一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「 うっせぇわ」のドゥーワップ版か?コースターズの1958年の全米No.1ヒット「ヤケティヤック」

「うっせえわ」状態はいつの時代も

「うっせえわ」、現代の若者世代の、親世代や上司世代に対する文句、言いたいことを代弁している歌ですが、どうやら、この「若者世代」対「親世代」の構図は、古今東西を問わず、いつの時代でも、どこの国でも、どの家庭でも、あの学校でも、この会社でも、いつまでたっても変わらない現象のようですね。

60年前のうっせえわ

同じように「うっせえわ」と言っているバンドが、今から60年以上前のアメリカにいました。彼らの場合は家庭が舞台です。

ドゥーワップグループ「コースターズ」。

コースターズの1958年に全米ヒットチャートのNo.1を獲った曲「ヤケティヤック」は、ドゥーワップ版の「 うっせぇわ」です。

www.youtube.com

Yakety yak

【母親】

Take out the papers and the trash
かみくずやガラクタを捨てるんだよ

Or you don't get no spendin' cash
じゃないと、おこづかいはやらないよ

If you don't scrub that kitchen floor
キッチンの床を磨かないんだったら

You ain't gonna rock and roll no more
ロックンロールはやらせないよ

【言われてる本人】

Yakety yak
うっせえうっせえ

【父親】

Don't talk back
言い返すんじゃないよ

 

【母親】

Just finish cleanin' up your room
きちんと部屋の掃除を終わらせな

Let's see that dust fly with that broom
ほうきでほこりが舞うか見ようじゃないか

Get all that garbage out of sight
生ゴミは全部視界から消しちゃいな

Or you don't go out Friday night
じゃないと、金曜の夜も外出させないよ

【言われてる本人】

Yakety yak
ガミガミガミガミ

【父親】

Don't talk back
口答えするんじゃないよ

 

【母親】

You just put on your coat and hat
ちゃんとコートを着て、帽子もかぶるんだよ

And walk yourself to the laundromat
自分でコインランドリーに行ってきな

And when you finish doin' that
それが終わったら、

Bring in the dog and put out the cat
犬を中に入れて、猫は外に出すんだよ

【言われてる本人】

Yakety yak
うっせえうっせえ

【父親】

Don't talk back
言い返すんじゃないよ

 

(間奏)

 

【母親】

Don't you give me no dirty looks
身なりは、きたなくちゃダメだよ

Your father's hip; he knows what cooks
あんたの父さんはヒップだよ、何が流行ってるか知ってる

Just tell your hoodlum friend outside
外で待ってるあんたの不良仲間にも言っときな

You ain't got time to take a ride
クルマころがしてるヒマはないよ

【言われてる本人】

Yakety yak
やいのやいの

【父親】

Don't talk back
口答えするんじゃないよ

【言われてる本人】

Yakety yak, yakety yak
うっせえうっせえ

Yakety yak, yakety yak
ガミガミガミガミ

Yakety yak, yakety yak
うっせえうっせえ

Yakety yak, yakety yak
やいのやいのやいのやいの

Writer(s): Mike Stoller, Jerry Leiber

「ドゥーワップ」とは

ドゥーワップというのは、黒人コーラスグループの、メインボーカル以外のメンバーが「ドゥワー」とか「ワワワワ〜〜」「ワッシュワリワリ」とかのバックコーラスを入れるスタイルの歌のことです。日本で言えば、「シャネルズ」改め「ラッツ・アンド・スター」などがこのスタイルですね。

「 Yak ヤック」とは牛の仲間の「ヤク」のこと

タイトルの「ヤケティヤック」、「ヤック」というのは牛の仲間のあの毛の長い「Yak」ヤクのことです。

yak

同じことを繰り返すおしゃべり

ヤクは牛の仲間なので、一旦食べたものを胃の中からまた口の中に戻してかみ直す「反芻(はんすう)」ということをやりますが、その様子が「いつまでも口を動かしておしゃべりしている」ふうに見えるので、「同じことを繰り返すおしゃべり」を表して「Yakヤック」と言うんですね。

「Yakety ヤケティ」は形容詞

「Yakety ヤケティ」はその「Yakヤク」を形容詞化して「ヤクのような」と、「Yakヤック」をさらに強調しているわけです。

さらに、「ヤケティヤック」という言葉そのもの、Yakety yakという言葉自体が「Yak」の2回繰り返しになっているところが、また強烈ですね。

繰り返しで強調

「ガミガミ」とか「ギャアギャア」といった、二回繰り返しのニュアンスでしょうか。

「ヤクのようなヤクだよ」、「無駄な無駄話だなあ」というわけです。

「うっせえうっせえ」という繰り返しでしょうか。

負けていない親

親から、ああだこうだ、あれしなさい、これしなさい、あれしちゃダメだよ、これしちゃダメだよ、と言われて「ヤケティヤック(うっせえわ)」と反発しているのですね。

ここで日本の「うっせえわ」と違うのは、「ヤケティヤック(うっせえわ)」にさらに親が答えて「 Don't talk back(言い返すんじゃないよ、口答えするんじゃないよ)」と、親が負けてないところですね。この負けていない親は低音なので、父親なのかもしれません。

世代間の会話が成り立つ

親に反発する若者の方も、親は口やかましくてうるさいけど、まあ、親というものはそういうもんだよ、という暗黙の了解のあるところが、親の立場を分かっている、若者なのにふところの深い、むしろ、それこそ「おとな」な理解力を持っている余裕を感じさせますね。

親はこんなもんだ、若者はこんなもんだ、という、罵倒し合いながらの世代間の会話がいちおう成り立っている、どちらかと言うと楽しい造りになっています。

この辺は、ソロでは出来ない、グループならではのメリットを生かした曲、と言えるでしょうか。

大人になったコースターズ

こちらは、後年、当時は若者だったメンバーもみんなすっかり大人になって、ボーカルメンバーももともとは4人だったのが3人になってしまったコースターズです。

こんどは大人の立場から歌えますね。ちょっと画面の乱れがあります。

The Coasters Yakety Yak from a TV Special 1988

youtu.be

チェッカーズの名前はコースターズから

「アメリカン・グラフィティ」をきっかけに、日本でもちょっとした1950年代音楽ブームがあったのですが、それを聞いていたのがチェッカーズでした。

自分たちのバンド名を付けるに当たって、バンドのお手本にしていたコースターズCoastersが「C」で始まって「S」で終わるバンド名だったので、それにあやかってCheckersチェッカーズにしたのです。

www.tapthepop.net

 

今回のお話

今回は、日本のヒット曲「うっせえわ」のドゥー・ワップ版とも言える曲が60年前のアメリカでヒットしていたことをご紹介しました。

いつの時代でも、どこの国でも、若者の思うことは同じなんですね。

親の反応も同じ。

同じ時代を生きて、同じ環境に住んでいるのですから、世代間の違いも、お互いにそんなもんだ、と割り切って許容していれば、少しは住みやすい地球になるような気がします。