- ハードロックギタリスト15人によるバッハ「トッカータとフーガ、ニ短調」
- パイプオルガンによるトッカータとフーガ、ニ短調」
- バロックの「通奏低音」は、ロックの「リズムセクション」である
- 一定のリズムにこそ人は酔える
- 今回のお話
ハードロックギタリスト15人によるバッハ「トッカータとフーガ、ニ短調」
アウトローで傍若無人で、自分勝手なイメージのあるハードロッカーたちが一堂に介しているだけでも意外です。
さらに、それぞれがわがまま言わずに、それぞれの役割分担をきちんと果たして、一曲の見事なハーモニーを完成させているのが驚きであると同時に微笑ましいですね。
そして演奏している曲が、クラシックの代名詞とも言えるバッハ「トッカータとフーガ、ニ短調」だとは!
こちらはクラシックの元曲、
パイプオルガンによるトッカータとフーガ、ニ短調」
このパイプオルガン演奏家のノリ具合、頭の振り具合、身体の揺れ具合がハードロッカーと変わらない、と言うより、むしろこちらの方が自由な演奏でノリノリに見えるのが面白いですね。
クラシックといえばバッハ
なぜハードロッカーたちが、バッハのこの曲を選曲したのかというと、アメリカでもクラシックといえばこの曲だ、というイメージがあるからなんでしょうね。
日本でも、この曲の出だしが、芸人嘉門達夫(かもんたつお)」の「♪ちゃらり~ん、鼻から牛乳~♪」というギャグにされるくらい、クラシックと言えばこの曲、という共通の認識があるかと思います。
バロックの「通奏低音」は、ロックの「リズムセクション」である
考えてみると、そもそも「バロック」と「ロック」には共通性があるようなのです。
私の場合は、バロックを聞いていて気持ちが良いのは、一定のリズムを断固として、ひたすら分散和音を淡々と、しかし確実なテンポで弾いて行くチェンバロの音ですね。
J.S.バッハ:2台のチェンバロのための協奏曲第1番ハ短調BWV1060 / カール・リヒター(チェンバロ&指揮)ミュンヘン・バッハ管弦楽団
これはロックにおけるリズムセクション「ドラム」「ベース」「リズムギター」の刻んで行く、ノリの良い、しかも正確なリズムに相当します。フォークギターの金属弦も、チェンバロ的な音がするので、聞いて心地よいですね。
The Beatles I've Just Seen A Face (Remastered 2009)
バロックではコード(和音)の根音(ルート)を「ヴィオラ・ダ・ガンバ」などの弦楽器が担当しますが、ロックではエレキベースです。
Wikiより「ヴィオラ・ダ・ガンバ」
「バロック」に比べて、「ロック」は音量が圧倒的に大きいので、エレキベース、リズムギターに見合う音量が出せる、という事で、バロックの演奏にはあまり出て来ない「ドラムス」を採用しているんですね。それでリズムがしっかり刻めます。
一定のリズムにこそ人は酔える
電車内での走行音など、規則正しい一定のリズムを聞いていると、気持ち良くなってきて、寝てしまう場合もあるでしょうが、リズムがしっかりしていると、反対にハイになって、さらにはトランス状態になることがあり得ます。
ひたすら規則正しいビートを大音量で響かせているディスコは、 ハイになれる、という観点から見ると、その効果の最たるものだと言えるでしょう。
さらに例えば、お寺の規則正しい木魚や太鼓のリズムに乗せたお経、神社のお神輿(みこし)の鉦(かね)や太鼓の一定のリズムに乗せた「そいやそいや」などの同じリズムでの掛け声などもそうですね。
そういった場面では、演者も観客も気持ち良くなって来て、ハイになって盛り上がる、みんな友達だあ、という精神状態になる事がありますね。
特に神様仏様が関わっていたりすると、一定の規則的なリズムを聞いているうちに、宗教的法悦、という崇高な陶酔状態に入るという効果もありそうです。
今回のお話
今回は「バロック」と「ロック」は、その規則的な一定のリズムが共通する特性であり、その一定のリズムによって、聞く人が(もちろん演奏する人も)気持ち良くなり、ハイな気分になれるのではないか、ゆえに「バロック」はひょっとして「ロック」かも知れない、というお話でした。