い唄でまたまた再ヒット。

「佐川ミツオ」さんは、後年の「佐川満男」さんになってからの大ヒット曲「今は幸せかい」の落ち着いた感じからは想像もつかない、強烈な「チャラ男」ぶり。

渡辺マリさんは「ドドンパ娘」として売り出しているので、これまたパンチの効いた個性の持ち主です。実際、こちらの版の曲「タバコやの娘」では伴奏は「ドドンパ」のリズムになっています。

煙草屋の娘 (佐川ミツオ, 渡辺マリ)

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創業者15歳の時のヒット曲

この時、ビックカメラ創業者の新井 隆二(あらい りゅうじ)さんは15歳で、感受性も多感、敏感な時期なので、耳に入った強烈な印象のこの歌が、いざCMソングを作る、というタイミングでも、記憶に残っていた可能性は高いですね。

「たぬきの金時計」

ここから派生した替え歌で「たぬきの金時計」という歌もあります。

「たんたんたぬきの金時計、風もないのにぶ〜らぶら(×2)、それを見ていた子だぬきが、振るものないのでぶ〜らぶら(×2)」

という歌詞ですが、実はこの曲にはさらに元々の原曲があって、なんと讃美歌です。

ビックカメラCM曲、元は讃美歌

日本では、聖歌687「まもなくかなたの」となっていますが、英語では「Shall We Gather At The River ( 川に集まりましょうか )」。

こちらは「First Methodist Houston(ヒューストン、ファースト・メソジスト教会)」の合唱隊によるパフォーマンスです。

”Shall We Gather At The River” First Methodist Houston, 11/6/22

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歌詞(原詞と和訳詞)はこちらです。

"Shall we gather at the river?" 歌詞、和訳

Shall we gather at the river?
Text: Robert Lowry

1. Shall we gather at the river,
where bright angel feet have trod,
with its crystal tide forever
flowing by the throne of God?
Refrain:
Yes, we'll gather at the river,
the beautiful, the beautiful river;
gather with the saints at the river
that flows by the throne of God.

 

2. On the margin of the river,
washing up its silver spray,
we will walk and worship ever,
all the happy golden day.
(Refrain)

 

3. Ere we reach the shining river,
lay we every burden down;
grace our spirits will deliver,
and provide a robe and crown.
(Refrain)

 

4. Soon we'll reach the shining river,
soon our pilgrimage will cease;
soon our happy hearts will quiver
with the melody of peace.
(Refrain)


1.輝く天使の足が踏みしめ、 神の御座のそばを
永遠に流れる水晶のような潮 が流れる 川に集まりましょうか 。

(リフレイン): はい、私たちは川に集まります、 美しい、美しい川です。 神の御座のそばを流れる 川に聖徒たちと集まりなさい 。


2.
川のほとりで、 銀色のしぶきを洗い流しながら、 私たちは永遠に 幸せな黄金の日を 歩き、礼拝します 。
(リフレイン)


3.
輝く川に到着する前に、 すべての重荷を下ろしてください。 私たちの霊が恩恵を与え、 ローブと王冠を与えてくれるでしょう。
(リフレイン)


4. すぐに私たちは輝く川に到着します、 すぐに私たちの巡礼は終わります。 すぐに私たちの幸せな心は平和のメロディーで 震えるでしょう 。
(リフレイン)

そして「ヨドバシカメラ」

一方、こちらはヨドバシカメラのCMですが、こちらも店舗の場所を強調しています。

ヨドバシカメラは現在は秋葉原が有名ですが、以前はヨドバシカメラと言えば新宿西口のイメージでした。

ヨドバシカメラCMソング

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ヨドバシカメラCMソング
作詞:藤沢昭和(創業者)

1)丸い緑の山手線、

まん中通るは中央線、

新宿西口駅の前、

カメラはヨドバシカメラ

 

2)新宿西口駅前に、

大きなカメラの店がある、

安くてなんでもそろってる、

カメラはヨドバシカメラ

 

3)若者集まる新宿に、

うれしいカメラの店がある、

安くてなんでもそろってる、

カメラはヨドバシカメラ

 

4)良いママ良いパパ良い家族、

8ミリ仲間の店がある、

新宿西口駅の前、

カメラはヨドバシカメラ

 

5)ヨドバシ良い店良いカメラ、

安くてなんでもそろってる、

新宿西口駅の前、

カメラはヨドバシカメラ

 

【英語・歌】

Running in a  circle is the green Yamate line
丸く走るのは緑の山手線

Cutting through the middle is the orange Chuo line
真ん中を通るのはオレンジの中央線

Hurry out the Shinjuku's Western Exit
新宿西口を飛び出ると

There you'll find Yodobashi Camera!
そこにヨドバシカメラがあるのです!

 

【英語・ナレーション】

Look! 
見てください

You'll Find Everything You Need In This Large Store!
この大きな店の中で、あなたの必要とするものは全て見つけられます。

Plenty of Stock's, Fantastic Variety & Everything 20 to 50% Off Regular prize.
豊富な、素晴らしく変化に富んだ品揃え、そして全品、定価の20〜50%引き。

There you'll find Yodobashi Camera!
そこにヨドバシカメラがあるのです!

藤沢昭和(ふじさわてるかず)さんは創業者です。創業者みずから作詞なんですね。

5番まである上に、さらに英語の歌詞まであるとは知りませんでした。

 

そして、このCMソングの元歌としては、次のような歌詞で覚えている方も多いと思います。

ごんべさんのあかちゃん

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その他にまた、こんな歌詞バージョンもありましたね。

おたまじゃくしはカエルの子

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おたまじゃくしはカエルの子

1)おたまじゃくしは 蛙の子
なまずのまごでは ありません
それがなにより 証拠には
やがて手が出る 足が出る

2)でんでんむしは かたつむり
さざえのまごでは ありません
それがなにより 証拠には
つぼやきしょうにも ふたがない

3)かぜにゆらゆら すすきのほ
ほうきのまごでは ありません
それがなにより 証拠には
すすきでどらねこ どやされぬ

4)たこ入道は やっつあし
いかのあにきでは ありません
それがなにより 証拠には
いかにはちまき できやせぬ

「ありません」と「ないわいな」

上の映像の最近版の歌詞では、「ありません」と、ていねいな言葉使いになっていますが、ある程度の年齢の方は、「ありません」ではなく「ないわいな」で覚えてらっしゃるのではないでしょうか。

元はハワイアン

この曲は、1940年に灰田勝彦(はいだかつひこ)さんの歌でヒットしています。

曲を聞いてみるとまるでハワイアンですが、実際、灰田勝彦さんはハワイホノルルで生まれて、12歳まで暮らしていたのでした。

この曲も、もともとハワイアンの「ナ・モク・エハー」という、ハワイの四つの島を讃える曲がベースになっていて、その間奏部分に「リパブリック讃歌」のメロディを使って日本語の歌詞を付けたものです。

そしてむしろ、その部分の方が知られるようになったんですね。

灰田勝彦「お玉杓子(おたまじゃくし)は蛙の子」

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「ないわいな」バージョンの歌詞はこちらです。

www.uta-net.com

創業者10歳の時のヒット曲

そして、ヨドバシカメラの創業者は藤沢昭和(ふじさわてるかず)さんですが、彼が生まれたのは1930年なので、この灰田勝彦さんのヒット曲「お玉杓子は蛙の子」がラジオからバンバン流れていた1940年時には、10歳ということになります。やはり思春期のみずみずしい耳に、忘れられない記憶として、そのメロディーが残ったんでしょうね。

南北戦争の北軍の行進曲「リパブリック讃歌」

さて、この曲はもともと、アメリカ南北戦争の際に北軍の行進曲として歌われていたものです。軍歌には珍しく、女性の詩人「ジュリア・ウォード・ハウ」の作詞による曲です。

こちらは1963~1965年に日本でも放送された「ミッチと歌おう」で有名になった、ミッチミラーの男性合唱団による「リパブリック讃歌」。

Batlle Hymn Of The Republic · Mitch Miller · The Gang Choirs

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歌詞はこちらです。英語歌詞の下の「日本語に翻訳」の文字をクリックすると、直訳ですが日本語訳が読めます。

www.google.com

ヨドバシカメラCM曲も、元はやっぱり讃美歌だった

勇ましい歌詞の付いたリパブリック讃歌ですが、その曲の元々の歌詞は、もっと讃美歌らしい歌詞でした。

Bob Horton「Say Brothers, Will You Meet Us?」

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Say Brothers, Will You Meet Us? 歌詞、和訳

1. Say brothers, will you meet us,
ねえ、兄弟たち、会いましょうか、

Say brothers, will you meet us,
ねえ、兄弟たち、会ってくれますか、

Say brothers, will you meet us,
ねえ、兄弟たち、会ってください、

On Canaan's happy shore?
カナンの幸せな岸辺で会いましょうか?

2. By the grace of God we'll meet you,
神の恵みによって、私たちはあなたに会いに行きます、

By the grace of God we'll meet you,
神の恵みによって、私たちはあなたに会いに行きます、

By the grace of God we'll meet you,
神の恵みによって、私たちはあなたに会いに行きます、

Where parting is no more.
もう別れなど存在しない場所。

3. Jesus lives and reigns for ever,
イエスは永遠に生きて統治する、

Jesus lives and reigns for ever,
イエスは永遠に生きて統治する、

Jesus lives and reigns for ever,
イエスは永遠に生きて統治する、

On Canaan's happy shore.
カナンの幸せな岸辺で。

4. Glory, glory, hallelujah,
栄光、栄光、ハレルヤ、

Glory, glory, hallelujah,
栄光、栄光、ハレルヤ、
Glory, glory, hallelujah,
栄光、栄光、ハレルヤ、

For ever, evermore.
永遠に、ずっと永遠に。

歌詞にはやっぱり「岸辺」つまり「川」が出て来るのが面白いですね。

そして、やはり歌詞の中にある「カナン」は聖書に出て来る「約束の地」なのだそうですが、宗教的なことはあまり詮索しないでおきましょう。

今回のお話

さて、今回は、「ビックカメラ」「ヨドバシカメラ」のCMソング、両方とも、創業者が多感な少年、青年時代に耳にしたであろう曲が元になっている、ということ。

その曲の元の元をたどって行くと、実は両方の曲ともに「讃美歌」が起源であった、というお話でした。

その讃美歌もまた両方ともに「川」が出て来るのですが、日本でも「彼岸」つまり、向こう岸、と言ったりするので、川は「三途の川」浄土、天国への入り口の象徴なのかも知れません。

うちの店に来れば、買い物天国ですよ、という深い意味があるのでしょうか。