かっ飛ばせコール
プロ野球、高校野球ともに、打者が打席に入って、いざ打とうという場面で観客席から叫ばれるのが「かっ飛ばせ〜〜〜、だ〜れそれ! どこそこ、た〜お〜せ〜、オー!」という掛け声ですが、その前に、掛け声を叫ぶタイミングを合わせるため演奏される「前フリ」としての曲には、さまざまなメロディーが採用されるので、バラエティに富んでいて楽しい。
なお、どこそこ、た〜お〜せ〜、という言葉は、相手をおとしめる表現なので、道徳的にどうなの?という視点から、高校野球では禁止になっているそう。
対戦型の勝者とは
まあ、それを言うなら「対戦型スポーツ」そのものが、相手を倒さないと成り立たないスポーツなので、どうなの?という気もしますけどね。
スポーツに限らず、「ゲーム」でもそうですね。将棋でも囲碁でも、トランプ、カルタに至るまで、勝負となると、勝者と敗者がいるわけで、みんなが幸せ、というわけには行きません。
芸術に勝ち負けは
相手を直接打ち負かすわけではない、よーいドンのかけっこや水泳などの速さを競う競技でも、一位以外は皆敗者、ということになりますか。
ピアノコンクールなどの音楽や二科展などの芸術作品のコンペはどうでしょう。
投票によって、ランキングは付くのでしょうが、1位以外は負けなので価値がない、なんてことにはならないと思います。(そうでもないのか?)
コンバットマーチ元祖は早稲田
ところで、応援コールの中でもよく聞かれるのは「コンバットマーチ」ですね。
これはもともと、阪神タイガース岡田監督の出身校である早稲田大学の、応援団ブラスバンド部員作曲の「かっ飛ばせ」マーチでした。
その後、その時々のヒット曲が取り入れられるようになり、中でも盛んに聞かれるようになったのは、「山本リンダ」の「ウララ〜ウララ〜」ですね。
下のコンバットマーチは「佐賀商」によるものですが、「かっ飛ばせーだーれそれ」のあとは「誰それ」の名前を繰り返しているようですね。
佐賀商・狙いうち
なぜ「ウララ〜ウララ〜」なの
なぜ野球の試合で「ウララ〜ウララ〜」がよく演奏されるのか考えてみました。
「山本リンダ」の「ウララ〜ウララ〜」のタイトルを思い出して見ると、「狙いうち」!
そうです。タイトルでもあり、歌詞の中にも出てくる弓による「狙いうち(狙い撃ち)」という言葉を、野球の試合でのバットによる「狙い打ち」と読み替えたわけですね。
ピッチャーが投げたボールをバッターは「狙い打ち」するわけですから、これほどバッター打撃の場面にふさわしい曲はありません。
「ウララ〜ウララ〜」ではなく「ウダダ〜ウダダ〜」だった
山本リンダ・狙いうち
歌詞はこちらです。
「ウララ〜ウララ〜」ではなくて、「ウダダ〜ウダダ〜」と聞こえますね。
実はそれが元々の形みたいですよ。
最近では、「新しい学校のリーダーズ」がカバーしていたりして、「今どきの若者」へのウケも良いようですね。
名前の文字数合わせ
なお、「かっ飛ばせ〜〜〜だ〜れそれ!」の
「かっ飛ばせ〜〜〜」の部分では、5拍プラス3拍伸ばしで合計8拍ぶん、
「だ〜れそれ〜〜〜!」の部分でも、5拍プラス実は3拍ぶん伸ばしで合計8拍ぶんを使います。
俳句みたいですが、この5拍ぶんに乗れる文字数は限られるので、打者の名前が短い音数の名前だと音を伸ばしたり、反対に長い音数の名前だと反対に縮めたりして、うまく定型文の中に収まるように、調整しています。
今回のお話、麗(うらら)なウララ
今回は、野球の「かっ飛ばせコール」の前フリメロディーに、「山本リンダ」の「狙いうち」が多用されるのはなぜか、を考えてみました。
山本リンダさんの元気一杯のパフォーマンスも、使われる理由の一つでしょうね。
「ウララ〜ウララ〜」はフラメンコの本場スペイン語ふうの掛け声に聞こえますが、最初は作曲の都倉俊一さんが作詞の阿久悠さんに曲のイメージを伝えるために、自分で「ウダダ〜ウダダ〜」と歌ってデモテープを渡したところ、それがそのまま採用されていてびっくりした、というエピソードがあるようです。
阿久悠さんは「ウダダ」からヒントを得て「うらら」(麗)という言葉と重なる麗(うるわ)しくて華麗なイメージを狙ったのかも知れません。