- クラフトボス「宇宙人ジョーンズ・ゴンドラ」篇「マボローシ」
- 買取大吉新テレビCM「スタンプ」編「どんだけ〜」「背負い投げ〜」
- 「新宿二丁目」で生まれたポジティブ言葉
- どんだけ〜
- 背負い投げ〜
- まぼろし〜
- 「ポジティブシンキング」に使える
- 今回のお話
IKKO(イッコー)さんは、その言葉の決まり文句一発芸で人気者になっていますね。
クラフトボス「宇宙人ジョーンズ・ゴンドラ」篇
「マボローシ」
⭐️役所広司さん、フランスのカンヌ映画祭で最優秀男優賞受賞、おめでとうございます⭐️
例えば、イタリアの水の都ベネチアが舞台のサントリークラフトボスのTV-CM「宇宙人ジョーンズ・ゴンドラ」篇では、イタリア映画「ひまわり」のテーマ曲が流れて、画面の色調もクラシックな映画の雰囲気。
実際にゴンドラを操るのは、役所広司(やくしょこうじ)さん演じるゴンドリエーレ(ゴンドラ乗り)の「レオナルド」。
レオナルドが操(あやつ)るゴンドラに乗ったのは、彼に恋した杉咲花(すぎさきはな)さんの「フランチェスカ」。
クラフトボス「宇宙人ジョーンズ・ゴンドラ」篇(30秒、15秒)
地球調査中の宇宙人ジョーンズ:「この惑星のイタリアでは誰もが映画の主人公気取りだ」
杉咲花
「レオナルド!」
役所広司
「フランチェスカ! ...私はあなたにふさわしい男ではない」
杉咲花
「すべて捨てたっていい あなたと暮らせるなら」
役所広司
「そんなに甘くありません」
杉咲花
「さよなら、愛しいイタリアーノ」
ナレーション
「甘くないイタリアーノ、クラフトボスから」
「フランチェスカ」が「レオナルド」に失恋してしまう、というドラマチックなストーリー。
なのですが、去って行く「レオナルド」を追いかける、こちらもどうやらレオナルドに恋していたらしいIKKO(イッコー)さんがレオナルドに呼びかけます。
「レオナルド!」
レオナルドはあわてて桟橋を蹴ってゴンドラで逃げ出します。
逃げ出すレオナルドに向かってIKKOさんは呼びかけます。
「ゴンドリエーレ、マボローシ!」
これが、気の利いた「オチ」になっていますね。
それにかぶせて、地球調査中の宇宙人ジョーンズの
「ただ、この惑星で急にイタリア人になるのは無理がある」
というセリフが入ります。
そのせいで、IKKOさんのセリフがちょっと聞き取りにくいのが残念ですが。
クラフトボス「宇宙人ジョーンズ・ゴンドラ」篇(メイキング・インタビュー)
この「マボローシ」を解釈すると、
「私のレオナルドが逃げるなんてありえないわ、そんなことは本当のことじゃない、まぼろしよー」
という意味かも知れないし、
「私から逃げるなんて、あなたは私の思っていたレオナルドじゃない、私はあなたのまぼろしを愛したのねー」
という意味かも知れません。
メイキング映像によると、この「マボローシ」は、イタリア語指導の先生が、IKKOさんお得意の決まり文句のうちの一つ「まぼろし〜」をイタリア語ふうにアレンジして「マボローシ」にしてくれてるんですね。
買取大吉新テレビCM「スタンプ」編
「どんだけ〜」「背負い投げ〜」
こんなCMもあります。
【クローゼットの中で女性がハンドバッグを持って】
女性
「使ってないな〜」
IKKO
「大吉〜」
【鏡の前でイヤリングをいじりながら】
女性
「似合わないかも〜」
IKKO
「大吉、大吉〜」
【しまってあった着物を出して眺めながら】
女性
「着ないかも〜」
IKKO
「だったら大吉!大吉!どんだけ大吉!大吉!だ〜いきち〜!」
【屋上に、失恋したらしい女性がいます】
女性
「ぐすん」
と、女性が悲嘆に暮れて指輪を外そうとすると、何故かIKKOさんが現れて、
IKKO
「いやんだ!捨てちゃだめ〜大吉〜」
女性
「大吉?」
IKKO
「売ればいいんじゃない?」
「嫌なことは全部、背負い投げ・・・」
全部言い終わらないうちにカットされてしまいます。
アフレコと口の動きが全然合っていないのですが、このCMは私は気に入っていて、何度見ても笑ってしまいます。
「新宿二丁目」で生まれたポジティブ言葉
さて、「どんだけ〜」も「まぼろし〜」も「背負い投げ〜〜」も、IKKOさんが新宿2丁目あたりで身につけた決まり文句らしいのですが、この言葉について考えてみると、それぞれ、みごとに、社会生活の中で相手も自分も傷つかないですむ、魔法のポジティブワードなんですね。
私はその昔、新宿2丁目界隈には知人に連れられて一回だけ行ったことがあるのですが、そこでのスタッフの、人をそらさないトーキングテクニックに感心した覚えがあります。
男性の立場も女性の立場も分かる、という多様性のお手本のような考え方、感受性の人たちなので、男も女もない、ふところの深い、いわゆる「人たらし」的な人が多いんでしょうね。
男女間、だけではないあらゆるベクトルの会話が行き交うので、本音丸出し、キツい攻撃的な言葉も多いと思われます。
それをいなすのに有名なのは、ちょっと前の世代である、美川憲一さんの「おだまり!」という言葉ですね。
「おだまり!」は、女性言葉にしてあるので、その分は和(やわ)らいでいる、とは言うものの、わりと直接的な言葉でした。
それが、IKKOさんの「どんだけ〜」「まぼろし〜」「背負い投げ〜〜」になって、これは考えてみると、相手も自分も傷つかない上手い言い方だなあと感心するようになりました。
どんだけ〜
これは攻撃的な言葉を掛けられた時に返す言葉ですが、明るく、とぼけた感じで言っているものの、「そんなことを言うあなた様はどれだけお偉い方でらっしゃるのですか」というかなり踏み込んだ表現なんですね。
関西弁でこわめに言うと「おんどりゃ〜なんぼのもんじゃい」ということになるので、返した方はスッキリするし、返された方も明るく、とぼけたオブラートに包まれてはいるけれど本質を突かれた言葉なので、笑って反省することになります。
ずけずけした本音の会話が飛び交う世界、そこで生まれて鍛えられたフレーズなので、説得力がありますね。
「どこまで言うんだ、限度を超えてるぞ」、という、言葉そのものの「程度」を言う表現での「どんだけ〜」にもなりますね。
正確には「どんだけ〜」と言いながら、例えば、欧米で先生が生徒をたしなめる時にする仕草のように、相手に向かって手を伸ばして、人差し指を立てて、左右に振る動作をするのがIKKOさんの作法になっています。
色々応用できそうです。
このCMでの「どんだけ〜」は、「大吉」に売れるものが、どんどん見つかるので、「どんだけあるのよ」、という意味の「どんだけ」なんですね。
背負い投げ〜
使う場面としては、相手から言ってほしくない言葉を言われた時に、「その言葉、背負い投げ〜」というのが標準的な使い方ですね。
「そんな言葉は私は受け入れられません、と言って、反論もしません、受け流しますよ」
というわけですが、ひょいと横によけて受け流せば良いものを、ちゃんとその言葉を無視せずにつかんだ上での「背負い投げ」なんですね。
相手の勢いを利用して背中でくるりと一回転させて放り投げる、という、相手も怪我はせずに、自分も攻撃をかわせる、という、天才的な危機回避の言葉だと思います。
これも色々応用ができますね。
このCMでは、誰もいない屋上で、失恋して指輪を外して捨ててしまおうとする女性に、突如何もない空間から現れたIKKOさんが「いやんだ!捨てちゃだめ〜大吉〜」「売ればいいんじゃない?」と、マイナスをプラスに変換するポジティブそのものなアドバイスをします。
そしてその後に、「いやなことは全部、背負い投げ〜」とアクション付きで言うのですが、すごく良いことを言っているポジティブワードなのに、それを最後まで言わせてもらえないで、「〜」と伸ばす部分の途中でカットされてしまうのが、また笑いを誘います。
まぼろし〜
これは、新宿二丁目の方々の「あるある」らしいのですが、出勤前に女装してヒゲを剃ったとしても、時間が経つとヒゲは多少伸びて来て、青くなって来る、それをお客さんに指摘されると、それは「まぼろし〜」と言って対処してるわけですね。
青くなってきた、なんてことは見間違いであって、本当はヒゲなんか生えてない(ことになってる)と言い張るわけです。
都合の悪い事実がバレてしまったとしても、それは真実ではない、それは目の錯覚、幻覚、まぼろしである、と、相手を煙に巻いて、自分のポジションを確保するポジティブな言葉なんですね。
「ポジティブシンキング」に使える
「どんだけ〜」「まぼろし〜」「背負い投げ〜〜」は、私たちも、自分の心や気分がネガティブになりそうな時、ガードして守ってくれて、ポジティブシンキングに引き戻してくれる「ポジティブ変換ワード」として、バンバン使うと良いと思います。
口に出せれば効果抜群ですが、心の中で思うだけでもハッピーになれます。
雨が降り出したのに傘がない、「どんだけ〜」
人気のケーキが売り切れだった、「まぼろし〜」
試験に落ちた、「背負い投げ〜」
今回のお話
今回のお話は、CMにまで使われるくらい有名なった「IKKOワード」である決まり文句「どんだけ〜」「まぼろし〜」「背負い投げ〜〜」の「ポジティブ変換ワード」としての使い方を検証してみました。