- 「タウンワークのうた」元曲は「聖者の行進」
- WECARS(ウィカーズ) 「歌う看板くん」にも「聖者の行進」が
- ディキシーランドジャズの定番曲「聖者の行進」あるいは「聖者が街にやって来る」
- When the saints go marching in 歌詞
- 天国に入って行く
- 「聖者の行進」は、お葬式の歌だった
- 「ファーストライン」と「セカンドライン」
- 聖者はやっぱり街にやってきた
- ディキシーランドジャズの由来は?
- 今回のお話
「タウンワークのうた」元曲は「聖者の行進」
この曲「聖者の行進」は日本でもよく知られていて、CM曲などでもたびたび使われています。
「タウンワークのうた」単発・短期も探せる篇
こちらのCMは、NHK朝ドラ「あんぱん」で「やなせたかし」さんの奥さん「のぶ」さん役を演じた、女優の今田美桜(いまだみお)さんがキャラクターとして登場する、就職情報誌「タウンワーク」のCMです。
実際にCM曲を歌っているのも今田美桜さんです。
「タウンワークのうた」歌詞
タウンワーク
バイトするならタウンワーク
バイトするならタウンワーク
単発・短期(たんぱつ・たんき)もタウンワーク
オーレイ!(これは松平健さん)
という簡単な歌詞になっています。
WECARS(ウィカーズ) 「歌う看板くん」にも「聖者の行進」が
あるいは、こちらのCMでも「聖者の行進」が使われてます。
悪名高い「ビッグモーター(BIGMOTOR)」を伊藤忠が買収して生まれ変わった「ウィカーズ(WECARS)」というわけですね。
WECARS 歌う看板くん「査定してみよう」15秒
WECARS 「歌う看板くん」歌詞
WECARS(ウィカーズ)です
です
WECARS(ウィカーズ)です
です
中古車売るなら安心
WECARS(ウィカーズ)
です
査定してみようかな〜
です
中古車は
WECARS(ウィカーズ)
どえ〜す
このメロディーの原曲「聖者の行進」の、もともとの歌詞も、やはり簡単なものです。
ディキシーランドジャズの定番曲「聖者の行進」
あるいは「聖者が街にやって来る」
これらのCMでも使われている曲の原曲は、アメリカの曲で、「聖者の行進」あるいは「聖者が街にやって来る」という日本語タイトルの、にぎやかな「ディキシーランドジャズ」の定番曲です。
「タウンワーク」の「タウン」と「聖者が街にやって来る」の「街」が共通してるんですね。
こちらはルイ・アームストロングによる「聖者の行進」です。
When The Saints Go Marching In - live in Australia - Louis Armstrong
「ディキシーランドジャズ」は、アメリカ南部、海に面したルイジアナ州の港湾都市であるニューオーリンズ市が発祥の地であり、本場です。
アメリカでの曲名は
When The Saints Go Marching In
その元々の歌詞も、このCMの歌詞同様の簡単なもので、私の乏しい英語力で聞いた感じでは、
「私たちの住んでいる街に、聖者たちがにぎやかに行進しながらやってきた。私もあの人たちのうちの一人になりたいものだ」
という意味だと、私は思い込んでいましたが、今回、書かれた歌詞をよくよく読んでみると、なんと本当は大違いだということが分かりました。
歌詞には長いバージョンもあるのですが、よく知られていて歌われているのはこちらの部分です。
これを読むと実は、聖者たちは、入って「来る(come)」のではなく、入って「行く(go)」のです。
When the saints go marching in 歌詞
Oh, when the saints go marching in
おお、聖者たちが行進して入って行く時にOh, when the saints go marching in
おお、聖人たちが行進して入って行く時にOh Lord✳︎ I want to✳︎ be in that number✳︎
おお神様 私はその中の一員になりたいWhen the saints go marching in.
聖者たちが行進して入って行く時に
(✳︎「Oh Lord」は、略されたり、変えられたりする場合もあります。
(✳︎「want to=ウォントトゥ」は、「wanna=ワナ」と略される場合もあります。
(✳︎「number=ナンバー」は「menber=メンバー」と同じです)
ということなので、歌詞では「行く(go)」となっているんですね。
でも、聖者たちが「入って来ない」で、「入って行く」、ってどこに「入って行く」んだろう?
天国に入って行く
「聖者たちが入って行く」のですから、そこには聖者たちの主である神様がいる「神の国」つまり「天国」ということになりそうです。
事実、この曲「聖者の行進」の長いバージョン、1番から8番まである歌詞の、2番から7番までの歌詞には聖書の「黙示録」の字句が引用されていて、この世の終わりに起きる現象を羅列して行きます。
1番と8番の歌詞は、上にご紹介してある簡単な歌詞です。
1番から8番までの1行目と2行目、そして4行目になっている歌詞だけご紹介します。
「聖者の行進」は8番まである
1)Oh, when the saints go marching in
おお、聖者たちが行進して入って行く時に、
2)Oh, when the drums begin to bang
おお、太鼓が鳴る時に、
3)Oh, when the stars fall from the sky
おお、星が空から落ちる時に、
4)Oh, when the moon turns red with blood
おお、月が血のように赤くなる時に、
5)Oh, when the trumpet sounds its call
おお、ラッパが呼ぶ時に、
6)Oh, when the horsemen begin to ride
おお、騎士が馬に乗る時に、
7)Oh, when the fire begins to blaze
おお、火が燃え上がる時に、
8)Oh, when the saints go marching in
おお、聖者たちが行進して入って行く時に、
それぞれの歌詞の3行目に、「私はその中の一員になりたい ( I want to be in that number)」と歌うわけです。
「天国行きの行進」と「地獄行きの行進」
そして、その、世界の終わりの時にはキリストによる最後の審判があって、善人たちは聖者なので天国に行けて、悪人たちはそうではないので地獄に行くのです。
下の絵はミケランジェロの「最後の審判」。
宗教画については全く詳しくないのでよく分かりませんが、画面の左側が天国に向かって上昇して行く人たちで、右側が地獄に向かって下降して行く人たちだそうです。
真ん中にいるのが最後の審判をしているキリストと聖母マリアで、その下の下あたりでいわゆる天使たちがラッパを吹いていますが、これが「黙示録」に出て来て「聖者の行進」の歌詞にもなっている、この世の終わりを告げるラッパです。
「聖者の行進」では、この最後の審判のときに、「私は、天国に入って行く聖者の列の方に、そのメンバーの一員として入っていたいものだ」という歌詞になっているんですね。
「聖者の行進」は、お葬式の歌だった
ニューオーリンズは港町、貿易港なのですが、ここに輸入品とともに船で運ばれて来ていたのは、なんとアフリカなどからの奴隷だったのです。
他の穀物などの貿易品と同等の品物として扱われて、競売されていた、ということなので、なんとも恐れ入ってしまいますが。
そんな土地柄なので、今でもアフリカ系住民と、欧州系住民が拮抗しているという人口構成。
当時のアフリカ系の人にとっては、そもそもの日常生活が、重労働などで過酷な環境だったので、人が亡くなると、悲しいは悲しいのだけれど、故人はもう現世の苦労はしなくて済む、亡くなって天国に行くのだから、むしろ喜ぶべきことだ、ハッピーなことだ、という発想があったんですね。
なので、ニューオーリンズでのお葬式では、その発想から、「ジャズ葬式」という形式が生まれました。
「ファーストライン」と「セカンドライン」
アフリカ系の人が亡くなると、墓地に向かう葬列のうち、先頭の行列「ファーストライン」と呼ばれる列にはブラスバンド、近親者や関係者などが並び、それに続く「セカンドライン」には街の人たちや通りすがりの人たちが並んで行進して行きます。
ファーストライン
多くの場合は郊外にある墓地に行くまでは物悲しいゆったり目の音楽を吹奏しながら行進しますが、墓地に到着して、棺をお墓に納めて埋葬が終わると、今度は打って変わって、陽気で、にぎやかな音楽を吹奏しながら行進して、祝祭的なパレードとして街に入って行き、なぜか西洋の貴婦人が持っているような豪華な傘などを持ったり、正装したりして練り歩きます。
セカンドライン
このにぎやかなパレード全体のことを「セカンドライン」と呼ぶこともあるようです。
そのにぎやかなパレードの中から生まれたのが「聖者の行進」という曲でした。
亡くなった人はこれから天国に行くのですから、もはや「聖者」です。聖者たちが天国に行進して入って行く、よかったよかった、私も一緒に天国に行きたいくらいだ、めでたいめでたい、と、この時、セカンドラインの人たちが街中の人々を巻き込んで騒ぎまくるのですね。
聖者はやっぱり街にやってきた
街に住んでいる人たちにとっては、天国に亡き人を送るという聖なる役目を果たした、墓地からやって来たその葬列の「セカンドライン」は、「聖者たちの行進」に見えるかも知れません。
そうすると「聖者が街にやって来る」というタイトルも、あながち間違っている、とも言えないような気もして来ます。
「聖者が街にやって来る」のなら、聖者が入って行くところは天国なので、ということは、この街がほんの束の間、天国になるってこと?と考えたりもします。
私が当初思い込んでいた、「私たちの住んでいる街に、聖者たちがにぎやかに行進しながらやってきた。私もあの人たちのうちの一員になりたいものだ」というイメージも、案外間違っていないのかなという気がしてきました。
だから、住人も飛び入りでパレードに参加して、天上的な至福を感じて踊りまくる。
日本人耳からすると、歌詞の「マーチン イン」がつながって「マーチニン」、それが「まーちに(=街に)」と聞こえないこともないし。
似たようなタイトルで「サンタが街にやって来る」という曲もあります。
「サンタが街にやって来る」
やっぱり、歓迎すべきお客さんには、来てもらいたいですね。
ディキシーランドジャズの由来は?
ところで今回、いろいろ調べているうちに、ディキシーランドジャズとは何?
そもそも「ディキシー」って?
という疑問が湧いたので、ちょっと調べてみました。
「ニューオーリンズ」はフランス領だった
ディキシーランドジャズの発祥の地と言われる「ニューオーリンズ」という地名は 、「New Orleans」という表記ですが、これは元々のフランス語の地名「Nouvelle-Orléans(ヌーヴェル-オルレアン=新しいオルレアン)」を英語読みしたものです。
「オルレアン」はフランス本土の「ロワール川」沿いにある都市の名前です。
実は昔は「ニューオーリンズ」のあるルイジアナは、フランスの植民地地域でした。
ルイジアナの領域は当初1534年〜1803年の間、北アメリカの中央部をほぼ占領するほどの広大なものでした。
下の北アメリカの地図で、青い地域をフランスが、東はアメリカ、西はスペインが支配していました。
青いフランス領域の中の、丸印は都市を、星印は砦(とりで)を表しています。
青い地域の一番下、南端の海岸沿いに「La Nouvelle-Orléans(ラ・ヌーヴェル-オルレアン=新しいオルレアン=ニューオーリンズ)」の文字が見えます。

そもそも「ルイジアナ」の名前も、フランスの「ルイ14世」から来た名前なので、その住人にはフランス語話者が多い。
もっとも、この広大なフランス植民地地域は、財政難だったフランス本国のナポレオンが1803年、アメリカに売ってしまったのですが。
「ディキシー」の語源はフランス語
こちらは、ルイジアナがアメリカに売却されたあと、ルイジアナ州ニューオーリンズ市で1867年に発行の10ドル紙幣です。

表面には英語で「TEN DOLLARS(=10ドル)」と書いてあるのですが、裏面の真ん中にはフランス語の飾り文字で「DIX(ディス=10)」と書いてあるんですね。
さらにその左右にもフランス語で「ルイジアナ・市民銀行」と書いてあります。真ん中下の「ニューオーリンズ」は英語ですが。
フランス語の「DIX(ディス)=10」は英語読みすると「ディクス」となり、当時の10ドルは現在のレートに換算すると現在の価値で6万円くらいの高額に相当するため、10ドル札は英語話者からは敬意と親しみを込めて「DIXIE(ディキシー)」という愛称で呼ばれていました。
さらに、この紙幣が流通している土地を「ディキシーランド」と呼ぶようになって行ったのでした。
現在の「ディキシーランド(色が濃いほどコテコテ)」
アフリカ文化と欧州文化の融合
さて、欧州系の人々の持ち込んだ西欧の楽器を、天性のアフリカンリズムを持っている人々が演奏することによって、西欧とアフリカの文化融合が起こり、そこから新しく生まれた音楽が、クラシックでもない、アフリカ民族音楽でもない、ジャズの元祖と言われる「ディキシーランドジャズ」なのです。
違うものと違うものが融合すると、新しいものが出来る、いわゆる「化学反応」が起きる、という現象は、我々世代では「ビートルズ」の4人で経験済みですが、その大規模版がディキシーランドで、なかでもニューオーリンズで起きていた、というわけですね。
今回のお話
今回お話ししたのは、ディキシーランドジャズのスタンダードナンバー「聖者の行進」に歌われている「行進」は、元々は、「街に聖者が入って来る」行進ではなく、「天国に聖者が入って行く」行進だったこと。
しかしながら、セカンドラインの喜びようを見ていると、実際には、亡き人を天国に送って来た葬列という聖者たちが入って行くところ、つまり街もその時には天国になる、のではないか、それなら「聖者が街にやって来る」という言い方も正しい、というお話でした。
それに「ディキシー」の由来も、ちょっと調べてみたら、意外にもフランス由来だった、というお話。
