一音九九楽

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いちおんくくらく★ひとつの音からたくさんの楽しいこと

元ネタ曲のあるヒット曲、ベンチャーズ「パーフィディア」の元曲のさらに元曲をたどると?

ベンチャーズ「パーフィディア」

アメリカのエレキバンド、「10番街の殺人」「ダイヤモンド・ヘッド」などで有名な「ベンチャーズ」。

サーフィンをやっている時に、サーファーが乗っている大きな波が波頭から崩れて来る様子を表した、ドン・ウィルソンのギターによる「テケテケテケテケ」という、エレキギターの高音から低音までのトレモロ・グリッサンド奏法が、エレキバンドの代名詞になったくらいで、日本でも一世を風靡した人気でしたね。

ビートルズと人気を2分するほどでした。

そのベンチャーズが演奏した「パーフィディア」は、エレキバンド特有の宇宙的で爽やかなサウンドと共に、ちょっとした哀愁もあったりして、全米15位まで上がったヒット曲です。

The Ventures - Perfidia -1960- 2022 stereo remix

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カッコいいですね。なお、ドン・ウィルソンはギターを立てて構えている人です。
「テケテケテケテケ」は、この体勢で弾きます。

ビリー・ボーン楽団「パーフィディア」

ベンチャーズは、こちらの版を参考にしたとされています。
ビリー・ボーン楽団の演奏です。

Billy Vaughn: Perfidia-1958-

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ちょっとブラスの入り方がラテン系な感じがしてきましたね。

ザビア・クガート楽団(1988)「パーフィディア」

1988年にはザビア・クガート楽団の、こんなバージョンがありました。ストリングスの使い方が爽やかで優美で、マントバーニふうですね。

Xavier Cugat And His Orchestra - Perfidia

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グレン・ミラーと彼の楽団「パーフィディア」

このバージョン以前にさかのぼると、この曲をスタンダードナンバーとして決定づけた演奏があります。

グレン・ミラーと彼の楽団。

まるでストリングスのような柔らかで優美なブラス。

それもそのはず、グレンミラーはトロンボーン奏者だったんですね。トロンボーンは菅の長さを抜き差しして、音程を無段階に変えることが出来るので、弦楽器と似た感覚で演奏できるんでしょうね。

さらに、コーラスと歌が入ります。そういえば、人間の声もまた、無段階に音程を変えることが出来ますね。だから、聞いていて心地よいのかもしれません。

「パーフィディア」グレン・ミラーと彼の楽団 (1941年)

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歌詞はこちらです。

歌詞の下の(日本語に翻訳)という文字をクリックするとおおざっぱなデジタルふう日本語訳が見られます。

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歌詞を読んでみると、なんと、爽やかな印象の歌とは裏腹に、恋人に裏切られたので別れを告げている、という歌詞なんですね。

そもそも「パーフィディア(Perfidia)」という言葉、聞いた感じは爽やかな響きで、女性の名前のような、北方の国の名前のような優雅な感じなのに、実は「不実」とか「裏切り」とかいう、とんでもない意味の言葉だったとは、まさに「裏切られた」ような感じです。

爽やかなメロディーには全く似つかわしくない歌詞ですが、もしかして、「モヤモヤしていたのが、別れてスッキリした、いっそのこと爽やかだ!」みたいな心境なんでしょうか。

ザビア・クガート楽団(1939)「パーフィディア」

そして、こちらはやはりザビア・クガートの楽団ですが、1937年にオリジナル曲が発表された後間もなくの演奏です。

Xavier Cugat & his Hotel Waldorf-Astoria Orchestra - Perfidia (1939)

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なぜ「カサブランカ」?

映像の最初に出て来るザビア・クガートの写真の後に、背景に出て来る写真は、1942年のアメリカ映画「カサブランカ」の一場面で、写真に向かって左が、名前の姓の「ボガート」をもじった「ボギー」という愛称で呼ばれるハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart)と、向かって右はスウェーデン出身の女優イングリッド・バーグマン( Ingrid Bergman)です。

イングリッド・バーグマンは妖艶なイメージがありましたが、実際はもっと健康的な感じなんですね。

なぜ「カサブランカ」かと言うと、映画「カサブランカ」の中で、この曲が流れる場面があるんですね。

Casablanca

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オリジナル版「パーフィディア」

そして、こちらがオリジナル版です。ソングライターはメキシコ人のアルベルト・ドミンゲス(Alberto Dominguez)。

歌はルピタ・パロメラ( Lupita Palomera )。

レコードのクレジットを見ると「Del film」(映画より)という文字があるので、「Perfidia」という映画があったようなのですが。

1st RECORDING OF: Perfidia (in Spanish) - Lupita Palomera (1937)

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歌詞はこちらです。

Perfidia
裏切り

lyrics:Alberto Dominguez

(ここはかなり暗めの、前振りの「語り」です)

Nadie comprende lo que sufro yo,
私の苦しみを誰も理解してくれない、

Canto pues ya no puedo sollozár.
もうすすり泣くことができないと、私は歌います。

Solo temblando de ansiedad estoy,
私は一人で、不安に震(ふる)えています、

Todos me miran y se van.
皆は私を見て立ち去ります。

(ここから一転、明るめの唄になります)

Mujer,
女性よ、

Si puedes tú con Dios hablar,
もし、あなたが神様と話すことができるなら、

Preguntale si yo alguna vez
聞いてください、私がいつかやめるかどうかを

Te dejado de adorar.
あなたを愛することを

 

Mi Alma,
私の魂よ、

Espejo de mi corazón,
私の心の鏡よ、

Las veces que me ha visto llorar
何度も私が泣いているのを見ている

La perfidia de tu amor.
あなたの愛の裏切りで。

 

Te buscado doquiera que yo voy
私はどこに行ってもあなたを探します

Y no te puedo hallar,
だけど、私はあなたを見つけることができません、

Para qué quiero otros besos
私が何のために、他の誰かとのキスを望むというのでしょう

Si tus labios no me quieren ya besar.
あなたの唇がもう私にキスしたくないとしても。

 

Y tú,
そして、あなた、

Quien sabe por dónde andarás?
誰が知っているでしょう?あなたがどこに行くのかを

Quien sabe que aventura tendrás?
誰が知っているでしょう?どんなアバンチュールをあなたがすることになるのかを

Que lejos estás de mí.
あなたが私からどれだけ離れてしまったのかを。

まあ、歌詞は情念いっぱいのドロドロな感じですが、なんと言っても、メロディーが明るく爽やかなので、救われる感じですね。どんなつらいこと、苦しいことがあっても、心の底は明るいから大丈夫、というところでしょうか。

今回のお話

今回は、一世を風靡したエレキバンド、ベンチャーズの爽やかな印象のヒット曲「パーフィディア」の元曲のさらに元曲をたどると、スペインの、何やらドロドロした歌詞のオリジナル曲にたどり着いた、というお話でした。

曲は良いのに、歌詞がちょっと残念な曲って、考えてみるとわりとありますね。
アメリカンポップスでもたくさんあります。

むしろ、言葉が分からない方が、自分なりのイメージが作れて、幸せになれる場合も多いかも知れません。