- 公園でダンスの練習をする女の子
- チェロの練習をする女の子
- ダンスの子が話しかける
- 「たどんそし」? スマホに翻訳を頼む
- スマホが通訳になる
- 親密さまで判定
- メッセージ交換も翻訳
- 目まぐるしい展開
- 言葉選びが秀逸
- 過信は禁物
- 今回のお話
グーグルスマホのCM、Google Pixel 6 Pro 「リアルタイム翻訳」編が放送されています。
登場人物の会話の中で、とっさに聞き取れない言葉があったので、よく聞いて解読してみました。
公園でダンスの練習をする女の子
公園で仲間たちと Google Pixel 6 Pro を真ん中に置いて撮影をしているのでしょうか、ダンスの練習をしている女の子(松島穂香さん)が、やっぱり公園でチェロの練習をしている外国人と見られる女の子の演奏に興味を引かれます。
チェロの練習をする女の子
ダンス仲間の輪から抜け出した女の子は単独で、チェロの女の子に近寄って行きます。
それを見ているダンス仲間たちは、「え〜、言葉が分からないのに、どうするつもりだろう」といった風で、興味津々です。
ダンスの子が話しかける
ダンスの女の子は、チェロの女の子におずおずと
「あの〜」
と、日本語で声を掛けます。
声を掛けられたチェロの女の子は、フランス語で、
" Oui ? "
(ウイ?
「はい?」)
と答えます。
これで、チェロの女の子がアフリカ系フランス人なのか、旧フランス領アフリカの人なのかは分かりませんが、とりあえずフランス語を話す人だということが分かったのですね。
「たどんそし」? スマホに翻訳を頼む
そこで、ダンスの女の子は、手持ちのスマホ Google Pixel 6 Pro に向かって言います。
「『めっちゃ素敵ですね』ってフランス語に翻訳して」
すると、賢い Google Pixel 6 Pro はフランス語で、
" C'est vraiment sympa. "
(セ・ヴれモン・サンパ、
=直訳だと、「それは本当に素敵です」)
と言ってくれます。
それを聞いたチェロの女の子は、
" Ta danse aussi. "
(タ・ドンス・オスィ)(たどんそし)
と答えます。
フランス語では「ダンス」の「アン」は、鼻に抜ける「鼻濁音」になるので、実際には「オン」という音になり、「ダンス」が「ドンス」と聞こえます。
また、「ドンス」の「ス」と「オスィ」の「オ」がつながって、「ソ」になってしまいます。
なので、全体として「たどんそし」とひらがなで書けますし、もちろん、「タドンソシ」とカタカナでも書けます。そして「たどんそし」と発音しても、ちゃんと通じます。
スマホが通訳になる
Google Pixel 6 Pro は、そのチェロの女の子のフランス語の答え(たどんそし)を日本語に訳して、
「あなたのダンスも」
と、ダンスの女の子に日本語で言ってくれます。
(たどんそし)の(た)は、親しい間柄での「あなたの」という意味です。
ちなみに、親密な相手に対して、単に「あなたも」と言う時は、" Toi aussi " (トワオシ)と言います。
つまり、最初に「翻訳して」と言えば、次の会話からは「翻訳して」と言わなくても、まるで Google Pixel 6 Pro が通訳であるかのように、お互いの言葉を相手の言葉に自動的に翻訳して言ってくれるので、もはや単なるケータイではなく、声を発する自動翻訳機として働いてくれるわけです。
親密さまで判定
なお、フランス語の「あなたの」には、2種類があります。
かしこまった言い方 " Votre " (ヴォートる)と、打ち解けて親密な言い方 " Ta " (タ)です。
このCMの場合は、打ち解けた親密な言い方" Ta " (タ)をしています。
ついでに、" aussi " (オスィ)(おし)は、「同様に」という意味です。
その後、「あなたらしさ、もっと自由に。」というキャッチコピーが画面に出てから、Google Pixel 6 Pro の文字とともに製品の写真が表示されます。
ナレーションがそれに合わせて流れます。
「あなたらしさ、もっと自由に、グーグルピクセルシックス」。
メッセージ交換も翻訳
そして次の場面では、女の子同士でLINE交換でもしたのでしょうか、あのチェロの女の子からダンスの女の子のスマホにメッセージが入ります。
"Pourquois pas faire une session ensemble?"
(プるクワ・パ・フェーる・ユヌ・セスィオン・オンソーンブル?)ーひらがなの「る」つまり " R " の音は「うがいの音」なのですが、発音しなくても通じますー
すると、すぐに Google Pixel 6 Pro の画面上で、この一行のフランス語の文字が日本語に変換されます。
「一緒にセッションをしてみませんか?」
これを見たダンスの女の子は喜んで、クルッと一回転してしまう、という、Google Pixel 6 Pro の自動翻訳機能を使えば、言葉の壁を超えて人間関係が広がるので、手軽に国際交流が出来ますよ、というお話でした。
目まぐるしい展開
しかしながら、このCMを見た感じでは、カッコよさを強調するイメージ戦略のためか、画面転換があまりに目まぐるしいので、CM映像は30秒しかないのですが、もうあと30秒くらいかけて、優秀な機能を具体的に説明してもらいたいと思いました。
言葉選びが秀逸
なお、フランス語では「素敵」を表す言葉としては、他にもたくさんあります。
" Chouette " (シューエット)や " Splendide "(スプロンディード) " Étonnante"(エトノーント)などなど、いろいろ言い方がありますが、その中での " Sympa " (サンパ)は、” Sympathique ” (サンパティーク)の略、つまり語源としては「シンパシー」から来ている言葉なので、「素敵」に加えて、オープンマインドな「共感する」というニュアンスが入っています。
単なる直訳ではなくて、「めっちゃ」という若者言葉の持つニュアンスから、その場の人間関係、世代、状況に合わせた言葉を選ぶというのは、人間でもなかなか出来ない能力だと思われますが、A.I.とか使っているのでしょうか。
過信は禁物
ただし、気をつけておかなければならないことがあります。
「めっちゃ素敵ですね」をフランス語に翻訳すると
" C'est vraiment sympa. "
なのですが、
こんどは、その " C'est vraiment sympa. " を、日本語にグーグル翻訳すると、
「それは本当にうれしいです」
となってしまいます。まあ、間違っているとは言えませんが、かなりニュアンスが違いますね。
これは言葉というものの特性から来るものです。
ある国の言葉と違う国の言葉は、それぞれの言葉の世界観を持っています。
世界のとらえ方、切り取り方が、それぞれの言葉によって違うのです。
言葉がたとえば数学なら、A=BならB=Aなのですが、言葉は数学で言うと「集合」の考え方に近いかもしれません。
A=B+Cなのです。
上の例で言えば、
" C'est vraiment sympa. "=「それは本当にうれしいです」+「めっちゃ素敵ですね」
というわけです。実際にはもっとたくさん、D以降の「+」の選択肢があります。そして、それは逆の立場でも同じです。
なので、この自動翻訳機能も過信は禁物です。
基本的には「そのあたりのことを言ってる」くらいに思っていたほうが安全ですね。
今回のお話
今回は、Google Pixel 6 Pro のCM,「リアルタイム翻訳」編で、登場人物が何を言っているのかを読み解いて、ご紹介しました。
ちなみに、舞台となっている公園は、埼玉県「北浦和公園」だそうです。