風がエーゲ海から吹いている
テレビの「筒美京平」特集を見ていたら、ジュディ・オング「魅せられて」が流れました。
その際に解説として、「エイジアン」は「アジア」のことではない、と紹介されました。見ていた私はびっくり仰天です。
えええええええ〜!「エイジアン」は「アジア」じゃないですとお〜〜〜???
「アジア」じゃなければ、何なの???
紹介していた方ご自身も「エイジアン」とは「アジア」のことだと思っていたそうです。
この曲の特徴は英語のリフレインですね。
ジュディ・オングさんが英語が堪能、ということで英語のリフレインが採用されたようです。
「Wind is blowing from the Aegean」
「ウィンド イズ ブロウイング フロム ジ エイジアン」
意味は、「風がエーゲ海から吹いている」
出典
このリフレインの中の「エイジアン」を、私もすっかり「アジア」の事だと思い込んでいたのです。
思い込みというのは恐ろしいもので、いったんそうだと思い込むと、そこで思考停止ですね。
もはや何回聞いても「エイジアン」は「アジア」のことだとしか思えません。
ジュディ・オングさんは、ちゃんと「Agean」と発音されているのですが、思い込んで聞く方としては、
「アジアンね〜、風がアジアから吹いてくるんだな〜」
と聞いてしまっているわけです。
歌詞表記にもちゃんと「Aegean」と書いてあるのです。
しかしながら、すっかり「アジアン」と思い込んでいる私には、「Aegean」と「Asian」は明らかに違う、と見えているにもかかわらず、その違いも見分けられなくなってます。
「エイジアン」とは「エーゲ海」のこと
今さらながら辞書で調べてみると、「Aegean」は確かに「エーゲ海」の事、と書いてあるので、「アジア」ではなかったんですね〜〜。
そう言われて思い出してみると、そう言えば、発表当初にはサブタイトル的に「エーゲ海に捧ぐ」とか「エーゲ海のテーマ」という言葉が、ちゃんと入っていました。
映画「エーゲ海に捧ぐ」のタイアップ曲だった。
それもそのはず、この曲は池田満寿夫原作の映画「エーゲ海に捧ぐ」のテーマ音楽ではありませんが、タイアップした「ワコール」のCM曲だったのです。
「エイジアン」と「アジアン」の発音の違い
「エイジアン」の発音は?
「エイジアン」の発音はこちらです。
Weblio英和辞典・和英辞典より
「アジアン」の発音は?
こちらで「アジアン」の発音が聞けます。
Weblio英和辞典・和英辞典より
「エイジアン」は「イジアン」、「アジアン」は「エイジアン」のように聞こえますね。微妙です。
40年間、アジアから吹き続けた風
最初に「魅せられて」を聞いたときから、英語リフレインは「アジア」のことだと思い込んでしまったために、この曲の1979年の発売の時から40年以上、私の中での「風」はアジアから吹き続けていたのでした。
間違い、とも言い切れない
もっとも、アジアからヨーロッパに風が吹く、海に面した場所、というと、ちょうどギリシャあたりになります。
しかも、その海は「エーゲ海」なので、地理的にも、イメージ的にも間違ってはいないわけです。
しかし、「エーゲ海からの風」と「アジアからの風」を比べると、おしゃれ度から考えて、この歌の場合はどうしたって「エーゲ海」の方がふさわしいでしょうね。
そこはもう、ジュディ・オングさんの圧倒的な歌唱力ならびに、あのいかにもギリシャ彫刻のようなイメージの翼ウィングで押し切られた感じです。
裏声で歌うか、地声で歌うか
ちなみにその番組で紹介されていたエピソードは、この「エイジアン」の部分を裏声で歌うか、地声で歌うかの選択の場面です。
筒美京平さんの感覚では、裏声は「風」のイメージ、地声は「太陽」のイメージ。
したがって、この曲は風のイメージなので、裏声で行きましょう、ということで、この「Aegean」の部分は裏声で歌うことに決まったのでした。
確かに、この「エイジアン」の部分を、もし地声で歌っていたら、オペラ歌手が歌う「オーソレミオ」(私の太陽)のように晴れやかで力強く光に満ちたイメージにはなったでしょう。
しかし、海を渡って来る「風」の爽やかで気持ち良い、それでいてなぶられるような肌感覚とは、また違った感覚の曲になっていたでしょうね。
空耳、大発見
というわけで、ジュディ・オング「魅せられて」歌詞の「エイジアン」は「エーゲ海」のことであって、「アジア」のことではない、という、目からウロコ、寝耳に水(ちょっとちがう)の大発見でした。
この発見は、太田裕美さん「木綿のハンカチーフ」歌詞の「星の」を「ほしいの」と思い込んで聞いていたことに気がついた発見に次ぐ大発見です。
そう言えば、「木綿のハンカチーフ」も筒美京平さんの作曲ですね。
彼は聞く人を魔法にかけて、思い込みをさせてしまう魔法使いのような作曲家なのかも知れません。