一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

「2001年宇宙の旅」の音楽はなぜ「ツァラトゥストラはかく語りき」なのか

 

猫にとっての新世紀の夜明け

「2001年宇宙の旅」の荘厳な音楽が、可愛く使われているCMがあります。

AIXIA(エイシア)・MiawMiaw(ミャウミャウ)ジューシー_2024年新CM_ヨコver.

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AIXIA(エイシア)は、「マルハニチロ」が親会社のペットフードメーカーです。

MiawMiaw(ミャウミャウ)は、猫の毎日の主食として使える総合栄養食です。
メーカーによると「お部屋で暮らす猫ちゃんのこころとからだの健康維持をサポート!」という触れ込みなので、ストレスを軽減する栄養素が入っているのでしょうか。

MiawMiaw(ミャウミャウ)の荘厳な登場の仕方、それに、どこかで聞いたことのあるメロディーの音楽!

MiawMiaw(ミャウミャウ)は、猫にとっての、新世紀への幕開け、というイメージなんでしょうね。

「2001年宇宙の旅」の未来感

他にもこの音楽はCMに使われています。少し前には「JX金属 」のテレビCMが、「2001年宇宙の旅」の未来感をうまく使って作られていると評判でした。

2001年はすでに過ぎ去っているのですが、その「未来感」は、いまだに生き生きとしています。

JX金属 テレビCM 「公園編」

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「翔く〜ん、そろそろ帰るよ〜」

と、砂場で遊んでいる子どもにスマホを見ながら声をかける母親。

彼女が何気なく子どもの方を見ると、

「えっ!?」

そこには砂で子どもたちが作ったらしい

「JX金属」という文字のモニュメントが!

「『JX金属』って、何?」

そのひとりごとに対して、ブランコに乗った女子高生が答えます。

「未来への、願いだと思います。」

母親「えっ!?」

そこでナレーションが、

「私たちは「JX金属」、日立鉱山開業から100年以上、歴史に培われた、グローバルな事業展開で、これからも、持続可能な未来のために」

と言っている間に、子どもたちは、砂で作ったにしてはあり得ない角度で砂場からそそり立つ宇宙ロケットを作っています。

母親「すっごっ!ふふっ」

女子高生「金属って、未来だ」

画面の右下で「銅、どう!?」

とダジャレ攻撃をするのは、関連会社パンパシフィック・カッパー株式会社(英文社名 PAN PACIFIC COPPER CO., LTD.)のマスコット「カッパー」くんです。

最後に女子高生の声で、「JX金属」

子どもも女子高生(JK)も「未来」を目指している存在なので、このCMに使われている音楽が「2001年宇宙の旅」という「未来的」SF映画に使われている曲なのは納得ですね。

砂で作った「JX金属」という文字も、平たくて細長い感じが「2001年宇宙の旅」に出てくる「モノリス」という平たくて長方形の金属の板に似ています。

こちらはパリの高等師範学校にあるレプリカです。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9b/ENS_2001_Monolith_below.jpg
Wikiより

JX金属 テレビCM 「学校編」

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学校で授業を受けている生徒たち、

一人の女子高生が窓の外を見て、

「何あれ!?」

その言葉を合図に、生徒たちは皆、先生の制止も聞かずに窓際に駆け寄ります。

校庭には机を並べて書かれた「JX金属」の文字が

「『JX金属』って何?」

と誰かが聞きます。

「未来からのメッセージ、だと思います」

と、一人の女子高生が言います。

「えっ!?」

ここで、ナレーションが入ります。

「私たちは『JX金属』、未来からの視点に立ち、銅を始めとする非鉄金属の一貫した事業を展開しています。」

「あっ、UFOだ!」と男子生徒が窓の外の空を指差します。

「んなわけあるか」と別の生徒がツッコミます。

「金属って未来だ」と、女子高生の声。

「銅、どう?」と親父ギャグを言うのは、カッパーくんです。「JX金属」の関連会社「パンパシフィック・カッパー株式会社」のマスコット「カッパー」くんです。

こちらのCMでも「未来」と「UFO」という言葉が出て来るので、音楽がSF映画「2001年宇宙の旅」の音楽なのは納得ですね。

校庭に机を並べて作った「JX金属」という机文字も、平たくて、ある程度の厚みがあって、細長い感じが「2001年宇宙の旅」に出てくる「モノリス」の、平たくて長方形の金属の板に印象が似ています。

CM音楽は「2001年宇宙の旅」の冒頭の音楽

映画には自我を持ち始めたコンピューターとの戦い、という面もあるので、その未来感はますます現実的になって来ていますね。

このCMに使われている音楽が聞けるのは、SF映画「2001年宇宙の旅」の冒頭のタイトルバックで一回、そして、夜が終わって朝が明けるときにモノリスが現れて、それに触った原人類が動物の骨を握って、道具として使うことを発見する、という場面で一回、そして映画の最後の方でももう一回、合計3回です。

こちらの映像は、冒頭のタイトルバックです。一番手前に月、その向こうに地球、さらにその向こうから太陽が見えて来ます。つまり「夜明け」です。

2001 A Space Odyssey Opening in 1080 HD

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この様子は、のちのアポロ8号が月の裏側から撮った、月の地平線から地球が昇って来る様子にそっくりだと評判になりました。

こちらがアポロ8号が撮影した、月の地平線からの「地球の出」です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a8/NASA-Apollo8-Dec24-Earthrise.jpg

Wikiより

面白いことに、アポロ8号の船長は「フランク・ボーマン」という名前なのですが、「2001年宇宙の旅」の主人公とその相棒の名前が、「フランク・プール」と「デヴィッド・ボーマン」なのです。

実在の宇宙飛行士の名前が、架空の物語の宇宙飛行士二人の名前を合わせたような名前であることが話題になりました。

音楽は「ツァラトゥストラはかく語りき」

この音楽は「ツァラトゥストラはかく語りき」という、リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』の最初の部分です。

演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のデッカ・レコード録音版です。これほど評判になるとは思っていなかったので、最初は楽団名、指揮者名のクレジットはあえて隠したので、無かったそうです。

「夜明け」「日の出」のイメージが買われた

ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」という著作を元に作曲された曲で、その著作も映画も、両者ともに、冒頭は日の出、夜明けの場面から始まるんですね。

つまり、この音楽は日の出、夜明けの音楽なのです。

未来への夜明け、というイメージとつながるので、企業CMにはふさわしい選択だと思います。

映画のストーリー自体は「永劫回帰」というニーチェの哲学を表している、という説もあって、だから「ツァラトゥストラはかく語りき」の音楽なのだ、ということになるのですが、難解で、やはり難解なニーチェの著作と同じく、実はよく分からないのですけどね。

今回のお話

今回は、AIXIA(エイシア)・MiawMiaw(ミャウミャウ)ジューシーや、「JX金属 」のテレビCMに使われている曲が「2001年宇宙の旅」という「未来感」の感じられる映画の音楽であること、その音楽は「ツァラトゥストラはかく語りき」という交響詩の冒頭部分「夜明け」、「日の出」を表す音楽なので、これから未来を目指す企業のCM音楽としては目の付け所が良い、というお話でした。

「2001年宇宙の旅」の音楽はなぜ「ツァラトゥストラはかく語りき」なのかをちょっと探ってみたわけですが、多少のヒントになれば幸いです。